Interview with ハリス (14th May '08)
変化した「楽しカッコいい」4人
「今の、リアルなハリスを放出できた」
Vo.アキラが自信を持ってそう断言するニュー・アルバム「ヴィヴィアン」で、ハリスは変わった。自然にではなく変わろうという意識をもって変化してきた。アルバムとミニアルバムを作り、ワンマン・ツアーを行った昨年1年間で、端から見れば、ある一定のレベルで自分たちの形を作りあげたかにみえていた。しかし、ここにきてこれまでのイメージを一新するような変貌ぶり。ハリスに何がおこったのか? 結成から3年、前2作とは一線を画す作品を打ちだしてきた原動力はどこからきているのだろうか?
「『ポップ・セイヴ・アス』や『ニュー・ワールド』に入っている曲は、ハリスを始める前の5年間くらいで『パワーポップをウッドベースにのっけてやりたいな』と思って書きためていた曲だった。それを実際に形にして現場に出したときには、すでに結構前のものになっていて、自分で頭に描いていたものとギャップがあったというか……どこかリアルじゃない感じがしてた。去年ワンマン・ツアーを回って、お客さんの反応を見ても、ハリスが持たれているイメージと自分達が思っていることが違うなって感じることもあったし……。だから今回は、今の空気を感じて、今を歩いているハリスの音にしたかった。」(Vo.アキラ)
「今までの2枚は、もちろんやるからにはハリスとしてやっていたんだけど、ある意味アキラくんの集大成でもあった。去年はアルバムもリリースして、ワンマン・ツアーもやったけど、そこで守るほどのバンドのイメージって出来てなかったんだよね。この4人で始めた当初は『ハリスみたいなバンドいないよね!』っていわれていたけど、だんだんみんな慣れてきちゃって、個性が埋没してきてた。それはライヴをやっていても、現実的につきつけられていた部分で。それだとハリスをやっている意味がない。最初に組んだときに『どこにもいないバンド』っていうイメージでやっていたところをちゃんと音にして、オレ達がハリスをやっている意味とはなんぞや、というのをここで提示したかった。そのためには、もっといいものをやらなきゃ伝わらない」(Dr.高橋)
ファースト・アルバムリリース、初ワンマン、レコーディング、またリリース、ワンマン・ツアーと、怒濤の展開だった2007年を自分たちで冷静に見つめ直して求めた変化。なぞるのではなく、新しく作った音は「新生」という言葉がよく似合う。ポップ・ロック、パンクからインストまで揃った楽曲のタイプ、斬新なアレンジ、それだけ聞いても違いは明らかだが、もっと深い部分で変わっていることがある。
「今回一番違うのは、全曲作曲を"ハリス"のクレジットにしたこと。1つの楽曲をハリスの曲として背負う初めての作品になったのは大きい。」(高橋)
これまでは、アキラのイメージにあわせて曲を作っていっていたのが、4人で進んでいく形に変わった。改めてバンドとしての道を作ろうという気持ちで挑んだレコーディング(レポートはこちら)では、作業中もメンバーでアイディアを出し合い、やりたい! と思ったことはすべてやったという。
「すっごいタイトなスケジュールだったんだけど、周りに無理いってでもやらせてもらった。後悔は絶対にしたくなかったから。」(アキラ)
今作に対する意気込みはこれまで以上に強い。そういえば、レコーディング中に高橋が「ここで普遍的なものと革新的なものを確立させたい」と話していた。それは実現できたのだろうか?
「今2008年のハリスの音がちゃんと出てる。だからといって、来年聞いても古い感じはしないと思うんだよね。バンドサウンドにこだわって、単純にいい曲をいいアレンジでできたのが普遍的であり革新的であるということかな。普遍的=いい曲、革新的=いいアレンジだから。それが思っていた通りにできた。」
どんなにすごい曲が出てきても、この4人ならいくらでも料理(アレンジ)できる。自信と、新しい試みが融合することで、メンバーが口を揃えて話す「今のハリス」になっているのだ。
ここまでは、ちょっと真剣モードなハリスを紹介してきたので「ぜんぜん違うバンドになっちゃったの!?」と心配になった方もいるかもしれない。しかし、メンバーが「ハリスは(世間で使われている)エロカッコいいじゃないけど、『楽しカッコいい』でいいんじゃない」というとおり、ポップでハッピーなバンドという、らしさは健在なので安心してほしい。先にも書いたように、バラエティに富んだ楽曲が並ぶ展開はカラフルでハイテンション、かつグッとくる。
「自分的にはベストヒットUSAみたいなアルバムなんです。その曲その曲で場面が浮かぶような。シングルにできそうないろんなタイプの曲がいっぱい入っているから、iTunesとかで1曲ずつ買う人はけっこう迷うんじゃないかな。だからといって、曲が独立している訳じゃなく、全体で物語がある。最後の"Everything Believes In The Day"までくると、小学生の時、暗くなった道を家に帰っていく時みたいなイメージになる。」(G.セイジ)
「アルバムの曲をライヴでやり始めてからすっごいテンションが上がっちゃうんですよ。自由になれるっていうか。上がりすぎてたまにワケわかんなくなっちゃうくらい(笑)。」(アキラ)
アルバムのなかでどの曲が好きか? という質問をしたら、全員が「全部いいから選べない」といった。それくらいの会心作を持って、6月17日からは全国ツアーに出る。CDはもちろんのこと、ライヴでも、アキラが「ロックンロールをよく知っている人じゃないとできないから、そこにはすごくこだわった」という「(1曲)3分間のポップス&ロックンロールイズム」を体感して欲しい。次々にあらわれるパラレルワールドにワクワクしっぱなしなこと受け合いだから。このツアーではワンマンはファイナルの1本だけなのだが、そこには今までハリスを見たことがない人にも知って欲しい! という気持ちがある。
「本当にいいものができたから、どんな形でもいいからたくさんの人に聞いて欲しい。バンドもアルバム出して変わると思うし、みんなの反応を見るも楽しみ。今まで以上に早くツアーを回りたいですね。」(アキラ)
「最近はステージドリンクを最初からビールにしてるんで(笑)。自分はレコーディングの時もあまり考えすぎずにやっていたので、ライヴもそのまま楽しみたいですね。」(ユウジ)
「いつもフルテン(全開)でやっているので、『ポップに狂ってる』感じが出せればいいなと。アルバムで聞いたら安定して聞こえるかもしれないけど、ライヴでは『この人たち頭おかしいんじゃないか!?』くらいイカレてるのが好きだから。ツアーでも爆発しているところを見て欲しい。」(セイジ)
ワケわかんないくらい自由になって、狂って、爆発して……。いままでのハリスからは想像しづらかったキーワード。どれだけハリスが変わったのか、ここでも垣間見れるというものだ。昨年末のツアー・ファイナルのレポートで「ハリスはまだまだ完成型の見えないバンド」と書いた。しかし、このアルバムを作ることで、グッと完成型に近づいたのではないだろうか。その変身ぶりは、ぜひ自分の耳で、手で触れて感じて欲しいと思う。
HARISS TOUR'08『DANCE WITH VIVIENNE』
6/17横浜FAD
6/18宇都宮HEAVEN'S ROCK
6/19千葉LOOK
6/27仙台PARK SQUARE
6/29札幌SPIRITUAL LOUNGE
7/10名古屋APOLLO THEATER
7/11大阪2nd LINE
7/12岡山ペパーランド
7/18下北沢シェルター(ワンマン! スペシャルゲスト:篠原りか、近藤智洋)
*詳細はオフィシャル・サイトでご確認ください。
|
text by wacchy, photos by hoya
|
|
|