再び泥まみれのグラストンバリーに15万人!
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さて、話題は最終日の3日目(28日)に突入するのだが、この日、最も楽しみにしていたのはトニー・ベネット。おそらく、若いロック・ファンには全く縁のないアーティストだと思うのだが、言ってみれば、フランク・シナトラに近いタイプのジャズ・ヴォーカリストだ。ロックとは無縁で、オルタナティヴな雰囲気もしない。おそらく、誰もが「なぜトニー・ベネットがグラストンバリーに?」と思ったに違いない。
ところが、実は、こんなことがあるのがグラストンバリー。数年前に、同じような雰囲気で登場したのがトム・ジョーンズだ。噂ではラス・ヴェガスに住んでいるということで、それほどまでに保守的なアーティストがグラストンバリーに出演するので大騒ぎになったことがある。残念ながら、あの時は、彼のステージを見逃しているのだが、見た人によると受けに受けていたとか。
全盛期にご婦人がパンティを彼に向かって投げたという伝説があるのだが、この時も、泥まみれのパンティがステージ向かって投げられたとか... といっても、それはおそらく冗談なのだろうが、初めて本格的にソウルを歌った元祖ブルーアイド・ソウルがこの人。大喝采を浴びていたと言うことだ。
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というので、興味津々でチェックしたのが場違いとも思えたトニー・ベネット。ソウルでもなければ、ロック色もないジャズ・シンガーのオヤジ... といってもいい人なのに、実は... 驚くべきことに大人気だったのだ。拍手喝采に加えて、彼と一緒に合唱している人も多く、グラストンバリーに集まってくる人たちのオープンさに感激したというのが本当のところだ。考えてみれば、フジ・ロック・フェスティヴァルに北島三郎が出るようなもの。もちろん、個人的には大歓迎なのだが、彼が正当に受け入れるかどうか... 心配だ。できれば、フジにも演歌歌手の実力派が登場してくれればいいのだが、それが実現されるのにはまだまだ時間がかかるのではないだろうか... そんなことを考えてしまったのがこの時だった。
最も気になったトニー・ベネットに続いて、やはりチェックしたのがショーン・レノン。ジョン・レノンの息子となると、やはり無視することはできない。とりわけ彼のアルバムが面白いと思ったわけでもないのだが、今年から新しくできたNEWというステージに向かった。
場所はジ・アザー・ステージの隣で、収容数は2000人ぐらいか。さすがに注目度が高いのだろう。カメラマンも数多く集まってきて、ショーンの登場を待ちわびている。が、正直なところ、失望した。全然面白くもないし、エキサイティングでもない。おそらく、ライヴに慣れていないからなんだろうが、ステージから伝わってくるものがないのだ。また、珍妙なアジア風味を出した、まるで千手観音のような演出でステージに現れたときには、結構あきれかえったものだ。
その頃、ピラミッドで始まっていたのがボブ・ディラン。いっさい写真は撮影させないということで、撮影はあきらめていたのだが、これだったらディランを見た方がよかったと深く反省。というのも、グラストンバリー・フェスティヴァルを始めたきっかけを、主催者のマイケル・イーヴィスがかつてこう語っていたからだ。
「ディランやドノヴァンが語っていたことを、形にしたかったんだよ」
いわば、フェスティヴァルの原点がディランにあったといってもいいだろう。
また、マイケルがディランをステージにたたせようと何度もトライしていたのも知っている。その度に「彼は自分自身のライヴにしか興味がないって言われてね。やっぱ、大物になったら、そうなってしまうんだろうな」なんて愚痴を聞かされていたからだ。
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ところが、そのディランがついにここにやってきたのだ。が、NEWからピラミッドまでの移動が大変で、ショーンのライヴ撮影のこともあって、結局見逃すことになってしまったのだ。実に残念だ。とりわけ、今のディランにそれほどの関心があるわけではないのだが、なによりもディランを見るマイケルの表情を見たかったというのが本音。今度、チャンスがあったら、そのあたりの話をマイケルにインタヴューしてみたいものだ。
