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よっしゃー!! ライヴに行こう!!
勢いあるなぁ〜、どこまで行くのだろう? このCDを聴いて感心してしまう。レコーディング6曲+ライヴ音源1曲からなるミニアルバムには、2007年を駆け抜けていった彼らの「速さ」が詰まっている。「バンドを始めました、ライヴやりました、レコード会社と契約してデビューしました」というところまでは、いわゆる初期衝動でいけるのだろうけど、アルバムを2枚出し、ツアーを何本もこなしていくうちに、バンド活動がお仕事になり、新鮮な衝動だけではやっていけないはずだ。問題はそこから先であって、仕事になったとしてもバンド活動を楽しめるのかどうか。このへんがさらに飛躍できるかどうかの分岐点になるのだろう。
だけど、このCDを聴いて安心した。その分岐点をちゃんとクリアするような作品にできあがっているからだ。まずは曲を作ること、アレンジをすること、演奏をすることが楽しくてしょうがないという感じが伝わってくるし、このCDを聴けば、50回転ズのライヴに行ってみたくなるだろう。2007年はライヴにレコーディングにと大変働いたのだけど、消耗した感じがない。彼らはタフなのだ。
2008年の1月現在、バンドは全国をツアー中で、2月の末には東名阪で単独ライヴを控えている。まだまだ休息を取るのは許されないのだ。その最中に、このミニアルバム『レッツゴー3匹!!』がでる。このアルバムは、50回転ズの最初の転換点となることだろう。デビューまで溜め込んだ楽曲は使い果たしゼロから曲を作り上げることになった。一聴すると、50回転ズらしいガレージなロックンロールは相変わらずなんだけど、よく聴くとさまざまなアレンジの工夫が発見できる。新たな楽器の導入など「足す美学」で作られたアルバムといえる。50回転ズにとって、デビューから突っ走ってきたところに区切りをつけ、新たな展開を感じさせるアルバムになった。というわけで、カウントダウン・ジャパンでのライヴが終わった後の楽屋で、メンバーたちがアルバム全曲につけたコメントと共にレビューをお送りしたい。
1曲目 "レッツゴー3匹!!"
何でも50回転ズが主人公になったアニメができるそうで、その『GO! GO! 50回転ズ』のテーマソングである。アイリッシュパンク風の勢いのある曲で、「レッツゴ〜! レッツゴ〜!!」と、初めて聴いても一発でサビを覚えてしまう。ライヴではすでに演奏されていて、サビでは合唱もおきている。「フットボールソングみたいにいかつい感じで盛り上がる曲」(ダニー)を意識して作ったとのこと。さらに、ダニーはマンドリンやガットギターにも挑戦してアレンジの幅を広げている。
2曲目 "拝啓、ご先祖様"
この曲は、アメリカのおバカ映画、『ダーウィン・アワード』の日本版CMソングとして作られた。ダニーは映画を何度も観て、映画の内容に即した歌詞を書いたとのこと。50回転ズ史上最も鋭いリフから始まり、見事に50回転ズ流のハードロックに仕上がっている。確かにハードロックぽいのだが、「ご先祖様、ごめんなさーい! こんなバカな子孫で〜、イェーイ! イェーイ! イェーイ!!」とダニーが絶叫すると、思わず吹き出してしまう。今まで50回転ズにないタイプの曲なのに、聴いてしまうとすんなり耳に馴染んでいる。
3曲目 "女のひとり酒"
"アタイが悪いのサ"(『50回転ズのギャー』収録)と同じく女性目線で歌われる曲。去ってしまった男を思い出し、ひとり泣きながら酒を飲む歌謡曲チックなアレンジで、歌詞は上村一夫みたいな世界を作っている。でも、どこかパロディ的な感じもあるし、テンポが速いせいもあって、もの悲しく感じさせない。「全国のキッチンドリンカーに捧げる」(ダニー)とのこと。
4曲目 "夜汽車のブルース"
ドリー作。"1976"や"YOUNGERS ON THE ROAD"のように甘酸っぱいサビを持つ青春的な路線は、一旦終わりにして別の方向を模索した曲である。CDで聴くとGSぽい感じがするのだけど、ライヴで聴くとセックス・ピストルズぽい印象がある。「ドロっとしているけど、前向きな歌詞」(ドリー)で、マイナーコードの曲なので甘酸っぱさを封印して、ダークな要素もありながら勢いもあるし、聴き込むと不思議な曲である。
5曲目 "太陽のムハ!"
「ガレージっぽい、でもサーフには至らんような、インストゥルメンタルをやってみたかった」(ダニー)ように50年代ぽいエレキなインスト。サステイン(音を長く持続させるエフェクター)の効いたギターが鳴っているところに、ダニーの「ムハハハハハ」という笑い声が入る。コンガもダニーが叩いている。
6曲目 "続レッツゴー3匹!!〜真夜中の騒音公害〜"
「うるせ〜!!」という叫び声から始まる勢い一発の曲。もうこの勢いは今の50回転ズを象徴している。どうのこうの言うよりこの勢いを体感すべきだろう。実は、この「続」の方が、1曲目よりも先にできていたという……。
7曲目 "ダニーの妬み節〜live at 心斎橋CLUB QUATTRO〜"
これは聴いてもらうしかないでしょう。この日のライヴが始まる前に、ドリーがファンから貰ったプレゼントに対して、ダニーの妬みが炸裂したMCは抱腹絶倒必至だ。ダニーの話術の上手さ、お客さんを引きつけて巻き込んでしまうのはすごい。「50回転ズのライヴの雰囲気をそのまま残したかった」(ダニー)というように、まだ50回転ズのライヴを観たことない人にもよく伝わるだろう。大阪のお客さんのノリのよさも素晴らしい。
協力:田中宏(エフステージ)
reviewed by nob
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