ボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、PPM他

Newport Folk Festival

"(Newport Folk) Festival!" (US import / 国内盤)

*なお、アメリカ盤はリージョン1で、国内のDVDプレイヤーでは再生できません。

The official site

Newport Folk Festival

http://www.newportfolk.com/



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 ひょっとすると、これこそが「フェスティヴァル」の始まりではなかったんだろうか... だからこそ、このDVDに付けられたタイトルが、そのものズバリ、「フェスティヴァル」となったのではないんだろうか.... おそらく、これがなかったら、"モンタレー・ポップ・フェスティヴァル"も、"ウッドストック"も"ワイト島のフェスティヴァル"も生まれていなかったのではないか... と、そこまでは言えないと思うんだが、少なくともこういった伝説となったフェスティヴァルのルーツにこれがあるんだろうということは想像できる。

 掘り下げていけば、このニュー・ポート・フォーク・フェスティヴァルの前身として、1954年に始まったニューポート・ジャズ・フェスティヴァルがあったんだとか。その58年のものが"真夏の夜のジャズ"と呼ばれる映画となっている。その主催者と、後にボブ・ディランのマネージャーとなるアルバート・グロスマンが59年に仕掛けたのがこのフォーク・フェスティヴァルだった。50年代後半というとフォークが大ブームとなって、金儲けをもくろんでこれを仕掛けたと見るのが正しいだろう。当初は、それほどうまくことが動かなかったようだが、63年に45000人が集まり、一気にブレイクする。その63年から4年間にわたってこのフェスティヴァルを記録し続けたマーレイ・ラーナーが監督したのがこの作品だ。

 ただ、主催者が金儲けをもくろんでいても、彼らにはコントロールできない、時代の流れがあり、動きがあり、声があった。まぁ、それを利用して、また金儲けの素材にされるんだろうけど、このDVDが素晴らしいのは、普通の人たちから生まれていったそういった文化の現場を、伝説となったさまざまなミュージシャンの貴重な演奏映像を織り交ぜながら、時事にヴィヴィッドに伝えていることだろう。それまでの商業的な「フォーク」から公民権運動の流れを受けて、自分たちの意志を表現する「歌」へと変化し、社会的な影響力を持つ「プロテスト・ソング」の時代、歌が単純な商品を越える「声」となった時代。それが増殖して社会への変革へとどこかでつながっていく、時代の空気をここに収めているのところにそそられるのだ。

 単純に伝説のミュージシャンの演奏だけを求めているのでは不満があるはずだ。なにせ、曲をそのまま全て見せてくれるのはわずかに過ぎない。そのなかにはポール・バターフィールド・ブルース・バンドを従えて、フォークからロックへと「転身」して、「商業主義に身を売った」と非難ごうごうだったディランの「マギーズ・ファーム」が含まれていて、これについては全て見ることができるんだが、実際のところ、観客の反応や顛末については、もうすぐ国内盤が出るといわれている"No Direction Home"に多くの映像が使われているらしい。もちろん、ディランは幾度も姿を見せてくれているし、主役... ではないだろうが、まだまだ若く、新鮮でユーモアもあって魅力的だったジョーン・バエズも何度も登場する。それに、時のスターだったPPM(ポーター・ポール・アンド・マリー)もけっこうフィーチャーされていて、いわゆるフォークが好きな人にとってはそのあたりが魅力なんだろう。が、映像そのものが少ないだろう、黒人のフォーク・シンガー、オデッタや、この当時に続々と再発見されていったブルース・シンガー達、ミシシッピー・ジョン・ハートからハウリン・ウルフ、フレッド・マクドウェル、サン・ハウス、ブラウニー・マギー&ソニー・テリーなどが、わずかであっても動いている姿を見られるだけで、ファンにとっては宝物のようなDVDになるはずだ。

 さらにはゴスペル・グループのステイプル・シンガーズ、フリーダム・シンガーズやブルーグラスのオズボーン・ブラザーズ、はたまたアイリッシュ・トラッドからアフリカ音楽、マウンテン・ミュージック(だと思う)のダンサー達など、広範囲なルーツ・ミュージックがここで楽しまれていたのがわかる。

 また、フェスティヴァル文化そのものの起点として、これを見ていても興味深い。ゲートが開けられた時の映像だと思うんだが、観客が走ってステージに向かっていったり、そのステージ前には木製の椅子が用意されていたりと、今の「フェスティヴァル」とは違った光景をここで見ることができる。といっても、一方で、昼間開催されたというワークショップでの映像は、より自由な「ショーではない」フェスティヴァルの片鱗も感じることができる。そんな意味で言えば、フェスティヴァル文化に魅了された人たち、あるいは、関係者がこれを見れば、いろんな意味での発見が待っているはずだ。

 それにブルースについて語るマイク・ブルームフィールドの言葉、そして、それにクロスするように使われているサン・ハウスが語るブルース... これがユダヤ人の金持ちのぼんぼんだったというマイクになにを与えたのか、それが語られているんだが、そこからは、おそらく、彼だけではなく、当時の音楽が変化していった背景を垣間見ることができるだろう。

 加えて、多くの人々の声からこのフォーク・ムーヴメントが、実は、パンクにもつながる精神性を持っていことにも驚かされるのだ。「誰でも、歌い、自分を表現できるようになった」そんな時代の流れが、音楽だけではなく、こういったフェスティヴァルを生み出し、ヴェトナム反戦運動といった政治的な局面だけではなく、フラワー・ムーヴメントといった文化、もちろん、経済にも波及していったのがわかる。パンクだろうが、フォークだろうが、重要なのはそういった看板ではなく、その奥底にあるエネルギー。おそらく、監督はそこにスポットをあてて、そのダイナミズムをフィルムに刻み込みたかったんだろう。それが見事に形になっているのがこの作品だ。


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