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懐かしいけど、それだけじゃない
京都出身の3ピース・バンド、ザ・サイクロンズは、しなやかなリズムと60年代を思わせる情緒的なメロディが上手く組合わさったロックンロールバンドである。映画『パッチギ!』の冒頭で、オックスというGSバンドを演じていたのがこのバンドであると言えば思い当たる人もいるだろう(ヴォーカルとキーボードは別の役者だが)。以前、このバンドのライヴを観ての帰り道、無性にスモール・フェイセスやドクターフィールグッドを聴きたくなったのだけど、このバンドには、そういうイギリスのバンドが持つ跳ねるビートのワクワクした感覚を思い起こさせるものがある。
このアルバム『サイクロンズの奇蹟』は、前作『レッツゴー!サイクロンズ』の世界をより深めてバラエティの富んだものになっている。ライヴ感というよりは、スタジオで作った音の傾向にある。このアルバムにはキーボードやフルートなども使った多彩な音作りをおこない、ロックンロール・ナンバーからバラード、サイケデリックな長尺曲までバラエティ豊かで飽きさせない。それがどのようにライヴに反映されるのか楽しみだ。
確かにスタイルは、一見すると新しくない。だけど、サイクロンズのメンバー(20代だと思われる)たちが見たことのない「あの当時の空気」を作り出すのにすぐれている。単に60年代を懐かしみ、再現しているのではなく、当時のロックンロールや歌謡曲を一旦バラバラにして、現在の視点で組み立て直したように新鮮さを感じさせる。特に"八月の幻"は、ザ・ワイルドワンズの"思い出の渚"と初期ミスター・チルドレンの切なさが合体したような、つまり日本のポップ/ロックの歴史を貫き、どの世代にも懐かしい曲になっている。こういうさり気ないバラードがこのアルバムのポイントなのだ。
一方、"エイミー・エイミー"、"走れ!夜明けまで"のように、ウキウキして踊り出したくなる疾走感を持つロックンロールは勢いを感じさせ、この辺はライヴと直結しそうだ。まあ、疾走感と言っても絶対的に速いわけでなく、技巧派の野球のピッチャーが120キロ台のストレートを投球の組み立てで速く見せているような、巧みな感じがして、思わず「上手いなぁ」と唸ってしまうのである。ぜひ、サイクロンズの投球を受けてみては?
reviewed by nob
ライヴスケジュール
4/1(土)広島ROOTZ
4/2(日)金沢ex KENTO'S
4/8(土)下北沢CLUB251……ザ・50回転ズと対バンです!
4/8(土)新宿ロフトPLUSONE
4/13(木)大阪梅田シャングリラ
4/16(日)京都磔磔
4/29(土祝)神戸バックビート
詳細については こちらをチェックしてくださいませ。
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