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先日、Magのライター仲間と「U2の音楽は何故中学生からいい年の大人まで、あらゆる世代の琴線に触れるのか?」という話しになった。その時に出た結論は「本気で、本音で歌ってるからだよね」だった。本気の歌は世代もジャンルも越えて必ず聴く人に届く。
いきなり違うアーティストの話しでナンなのだが。何が言いたいかというと、近藤智洋が出すソロ第一弾アルバム『近藤智洋』はそういうアルバムだということだ。"静かな世界へ"のイントロが初めて耳に流れ込んできたとき、心が震えて震えてどうしようもなかった。隣に大切な人がいたなら、その手をぎゅっと握りしめたくなるような。何かすごく大事なものに"触れた"、という感触だった。何度となくアルバムを聴いた今でも、その感覚ははっきりと体に残っている。収録曲はすべて頭の中に記録されてしまった。スタートボタンを押せば、いつだって自分の中で曲が流せる。それくらいきっちり届いて留まる、心ある歌がここには詰まっている。
一時、近藤さんはライヴのMCなどでよく「あるがままの自分でいたい」といっていた。その"あるがまま"について聞くと「思うがままの詞があって、声が出せたらすごくカッコいいと思う。それをテーマにはしていて、そういう歌を唄いたいとは思うけれど、自分はまだまだそこに達していない」という返事が返ってきた。しかし、このアルバムに関しては、はっきりと「あるがままの自分を出せた」と言い切っている。だからこそ自身の名前がタイトルで、何事にも揺らぐことのない気持ちで世に送り出すことができる自信作なのだ。にも関わらず、気合いとか意気込みを感じるようなことはまったくといっていいほど口にしない。これは何かを意図して形にしたものではなく、唄うことしか出来ない、唄わないと生きていけない人が本能で創り上げた1枚だ。だから余計なことは言わない、というよりむしろ言葉にできないのではないか? と思う。「聴いてもらうのが一番早い」。インタビューの時に繰り返し言っていた言葉が頭に浮かんだ。
参加ミュージシャンもスタッフも何もかも。自分が本当に好きな人たちを集めて創った作品『近藤智洋』。そこからは何かいい予感といい感じの匂いがしてくる。
去年の今ごろはピールアウトのラスト・ツアーの真っ最中だった。あれから1年。こんなに素晴らしい場所に近藤智洋が辿り着いて本当に良かった、おめでとうと心から言いたい。こんなに本気の歌を届けてくれてありがとう、とも。
参加ミュージシャン
E.Guitar:花田裕之(ROCK'N'ROLL GYPSIES)
E.Guitar:山口洋(HEATWAVE)
E.Guitar:ヤマジカズヒデ(dip, qyb)
E.Guitar:ヒサシ the KID(THE BEACHES)
Drums&Piano:城戸紘志(JUDE)
Bass:工藤佳子(*Hvanella)
Percussion:ピロ(ex.ズボンズ)
reviewed by wacchy
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