buttonInterview with ギー(19th Feb '08)

ギー、再征服
Part.2

このバンドは一粒で二度おいしい


Gheee Gheee
 強さと柔軟性をもつツイン・ヴォーカルをガッチリ支えるリズム隊、ヤナ(Dr.)とヒサヨ(Ba.)。ともすれば地味になりがちなポジションにありながら、このふたりは、ライヴでもアルバムでも、ギーのオリジナリティ溢れるサウンドを支える屋台骨になっているといっても過言ではない。音圧はしっかりあるのに、弾むようなメロディまで表現するベーシストと、バンド全体を見つめ、野球でいうならキャッチャーのような役割も果たすドラマー。そんなプレーヤーがいるから、ギーは強い光を放つバンドで、完成度の高い音楽を発信することができるのだ。
 これまで、ギーのメンバーとしては、あまりメディアに出ることのなかったふたりは、このバンドをどんな風にとらえ、音を作り上げているのだろう。それが知りたくて、この場を設けてもらった。


--近藤さんと深沼さんにも聞いたのですが、今回のアルバムはすごくライヴっぽいですよね。

ヤナ:そうですね。作り込むタイプのアルバムというよりは、シンプルでライヴ感のあるものになったと思います。音をコラージュするとか、実験的なことをするでもなく。深沼くんのミックスもドラムひとつとっても生に近い感じでした。

ヒサヨ:ライヴですでにやっている曲を録るときの状況がライヴに近い感じだったので、そういう雰囲気がでてるんだろうなと思います。

--レコーディングやリハで曲をもらうときは、どんな形で渡されるんですか?

ヤナ:深沼くんの曲はかなり作りこんだ形で出てくる。だから、彼の曲に関しては、僕の場合、まず丸ごとコピーするんですよ。馴染んできて、表情が見えてきたところで、あとは臨機応変に叩いています。レコーディングでも、ここでああしてこうしてとあえて決め打ちせず、自然にやっちゃってますね。ライヴでやってないこともやっているかもしれない。ライヴはライヴで、CDと100%同じじゃなくてもいいやと思っているし。その時の雰囲気とか気分で勝手に手が動いちゃう。

ヒサヨ:私は基本的にデモをもらった時点ではあまりベースの音は聴かないんです。カラオケっぽく聴いて、自分のフレーズを作っていきます。

ヤナ:ヒサヨちゃんはイメトレをすごくするんですよ。口癖のように「イメトレするんで」って言ってる。

ヒサヨ:曲の理解度を深めるためにやっています。自分の中でドラマを作って、自分を盛り上げて(笑)。私は、結構カッチリ音は決めておいて、あとはヤナさんがどうくるんだろう? って見ながら微調整していきます。フレーズより、グルーヴをあわせる感じで。

--近藤さんの曲も同じような形で?

ヤナ:それがね、対比がすごく面白いんですよ。構築型と感覚型。近藤くんは深沼くんと逆で、曲を作りこんでこない。だから、2とか3くらいのものを僕らで7〜8くらいまでに持っていく感じ。それが近藤くんの曲に対しての作り方。

--ヒサヨさんは深沼さんの曲もあまりベース音を聴かず、自分で作りあげていくから、近藤さんの曲に対してもアプローチは変わらないのでは?

ヒサヨ:いえ、深沼さんの曲はすでにイメージがガツッとできているから、深沼さんが描いている絵を私も見ようとするんです。同じところを見ながら、「私はこうやる」って感覚なんですけど、近藤さんの曲はみんなでイメージを作っていく感じ。そこで初めて答えが出るので、比重が大きいというか、私がぽんと弾いたもので形がかなり変わっているんだろうなー、と思います。そういう意味ではやっぱり違いますね。

ヤナ:無意識に深沼くんのはロジカルに、近藤くんのはワイルドにとらえているかもしれないです。自分のアプローチの振り幅を変えられるところも面白い。

--同じバンドなのに、違うバンドの曲を作っているみたいですね。

ヤナ:そうそう。グリコのお菓子じゃないけど、「一粒で二度おいしい」です。それはツートップであるこのバンドならでは。味がふたつあるなら、それを楽しんだほうが建設的ですよね。

--構築されている、されていないを抜きにして、名前を伏せて曲を渡されたら、どちらが書いたものかわかりますか?

