ソウル・フラワー・ユニオン ソウル・フラワー・モノノケサミット

"ライブ辺野古" (国内盤)
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「ソウル・フラワー・ユニオン(以下、SFU)史上最高のライブだった。」昨年、沖縄は辺野古への米軍基地移設問題を当地で訴えたイベント『ピース・ミュージック・フェスタ』。そこでのSFUのライブを評してどからともなくなくそんな声が聞こえてきた。その時のライブを収めたDVD"ライブ・ヘノコ"への興味は、「それが一体どんなライブだったのか」ということだった。今、このDVDを見終わった感想はちょっと違ったものになっている。
SFU初のライブ映像となったこの作品。収録はSFUと、その別名チンドンバンド、ソウル・フラワー・モノノケサミット(以下、モノノケ)との2本立て。更に、藤本幸久監督の『アメリカの戦争と日本』というドキュメンタリー映像や、ブックレットには、基地移設反対運動の中心人物である平良夏芽氏の8ページにも渡る言葉など、ただのライブDVDとは一線を画する内容だ。また、CDとしてSFUが辺野古を唄った『辺野古節』を4バージョン収めたシングル盤も同封されている。
昨年の2月、2日間に渡って行われた『ピース・ミュージック・フェスタ』は、渋さ知らズ、ノマアキコ(GO!GO!7188)、梅津和時や10組以上の地元沖縄のミュージシャンが辺野古のビーチに集いライブを繰り広げた。それは、有刺鉄線の向こう側にある武器や戦車に向けて鳴らされ、沖縄の基地移設というナイーブな問題に対し、断固「No」を突きつける非常に勇気溢れるイベントだった。
画面に映し出されるSFUとモノノケのライブは文句が付けようのない程素晴しいものだ。たらいまわしにされている沖縄の基地問題に対して明確に反対の意を表明し、それを現地で演ってしまう。正にSFUらしい音楽の鳴らし方。彼等の音楽がそんな場所で実に良く映えるのは、何かを伝える力を確実に持っているからだと常々思っている。それは、もちろん彼等の思いや気持ちだったりするが、決してそれだけではない。それは、僕と君が繋がれる音楽ということだ。彼等の放つ祝祭的な音楽は、目に見えない壁を遠慮なく取り壊していく。そんな無礼講な力に、いつだって心も体も揺らされてしまうのだ。それは、東京だろうが、東ティモールだろうが、もちろん、沖縄の辺野古だろうと変わらない。特に、モノノケの演奏は本当にその場にいなかった事を後悔させる素晴しいものだ。先人達が歌い継いできた唄が会場に広がっていく様は、民衆に根ざした音楽の深さと、そこから巻き起こる鼓動を感じさせる。『アリラン』の悲しみの旋律も、『新世紀平和節』のドンチャン騒ぎも、今日この日まで、唄に託されてきた希望が、この場所に生きる人の思いとシンクロした素晴しい瞬間だった。
この映像作品は、この日のライブの素晴しさを実に雄弁に伝えていると思う。でも、その素晴しさが僕達に訴えてくるのは、単純に音楽がどうのという話だけじゃない。何よりも、その場に立つ事がどれだけの意味を持つのかという事だ。作品のイントロで映し出される有刺鉄線の向こう側のアメリカ軍の基地。有刺鉄線に結びつけられた色とりどりのリボンの美しさとは真逆で、いまその時も新しい戦争に加担するための施設を建設しようとしているのだ。そんな場所で反対の意思を示すということ。そのために唄が歌われたということ。その事実の激しさをどのように受け止めればいいのだろうか。この現場感こそソウル・フラワーの真骨頂に他ならない。中川敬は言う、「(米兵が)除隊してしまいたくなるような音楽を演ろう」と。
現場感という意味では、辺野古での移設阻止運動の現場はかなり切迫した状況だ。藤本幸久監督の『アメリカの戦争と日本』には、基地移設反対運動の抜き差しならない現実を映像に収めている。荒れた海の中をカヌーに乗って海に出る人々。海上ボーリングを体を張って阻止しようとする光景。それは命を張っていると言っても決して大げさではない光景だ。月並みな言い方になってしまうが、本気で何かを変えようとする時の壮絶な意思を見ている気がする。自分達にあれほどの切実さがあるのだろうか。何もしていない自分が、戦争に加担している可能性をしっかりと認識しているのだろうか。作中、「心ある世界中の人々が動く時間を作るのが、私たちの海の上の役目だと思っているの。だから休めない。休みたいけど。」という言葉が胸に突き刺さる。
ロックも、パンクも権力や既存の価値観に対する反抗の意味があったはずだ。だけど、そんな反抗によって作られる壁でさえも今の世の中のシステムは織り込み住みなのかもしれない。アメリカは民主主義やグローバル経済を盾に取って、反抗するものに爆弾を落としている。反抗する事が、有刺鉄線の向こう側と壁を作り出す事にもなるのだ。だからこそ、目に見えない壁を壊すような唄には希望を託さずにはいられない。あの場所で「エエジャナイカ」と踊る観客の笑顔の素晴しさ。それはシステムの側から完全に自由になれた瞬間なのだ思う。ただ踊って、笑って、隣の誰かをちょっとだけ好きになって。不遜を棚に上げて言うならば、ドキュメント映像に収められているような阻止行動はあっちゃいけないはずだ。あんなことが無くなるのが、本当に正しい世界なのだと思う。唄の力とは、そんな正しいことを心の底に呼び覚ましてくれるものなのだとこの作品は見せつけてくれる。
「SFU史上最高のライブ」。もう、そんなことはどうでもよくなった。そんなことよりも、その場所に立ち、唄を歌うバンドがいたということに、そこに溢れるほどの笑顔があったことに、そこに生きて何かに立ち向かう人がいることに感動したのだ。音楽の力も、行動する人々もシステムの側からみれば、吹けば飛んでしまうようなものなのかもしれない。だからこそ忘れてはいけない。今この瞬間もどこかで闘っている人がいるということを。そして、そこに確かな希望があることを。"ライブ・ヘノコ"は、そんな瞬間を収めた稀にみる映像作品である。
この場所がどれだけの荒れ地であったとしても、唄を歌おう。あいつと一緒に、そう君と一緒に。きっとそこに見えるのは希望だけだと確信している。
reviewed by sakamoto
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