シネイド・オコナー

Sinead O'connor

"Throw Down Your Arms"
(国内盤 / UK import)


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Sinead O'connor

http://www.sinead-oconnor.com/

-->Sin!)ad O'Connor


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Sinead O'connor

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(国内盤


Sinead O'connor

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(国内盤 / US import / UK import


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 ん?なんで、こうなるの?というのが、このアルバムの話を耳にした時の反応だった。なにせシネイド・オコナーのレゲエ・アルバムなのだ。っても、まぁ、この人の場合、予測不可能な部分もあるから、そんなに驚くことはないかもしれない。実際、"コラボレーションズ"ではマッシヴ・アタックからU2、ピーター・ゲイブリエルにモービーと、とんでもないメンツとのコラボもやっているし、彼女の仕事で最も好きなひとつがアイリッシュ・ヒップホップの名作、マルクスマンの"33 Revolutions Per Minute"というアルバムでのゲストものだったりと、どこかで納得できるのだ。加えて、けっこう過激なアイルランド人というか、これまで発表してきた作品よりなにより、そっちの方での印象の方が強くて... 音楽の方は忘れがちになってしまうんだけど、それでも、とてつもない説得力を持つ、天使のようでいて、どこかで悪魔にも聞こえる声には、どうあがいても太刀打ちできない魅力を感じてしまうのだ。

 その彼女がジャマイカに渡って、レゲエ界最高峰のリズム・セクション、スライ(・ダンバー)&ロビー(・シェイクスピア)と組んでアルバムを録音したのがこの作品。で、そのド頭の1曲目、バーニング・スピアの名曲「ジャー・ノー・デッド」を聴いて、なぜレゲエなのかが一発でわかったように思えた。この曲はレゲエ映画の名作"ロッカーズ"に登場する名曲中の名曲。主人公、ホースマウスがバイクを盗まれて、落ち込んでいる時にバーニング・スピア(ウインストン・ロドニー)を訪ねて、一緒に向かった海岸これが歌われるのだ。実を言えば、撮影していた時、そのまわりにはものすごい数の人がいたらしいんだけど、「絶対に声も音も出すな」と言われて、波の音しか聞こえないあの感動的なシーンが生まれという逸話がある。プカ〜ッと一服したあとに、彼がアカペラで歌ったこれは、今は亡きジェイコブ・ミラーやオーガスタス・パブロのシーン同様「これがレゲエなんだ」とでも言いたいほどの傑作として多くのレゲエ・ファンの記録に残っている。バックにンチャってリズムがなくても、「ジャーは死なない」と歌われるこれは完全なまでになにがレゲエかと言うことを物語っていた。それをアルバムの巻頭に持ってきているのだ。

 さらに、ボブ・ディランの"30th Anniversary Concert Celebration"を覚えている人もいるかもしれない。ディランのデビュー30周年のライヴでシネイドが歌ったのは、予定されていたディラン・カバーではなく、ボブ・マーリーの「ウォー」だった。ブッカーTとMGズをバックに歌おうとした時、彼女が直面したのはとんでもない数のオーディエンスからのブーイング。一般的には彼女がローマ法王の写真を破り捨てたことに対する反感を買ったと言われているが、筆者が知る限り、彼女がアメリカ国歌を歌うのを拒否したことがその理由だったように覚えている。バックの連中はシネイドに歌わせようと演奏を始めかかるのだが、それを二度にわたって遮ってシネイドがたったひとりで「ウォー」を歌うことでそのブーイングに抗議していた。もちろん、この「ウォー」もここに収録されているんだが、このアルバムの巻頭に収められているアカペラは、どうしてもこれを思い出させずにはいられない。

 それを語りかけているのが、このアルバムを作るに当たってシネイド自身が書いている言葉だろう。簡単に言えば、「自分を失いかけた時、救ってくれてのはレゲエだった。どれほどの言葉を重ねても、どれほどの歳月をかけてもレゲエを作った人々への私の愛情を語りきることはできない」と、このプロジェクトが、単純な遊びではなく、深い愛情と尊敬の上に立って、ずっとやりたかったことなんだというのが理解できる。加えて、「オリジナルを越えることは絶対にできない」として、あくまでも歌われている「言葉」とその意味を伝えることを望んでいるとも記されている。だからなんだろう、カバーはオリジナルに忠実なルーツ・レゲエであり、そこにスライ&ロビーの鉄壁リズムを中心に、レゲエが最もレゲエ的であったクラシックな響きをアルバム全体に与えているのだ。バックに控えているのはマイキー・チャン、メロディ・メイカーズの音楽監督でもあるグレン・ブラウニー、ロビー・リン、ディーン・フレイザーなどなど、ルーツ・レゲエの顔と言った面々が文句なしの演奏を繰り広げている。

 その文句なしのルーツ・レゲエのサウンドにのって、あのシネイドの声が響くのだが、そのバランスもいい。悲しみと苦しみをうちに秘めながらも、それでもタフに、前を向いて突き進むようなルーツ・レゲエをバックに、静なか力強さと説得力を持つシネイド。とりわけ、シネイドでなければいけなかったという必然性は感じなくとも、彼女がどうしてもこれをやりたかったという愛情だけはひしひしと伝わってくる。

 収録されている曲のうち気になるのはバーニング・スピアの曲が多いこと。1曲目のジャー・ノー・デッド、2曲目のマーカス・ガーヴェイ、3曲目のドア・ピープ、タイトル・トラックのスロウ・ユア・アームズと4曲も収められている。国内盤では"ドライ&ヘヴィー+マン・イン・ザ・ヒルズ"の2in1が比較的容易に入手できるようだが、筆者のお薦めは"Marcus Garvey/Garvey's Ghost"というダブ・アルバムとの2in1。このアルバムを気に入ってオリジナルを聴きたいと思った人にはこのあたりをぜひ手に取ってみてもらいたいと思う。



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