ヤナ:出来上がりだけ聴いたらわからないです。深沼くんが近藤くんを意識して書いた曲とかは、近藤くんの曲かな? と思ったりする。クレジット見てびっくりだったりとか。そういう点で、ふたりの歩み寄りはすごく感じます。あえて、お互いの『白い毒』と『黒い毒』を押し付けてこない。溶け合おうという歯車があって、そこは美しいなと思います。

ヒサヨ:深沼さんがデモで作ってきた曲で深沼さんがガッツリ歌っていても、それを近藤さんが歌うと、もう近藤さんの曲。節回しが自分で作ったのかな? と思うほど変わってる。その逆もあるし。それを合わせようとしてやっているのではなく、お互いがちゃんと自分のものにしているのはホントにすごい。自分もバンドの中にいながらそう思います。

--ファーストもそうでしたけど、タイトルや歌詞を見ると、どちらの作品なのかなんとなく想像がつく感じだったので、それは意外でした。

ヤナ:あー、歌詞とかはそうですよね。でも、曲に関してはふたりともオレの好みにあわせてくれっていうのはいっさいないんです。

ヒサヨ:だからバンドとして一個になれるんですよね。どの曲も。

--近藤さん、深沼さんと比べて、ヤナさんとヒサヨさんは客観的にバンドが見られると思うんですけど、ふたりの目から見たギーはどんなバンドですか?

ヤナ:う〜ん……。

ヒサヨ:何々みたい〜っていうのがないですよね。

ヤナ:ホントの意味でオルタナな感じはしています。テイストはロックなんだけど、日本のロックとかUKとかUSとか混ぜっているし、かけ離れてもいるし……。スタンダードなアプローチをしているけど、クラシック・ロックでもなく、90年代のグランジとも違う、新しいスタイルなのかなと。

ヒサヨ:新しいけど、この音はうちらの世代の人じゃできないですよ。偽物っぽくなっちゃう。ストレートなんだけど年輪を感じるし、奥が深いから。新人バンドでこれをやる人はいないだろうし、かといって、長くやっていてネタがないから同じことばっかりやってるようなバンドとも違う。すごいところで勝負してるなって思いますよ。こ洒落たこととか、ちょっとセンス良い風にしている人よりも。そんなゴマカシせずに。

ヤナ:ゴツいバンドよりパワフルだしね。おしゃれなバンドよりもスタイルはキラッしてる。

ヒサヨ:誰にでも自信持って聴かせられる。「私これやってんの!」って。

--おふたりは他にもいろいろなバンドで演奏をされていますが、ギーはこう弾こうというモードってあるんですか?

ヒサヨ:「ギーとはこうです」という答えは初めからないから。それぞれ持ち場があって、ここはまかせたよって感じになっているので、だからこそ自分で考えて、私が「ギーのベースはこれです!」というものを出そうと思っています。

ヤナ:イメージはしていますけど、「ギーだからこう」というように決めてかかってはいないです。最初は近藤くんと深沼くんにあわせようかと思っていたんですけど、ふたりがそうさせないので。自然にその時の空気を読んで、感じて、グッときたり、凛とする感じになればいいなと。

ヤナ:僕のプライオリティとしては、リズムに乗っかる人がいかに気持ち良いか、全体のグルーヴができているか、そこにつきます。自分の個性とかおいしい部分を出す必要はなくて、メインは近藤&深沼のツートップ。歌が入れ替わるのを感じ取って、深沼くんが気持ち良く歌えるタイム感、近藤くんがノレるリズムを1曲の中でいかに展開できるか、そこに全部のアンテナがいっています。それ以上のことはあんまり考えていないですね。