さて、グラストンバリーにやって来て、これほどのミュージシャンが演奏しているのに、必死にライヴを見たいと思わないのはなぜだろうか? もちろん、泥の海という現実もあるのだが、別に晴れ渡っていても、必死になってミュージシャンを追いかける人はそれほど多くはない。確か、クーラ・シェイカーかなにかのメンバーがインタヴューに応えて、「ああ、グラストンバリーには来たことがあるけど、バンドなんて全然見なかったさ。それ以外の方が楽しいんだもの」なんて応えていたのを覚えている。そのあたり、友人のミッチとあれこれ話をしていたのだが、おそらく、なによりもフェスティヴァルの魅力はライヴではなく、ここに来ることそのものではないか... というのが結論だ。
例えば、会場の一番端っこ、丘の上に行ってみればいい。小さめのストーンヘンジのようなものが置かれているここで1日中なにもしないで、ボケ〜っとしている人も多いのだ。そうではないにしても、ピラミッドからここまでやってくるにはかなりの時間を要する。なにせ、80年代半ばのこの場所は会場外。フェスティヴァルの全景を写真に収めようとして車でその丘のてっぺんまで移動した記憶があるほどだ。ところが、そこにもかなりの人がいて、その下ではオルタナティヴなエネルギーを使ったさまざまなものが展示されていたり、瞑想している人がいたり、ヨガをしている人がいたり... どのステージからも全く音の聞こえてこないここにも数多くの人が集まっているのだ。
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一方で、ずっと下の方でもテントの前でたき火をして、持ち込んだテレコからサウンド・システムをどでかい音量で鳴らしながら、踊っている人もいる。アナーキーといえば、そうなんだろうが、ステージで進行している音楽には全く関心のないような人も多いのだ。かといって、ドラッグでつぶれているわけでもなく、キャンピングして仲間と一緒に遊んでいるのが楽しいといった表情が伝わってくる。思うに、これこそがフェスティヴァルの魅力なんじゃないだろうか。
また、どれほど雨が降っても、それを楽しんでしまうのが観客。もちろん、全ての人たちが全身泥まみれになるわけではないが、そんな人たちも多いのだ。ちょうどワールドカップの時期だというので、どろんこのなかでサッカーをしていたのが数人の子供たち。おそらく、一度転んで破れかぶれになったんだろうが、こんな楽しみ方だってあってもいいだろう。
そういえば、映画のスクリーンのそばにでっかい画面が作られていた。これはワールド・カップの中継を放送するために特設されたもので、その目的はイングランドの試合を見せるためのもの。なんでもその時にはここが人の群に埋まったらしいのだが、その前だったか放映されていた日本対ジャマイカはほとんど無視されていたとか。グラストンバリーでワールドカップの日本チームのサポーター、約5名で日本を応援していたんだと。
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テントで休息しながら、音だけ聞いたのがアラバマ3やバーナード・バトラー。マイティ・マイティ・ボストンズなんかも見たかったし、Jazz & World Musicステージで演奏していたはずのドクター・ジョンやヘッドハンターズだってみたかった。それに日本からブームブーム・サテライツや天空オーケストラというバンドが出演していたということで、彼らがどんな反応を受けたのかチェックするのもよかったろう。が、身体はひとつしかない。結局、仲間や友人たちの動きをチェックすることになってしまうのだ。
それがジョー・ストラマーDJセットwithベズ。スマッシュ・ロンドンのスタッフの友人であり、昨年のフジ・ロック・フェスティヴァルでの出会いもある。彼らを見逃すわけには行かない。予定では10時半にジ・アザー・ステージの最終アクトとして登場してくるはずなのだが、その前のバンド、スピリチュアライズドの演奏がなかなか終わらない。なんでも、後から入った情報によると、ジョーとベズがめちゃくちゃアナーキーなことをステージでやろうとしていると思って、できるだけ彼らの出演時間を短くしようと舞台監督が画策していたとか。ことの真意は定かではないが、充分にあり得る。
