buttonOzomatli in N.Y.C. (Sept '98)

LA最強のライヴ・バンド、Ozomatliに注目!
Ozomatli  突然聞こえてくるのはマーチング・ドラム。そして、幾重にも重なったパーカッション、トランペット、サックスの音が後に続く。なにを歌っているのはわからないが、「オゾマトリ」という言葉だけは聞いてとれる。が、そんな言葉ではなく、ぶっ飛ばされるのはリズムだ。フロアの端から、ワイルドな、そして、プリミティヴなリズムを叩き出す一群が姿を見せると、オーディエンスが叫び声を上げ、手拍子が後に続くのだ。

 ロサンゼルスを中心にウェストコースト最強のライヴ・バンドとして飛び出してきたオゾマトリのライヴはそんな感じで始まった。会場はニューヨークのTramps。東京渋谷のクアトロに匹敵するクラブだ。実は、すでにウェストコーストではトップ・バンドに成長した彼らにとってこの日(8月12日)はニューヨークで初の単独ライヴ。そのせいか、この小規模な会場が選ばれたのだ。

OZOMATLI  が、あのサウンドがフロアの片隅から聞こえてくると、アッという間に会場の熱気が上昇。オーディエンスは瞬時にオゾマトリの叩き出すリズムとビートの洪水に飲み込まれていくのだ。そして、10人のメンバーがステージに上って、ワイルドな演奏が始まるや、それを歓声と熱狂で迎えたのがオーディエンス。踊らずにはいられないリズムとビート、パワフルな演奏に、この日、新し物好きなニューヨーカーが完全にKOされたというのが正しい。

 ステージに立つのは雑多な人種が混ざりに混ざったという構成のバンド。ラッパーとパーカッションのひとりは黒人で、ベースとDJは白人。ステージ全面でタブラを叩いているのは日本人で、ホーン・セクション、ギター、ドラムスはメキシコ系だろうか。そのバンド構成は、すでに白人がマイノリティとなっている今のロサンゼルスそのものだ。

 加えて、そのサウンドも人種と文化の坩堝のようなロサンゼルスをそのまま形にしたような新しいスタイル。基本的にはラップで、ファンクなんだろう。が、そんなグルーヴィーでファンキーなビートに、踊り出さずに入られないラテンのリズムが絡まっているのだ。ソカやルンバ、あるいは、クンビア、チャランガにチャチャからレゲエにメレンゲ... 曲によってそんなサウンドが聞こえてくるのだが、そこに、かつて流行った「ワールド・ミュージック」の面影はない。あの時、第三世界の音楽を優しく差別したそれではなく、これはロサンゼルスに住む様々な背景を持つ人々が自然に発酵させた、いわば21世紀の有機的な未来音楽。それがオゾマトリの作り出す音楽だ。

OZOMATLI  しかも、そのライヴの強力なこと。フロアで演奏が始まり、ステージでオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んで... しかも、演奏が終わるのは再びフロア。あの熱気をオーディエンスと共有しようとしているのだろうか、フロアで会場が一体となったジャム・セッションが展開する。いわば、オゾマトリが叩き出すのは、一度体験すれば病みつきになるパーティ・ミュージック。アズテックの踊りの神がそのままバンドの名となっただけに、ライヴは毎回お祭り騒ぎなのだ。

 メンバー構成は10人。が、地元ロサンゼルスでは正式なメンバーの10人に加えて、いろいろな人が加わるらしいのだが、基本的には以下の10人がメンバーとして名を連ねている。

Wil Dog Abers:ベース、ヴォーカル
Chali 2na:ラップ、ヴォーカル
Jiro Yamaguchi:タブラ、パーカッション
Jose Espinoza:アルト
Raul Pacheco:ギター、ヴォーカル
Asdru Sierra:トランペット、ヴォーカル
Cut Chemist:ターンテーブル
Justin "Nino" Poree:パーカッション
William Marrufo:ドラムス、ヴォーカル
Ulises Bella:テナー、ギター、クラリネット、ヴォーカル

 リーダー的な存在がベースのウィル・ドッグ。ジャケットを開くと一番左に顔を見せ、クラッシュのアルバム『London Calling』を見せている人物だ。なんでもクラッシュの大ファンで、初のクラッシュ体験が6歳の時と、とんでもない早熟だったのだがわかる。しかも、10歳の時には楽屋裏でジョー・ストラマーに会っていると言うから驚きだ。が、そのクラッシュのおかげでレゲエやラテン音楽にはまり、今や「ロックには全然興味がなくなった」というのが面白い。このWil Dogの指向性がオゾマトリのサウンドに結びついていく。

 ちなみに、オゾマトリとは、アズテックの踊りの神で、日本人のJiro曰く、「日本語で書けばオゾマツリになるのかな?」とすれば、祭りに似ていて、「ひょっとすると、どこかでアズテックの世界と日本がつながっているのかもしれないね」とのこと。その昔、まだ飛行機もなかった頃、海を伝って環太平洋地域がつながっていたという説があるのだが、そう想像するのも面白い。

 高校生の頃から、Cut ChemistやChali 2naと一緒に、生で演奏するヒップホップ・バンドを経験し、その他、アシッド・ジャズ系のバンドでも演奏していたのがWil Dog。彼が徐々にサルサといったラテン系の音楽にはまり、それがオゾマトリ結成に発展していくのだが、そのきっかけが労働争議を起点としたジャム・セッションだったというのが面白い。

