リコ・ロドリゲス

Rico Rodriguez

"ワンダフル・ワールド"
(国内盤)



Rico Rodriguez

"Rico Rodriguez meets
Cool Wise Men Japan Tour 2007"
(国内盤)

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素晴らしい世界は遊び心でできている


 06年の渋谷エッグマン、リコ・ロドリゲスとクール・ワイズ・メンのツアーにて。リコ・ロドリゲスその人は小刻みに揺れていた。しかし、ひとたびトロンボーンを構えれば震えは止み、いざ息を注ぎ込んだときにはハコ全体が一瞬だけ静かになった…とまぁ、これはさすがに言いすぎかもしれないが、それに近い感覚はあった。誰もが「ゴクリ」とつばを飲み込み、思い出したように声をあげた気がしたのだ。

 リコは、ことあるごとにCWMのメンバーそれぞれに視線を投げかけ、アドリブを促し、プレッシャーとのせめぎあいから生まれた突飛なアレンジを心から楽しんでいた。満面の笑みをたたえ、メンバーを無我夢中の境地へ送り出し、バックバンドだと思われていたCWMは緊張と喜びを体全体で表現していた。彼らはこの日を境に見違えることとなる。

 「レジェンド」と呼ばれるスカ創世記のプレイヤーの中にあって、2トーンなどのネオ・スカ勢と共演し、さらに月日が流れた今になってもなお、孫あるいはひ孫くらいの若手たちと共演し続けている。そのおかげで、オーセンティック・スカと呼ばれる「本物のスカ」を聞き始める前から彼の存在こそ知っていたのだが、しかしこの日新たに知ったのは、見る者をまるっきり素の状態にさせてしまう人だということ。僕らの無垢な表情をまんまと引き出す人物だったのだ。

 その彼が、経験と、それに反比例する体力がギリギリのところでつり合った時期に録音したアルバムが、この『ワンダフル・ワールド』だ(もっとも、06〜07年にかけて何回も来日してくれているし、今でも十分元気なんですけれども)。特筆すべきは、勢いというか、とことん遊び倒した作品ということだ。

 日本発の文化・カラオケに、遊び人としても超一流なギャズ・メイオールがリコを連れて行ったことから、リコ自身のヴォーカルをフィーチャーした"ワンダフル・ワールド"に至る道が生まれた、と、リコと親しい人物より直接聞いている。ファン心理からくる悪ノリという妄想が、ここに、極上の作品となって響いている。傑作というものは、遊び心を形に残せるか否か、それこそ無垢な表情で演奏や録音が出来るかどうか、ということなのだろう。そして、リコはまんまとやってのけてしまった。

 ライブでは、トロンボーンという枠をはるかに超えた音がまず腹に響き、まるでホルンかと思わせるほどの広がりによって体の内側がざわめくのだが、アルバムとなると深く沈んでいくトロンボーンの調子に包み込まれるような、あるいは吸い込まれるような感覚を覚える。PCにとり込んで、MP3の形にして連れ出すのは無論だが、家にいる時くらいはちゃっちぃPCからではなく、ちょっと一手間かけてオーディオから流したい。それでも、微小なレベルで繰り広げられるせめぎ合いを聞き漏らしちゃいないか…と気が気でない、そんな数少ないアルバムとなっている。

 "ワンダフル・ワールド"にしても、当初ジャマイカで流通した限定盤にのみ収録されていたフリューゲル・ホーンのテイクを正規の位置に盛り込んである。キーボードがメインのテイクをボートラへ差し替えるひと手間により、リコが最も望んだ形にして世に送り出すという意味で、ひと息に「再発」といえどもオリジナルを超える作品となった。何ともあったかい話である。

 冒頭、ハイハットのショットからギターのカッティングとトロンボーンが同時に肉をつけていく"フー・マン・チュ"に始まる『ワンダフル・ワールド』は、平坦なところからただ飛び出すだけのスカや裏打ちのリズムを聞かせる作品ではない。どの曲もいったんバネを引き、タメをつくって打ち上がっていく。そして、押す、引く、かわす、被せる、etc…そんな個の技が折り重なって、リコを中心に騒ぎ立てる。さらに、ジャズの名曲に裏打ちというスパイスを振りかけ、小気味良く料理しつつ、根底にはジャズマンとしての誇りが見え隠れする。何よりも、しわがれたリコのヴォーカルが、打ち抜かれてスポンジのようになった体に染み込んでくるはずだ。

 "ワーク・ソング"に"オーヴァー・ザ・レインボウ"、"スターダスト"までもが収録されているこの作品。事細かなレビューをやりかけて、ほとんど消した。これは「オリジナルを超えた再発盤」なのだから、ライナーノーツとか解説なんていう尾ひれは、聴いた後で読めば良いのでは? あとからニンマリ笑って「どうだった?」とだけ、これでいいんじゃないでしょうか。

reviewed by taiki


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