が、ジョー・ストラマーがコンサートといったものに登場するのは数年ぶり。確かポーグスで「ロンドン・コーリング」とかを歌っていたとき以来だから、パンク・ロック好きは大いに期待していたに違いない。実際、日曜日の最後に出るバンドとなると、帰路につく人が多いのだが、ステージ前にはジョーの登場を待つ人で溢れていたほどだ。
おそらく、会場に集まっていた人は、なんからの形でジョーが歌うとでも思っていたように思えるのだが、この日は演奏ではなくDJ。要するにお皿回しが中心だ。しかも、彼は基本的に曲を指定して、アジテーションしながら、踊るだけで、実際にお皿を回すのは周囲の連中。まぁ、舞台監督の気持ちや心配がわからないでもない。
結局、ジョーとベズがステージに登場したのは11時半頃。ステージに立つやいなや、「おい、ミキサー、もっとヴォリュームをあげろよ」と第一声を放ち、やたらアナーキーなDJショーが始まっている。ステージには彼らの他に、スマッシュ・ロンドンのジェイソン・メイオール(基本的には彼がDJの中心で、コロンビアのクンビアとか、ラテン系の曲が中心だったけど)、そして、彼の兄貴で日本でもお馴染みのギャズ・メイオールなんかが立っている... というか、踊っている。 その他、クラリネットやトロンボーンがお皿の音に合わせてインプロヴィゼイションを加えたり... はっきり言って、めちゃくちゃなダンス大会を展開しているのだ。
おそらく、主催者側からすれば、(あるいは、舞台監督からすれば)アナーキーな連中のステージ・ジャックみたいなもの。ところが、これが面白い。なにせ、並の発想ではできないフリーキーな遊びなのだ。トロージャンズのギャズはアジテーションしまくりで、ベズは踊りまくり。ジョーはあっちへ行ったり、こっちへ来たり... わけがわからない。しかもイングランドのサッカー・チームの応援歌を流して、観客と一緒に大声で歌ったり... まぁ、とんでもない世界が展開していたわけだ。
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ジェイソン曰く、「この連中は... アリストクラスティだよ。実は、結構金を持っているのに、汚い格好をしてるクラスティってのかね」となるのだが、ひょっとしたら、ただの酔っぱらい軍団かもしれない。なにせ、連中、開催期間中、テントそばに作ったサウンド・システムで朝まででっかい音で音楽を流し続けていたほど。しかも、休む暇なしに飲んでいた。よくもまぁ、近所から文句が出なかったこと。
が、このアナーキーさは、やっぱ、ジョーやベズならではのもの。それにフェスティヴァルってのは、読んで字のごとく、お祭りだ。こういったどんちゃん騒ぎもあって当然だろう。それに、ジョーがコロンビアなどの南米音楽にはまっているのを知るのも興味深い。本当は、こんなのが昨年のフジ・ロック・フェスティヴァルで展開していたんだろう。あの台風さえなければ、そして、ダンス・テントが野戦病院のようにならなければ、こんな大騒ぎができたのに...
ということで、最後を迎えたのが今年のグラストンバリー。この日は絶大な人気を誇るパルプやソニック・ユース、ニック・ケイヴらがピラミッド・ステージに出演し、ダンス・テントではマッド・プロフェッサーが最後を飾っている。結局、見たバンドの数は少なかったのだが、なによりも満喫できたのが日常とは全く違った空間の空気。それこそがフェスティヴァルの魅力であり、理由じゃないだろうか。だからなんだろう、フェスティヴァルの幕が閉じる頃、そして、会場をあとにする頃、「来年もまた帰ってこよう」と思ってしまうのだ。 |
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report and photos by hanasan on the 10th Jul.
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