ヒサヨ:私、ヤナさんは「オレについてこい!」ていう感じの人ではない、ドラマーっぽくないドラマーだなって思っていたんですけど、あ、そういうことなんだって今わかりました。その日のみんなのノリを見て出していく音に私があわせていくから、毎回同じにはならないし、楽しくやれるんだなって。

--ヒサヨさんは衣装や髪形も東京ピンサロックスの時とは変えていますよね? それがヒサヨさんが考えるギーのイメージなのかな、と思ったんですけど。

ヒサヨ:そうですね。この3人の中にいる人はこうあって欲しい、というのは客観的に見ています。例えば、ピンサロックスの私をそのままボッとギーに入れたら、絶対に当てはまらないんですよ。最初のライヴの時も、髪あげようかどうしようか、とかいろいろ考えたんです。それで、ちょっとダークというかクールな路線がいいかなという結論になって、今の感じになっています。ピンサロックスとギーでは、私はある意味人格が違う。違う劇で違う役を演じている感覚です。

--今度は、お互いをどんな人だと思いますか?

ヤナ:テクニックもすごいし、紅一点で華があるから、ライヴではお客さんの目がみんなヒサヨちゃんにいっちゃう。おっとりしてるのに、ステージで大変身しちゃうタイプ。よく『こち亀』の本田(バイクに乗ると人格が極端に変わるキャラクター)みたいだねって言っているんです(笑)。

ヒサヨ:ステージに立って、ベースを持つとああいうモードなんですよね。本編では絶対に笑わない、とか。

ヤナ:普段は、のほほ〜んとしてるけど。

ヒサヨ:でも、"のほほん度"はヤナさんが一番私に近いですよ。のほほん組です(笑)。
 ミュージシャンとしてのヤナさんは、さっきも話したんですけど、その時の空気でノリを変えていて、ライヴでも毎回違うのが一緒にやっていて面白い。以前「ヤナさんはいろんなバンドやっているけど、切り替えってどうしているんですか?」って聞いたことがあるんです。私はスイッチを入れ替えないとできないから。その時に「自分は常に同じ気持ちでいるから、どこにいってもその場の空気にニュートラルに合わせられる。だからいろんなことができる」って言っていて。それは毎回のライヴとかプレイを見ていても納得できるし、素晴らしいと思います。

--では、最後に、これからのギーの見どころを教えてください。

ヒサヨ:ファーストを出した時よりも、バンドとしての距離感が変わっている感じがしていて。みんなの気持ちのつながりとか。関係性が変わると、同じ曲でも演奏が変化する。始まりに答えがないだけに、ギーのセカンド・ステージがどんな風になっていくのか私自身も楽しみです。

ヤナ:『レコンキスタ』を作ったことによって、メンバーそれぞれのいい部分が深沼くんのミックスで抽出されたと思う。そこから、ツアーを通過することで、深沼くんの力とか近藤くんの美味しい部分とか、ヒサヨちゃんのすごいところがより出てくる気がしてます……というか、そう実感した! これだけいろんなカラーが揃っていると、つぶしあったりとか、かえって地味になったりとかありがちなんですけど、ギーに関してはどこまで魅力が引きだされていくんだろう? という末恐ろしさを感じます。

ヒサヨ:みんなが魅力を認めあって、尊敬しているから一個になれるんですよね。

ヤナ:ツアーでは、いままで以上にグレードアップしたギーを見せるので、楽しみにしていて欲しいです!



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"Reconquista"ツアー

4月2日:下北沢クラブ251
4月4日:京都MOJO
4月5日:大阪・福島ライヴスクエア・2ndライン(ワンマン)
4月6日:名古屋クラブ・ロックンロール(ワンマン)
4月11日:札幌スピリチュアル・ラウンジ(近藤、深沼の各々ソロの弾き語り)
4月12日:札幌スピリチュアル・ラウンジ
4月13日:旭川カジノ☆ドライヴ
4月19日:仙台マカナ
5月8日:鹿児島SRホール
5月10日:福岡ドラム・サン
5月18日:代官山ユニット(ワンマン)
*詳細はオフィシャル・サイトでご確認ください。

interview by wacchy, photos by hoya


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