「仕事を首になって.. 仲間と一緒にダウンタウンの建物を占拠して座り込みを初めて.... ジャム・セッションを始めたんだ。友達や友達の友達... 誰でもいいから、一緒に演奏しようって感じで。最初はサンタナとか... 人の曲をコピーして遊んでいたんだけど、徐々にオリジナルをやるようになってね」

OZOMATLI  座り込みを始めたのが95年3月12日で、オゾマトリが結成されたのはその年のエイプリル・フール、4月1日。占拠していた建物から飛び出したときにオゾマトリが生まれている。

 それ以降、とんでもない数のライヴをこなしてきたというのだ。少なくとも週に2回(金曜日と土曜日)は地元のクラブでレギュラーで演奏。たまにはウィークデーのライヴも加えられていたし、そんな活動を通じて、彼らの名前が知られるようになり、時には、同じ日に4箇所で演奏するほどの忙しさも経験したという。

 加えて、出演料も出ないフリー・コンサートやベネフィット・ショーなど、ありとあらゆるチャンスを使ってライヴを続けていった。同時に、演奏をテープに収め、自分自身でオゾマトリのロゴをデザインし、プリントしたカセットを制作。それをありとあらゆるフェスティヴァルのオーガナイザーに送ったというのだ。そして、徐々に、ただではない、ギャラのもらえるライヴの話が転がり込んでくるようになるのだ。まさに、オゾマトリはライヴを通じて人気を獲得していった本物のバンドだというのがこんなストーリーからも想像できる。

OZOMATLI 「ライヴがリハーサルさ。メンバーがそろってやるダンス・ステップも、リハーサルなんてやったこともないし... でも、ライヴをやっていくうちにあれが形になってしまったんだ。徐々にバンドの連中もそんなのにはまっていってね。『こんなことしようぜ』『あんなことしようぜ』って、アイデアが膨らんでいって.... 曲もライヴの途中で生まれるようになってね」

 そんな活動を通じて、オゾマトリはロサンゼルスのアンダーグラウンド最大のバンドへと成長していく。そして、97年始めに自らの力で4曲入りのEP「Ya Llego! 」を発表。13000枚を売り切ったという。それがALOMO SOUNDSとの契約につながっていったのだ。が、その時点でも彼らのハードなライヴ活動は止まらなかった。それはアルバムを発表しても同じこと。オゾマトリはライヴでこそその魅力を100%以上発揮できるバンドなのだ。

 最大規模のライヴは5〜6万人規模のフェスティヴァルで、単独公演では3万人を前に演奏。加えて、それに今年のワープト・ツアーにも参加している。パンクやスラッシュっぽいバンドの後に演奏するのは簡単ではなかったようだが、それでも、演奏が終わる頃には会場がパーティ騒ぎになっていたというから恐れ入る。また、並のバンドではなかなかできなかっただろう、キューバ公演も成功させている。なんでも自分たちをキューバに送り込むためのベネフィット・コンサートを企画して、資金作りをしたというのがオゾマトリらしい。しかも、キューバではわずか1週間の間に数千人のオーディエンスを前に演奏するなど、大好評を博しているのだ。

 彼らの姿勢は明らかにパンク的で、そのサウンドは... 全てが凝縮されていると言えるほどにアナーキーだ。ルンバからサルサ、クンビア、メレンゲといったラテン系の音楽から、アシッド・ジャズ、ラップ、ファンクあたりがごっちゃになってぐつぐつ煮立っているようなもの。言葉を代えれば、オゾマトリの音楽は、テクノと対極をなす、有機的な21世紀音楽であり、これこそが今のアメリカをそのまま映し出しているとも言える。

 プロデューサーにはサイプレス・ヒルのT-Rayを起用。ロス・ロボスのDavid Hidalgoといった名前がクレジットに発見できるのだが、その他Jump With Joeyのトロンボーン&サックス奏者、Dave Ralickeの名前が見つかるのがすか・ファンには嬉しいところ。

 歌の内容はかなり政治的で過激。基本的にはスペイン語の歌が多いのだが、そこに英語のラップが加えられるというのが魅力なんだろう。ヒスパニック系だけではなく、黒人から白人、さまざまな人種のオーディエンスを巻き込んでいるのがオゾマトリ。これも今のアメリカを象徴する出来事だ。

Ozomatli  もちろん、彼らが取り上げているラテン音楽が純粋なものではないという批判が純粋主義者から来るかもしれない。ただ、異質なものがぶつかり合ってこそ生まれるのが新しい文化。オリジナルのルーツ音楽に充分な敬意を払うと同時に、新しく、そしてヴィヴィッドな音楽を作り出そうとしている彼らも充分敬意を払って見るべきだ。特に、人種の坩堝、アメリカのロサンゼルス、しかも、多種多様の音楽が渦巻くなかで育ってきたのがオゾマトリの面々。彼らの音楽はそんな土壌のなかから自然に発酵したものだ。

 12日のTrampsでのライヴの後、15日にはニューヨーク市が主催し、無料で開催されるセントラル・パークのサマー・ステージに彼らの姿を再び見ることになるのだが、その時、メンバーの父親がこんなことを言っていたのが印象的だ。

「オゾマトリは、なによりもピープルズ・ミュージックなんだよ」

 まさしくその通り。これは普通に生きる人々の気持ちをそのまま反映した音楽。そして、雑多な人たちが有機的に混じり合い、成立する21世紀の世界を映し出す未来の音楽だといってもいい。とにもかくにも、こんな彼らが来日し、日本のオーディエンスのド肝を抜いてくれることを期待する。
report and photos by hanasan on the 13th Sept.
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