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もうすぐ来日するケミカル・ブラザースを予習・復習するためにもお勧めなのが、このDVDだ。彼らの2003年までの10年間にわたる活動を総括したプロモーションビデオ集、関係者のインタビュー、ライヴが収められているんだけど、これが飽きさせない。やっぱり、彼らは凄い。彼らが凄いというのは、音楽的には、シャーラタンズのティム・バージェス(去年のフジロックでは飛び入りしてましたね)、オアシスのノエル・ギャラガー、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピー、ニューオーダーのバーナード・サムナー、元ヴァーヴのリチャード・アシュクロフト、フレイミング・リップスたちをゲストに迎い入れ、プロモーションビデオでは、スパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリーに印象的な映像を作らせる、つまり才能を惹きつける才能があるというところなのだ。プロモーションビデオの中では、映像が音楽に負けてしまっているのもあるんだけど、映像と音楽が拮抗している出来だと思うのは"Elektrobank"と"Star Guitar"を挙げたい。
まず"Elektrobank"にはストーリー性があって、女の子が新体操の大会に出てライバルを破って優勝するというものであり、その女の子を演じているのが、何とフランシス・コッポラの娘で、当時このビデオの監督のスパイク・ジョーンズの妻でもあったソフィア・コッポラなのであった。ソフィア・コッポラといえば『ヴァージン・スーサイズ』や『ロスト・イン・トランスレーション』(筆者は未見)の監督でも知られていて、『ヴァージン・スーサイズ』では、トッド・ラングレンの"ハロー・イッツ・ミー"の使い方が最高だったように、音楽の造詣も深いものなんだけど、まさかこういうビデオにも出ているとは思わなかった。ビデオの大部分は彼女が華麗な技を披露しているシーンで占められている。と言っても、よく観れば難易度が高い技を決めるのは吹き替えの人だということが分かるけど。そのソフィアのレオタード姿が可愛いいし、ライバルと交わす視線、自信と不安が交差する表情がいいし、足を痛めたところに、自分の母親が会場に姿を現し「マァム・・・」と思わず口に出し、一転して意を決してフィニッシュの技に向かうところなんかが素晴らしい。しかも、それが完璧に音楽とシンクロしているわけで、ちゃんとプロモーションビデオの役割も果たしているのだ。
もうひとつ。"Star Guitar"は一見すると、列車の車窓を映しただけのものに見えるんだけど、架線柱や信号、すれ違う列車や駅の施設が完全に音楽とシンクロしている。しかも、ハットやスネアやバスドラに合わせて信号機とかが出てくるのだ。このこだわりは凄まじいものがある。このDVDにはメイキングが収められているんだけど、まるで採譜でもするように音を聞きながら方眼紙にそれぞれの音のタイミングを書き込んでいくのだ。そして、さらに地面にコップや靴などを置いて実際に撮影してみる、こういう地道な作業を経て、このような夢見るような映像が作られるわけだ。そして、このビデオの構造が分かると何度でも観たくなるのだ。
そして、このDVDのもうひとつの見所はライヴ映像だろう。2002年のフジロックのものもあり、グリーンステージ一杯に埋め尽くしたお客さんが、幸せそうな笑みを浮かべて踊りまくる様子が映し出されている。あのとき自分はどうしていたんだっけ?そうだ、02のときはやることがあって、ろくに観れなかったんだな、ちくちょう。それにしても"Setting Sun"や"Star Guitar"のイントロで沸き起こる歓声の迫力は凄いし、"Star Guitar"のブレイクで挙げられる腕の数は何本なんだろう?4万本くらいか?この数え切れない笑顔の映像は、フジロックがかくも幸せなところであることを後世に残すための記録であろう。そして、ライヴ編のラストは2000年のグラストンバリーでの"The Private Psychedelic Reel"で、これが圧巻である。おそらくメインのピラミッドステージなんだろう、広大なグラストを埋め尽くしたお客さんたちの数が凄いし、夜空に放たれる映像照明レーザービームがこれまた凄い。凄いしか言えないんでアホみたいだが、音とシンクロするカメラワークも編集も完璧で、特にステージを空撮したカメラでの視点で見下ろすと、お客さんが手に手にライトかライターを掲げ、夜空に輝く星たちのように美しいのだった。これは何万という人たちが一緒に作りあげるアートといっても過言ではない。ケミカルブラザースの2人は、それを媒介する役割、まさしく化学反応を作り出しているのだった。最高。
reviewed by nob
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