メタリカ (Metallica) @ さいたまスーパーアリーナ 2010.09.26

世界に君臨し続けるための”ライヴ力”の証明
テキスト・レポート「世界に君臨し続けるための”ライヴ力”の証明」 @ さいたまスーパーアリーナ 2010.09.26

Metallica

 メタル界にはブラック・サバス、AC/DC,ジューダス・プリースト、アイアン・メイデン・・・など王者として君臨しているバンドが多々いる中で、個人的に”メタル=メタリカ”という方程式が成り立つ。その理由は、間違いなく7年前の2003年11月に名古屋レインボーホール(現:日本ガイシホール)で見たメタリカのライヴを体感してしまったからだと思う。当時、高校3年生だった僕は、洋楽を聴き始めたばかりだったけど、当時の最新アルバムである『セイント・アンガー』のリード・シングル「セイント・アンガー」のPVを見て感銘を受け、メタリカのアルバムを友人に借りてはヘヴィ・メタルの圧倒的なエネルギーに感動を覚えていた。そして、なけなしの金をはたいて足を運んだ彼等のライヴで、超ド級の興奮を味わうことになる。別世界に連れ去られたかのような感覚、全身そして全心で受け止めたあり得ない衝撃と熱は生まれて初めて感じたものと思えるほどであった。それゆえに今日、7年ぶりにメタリカを再び観られるということは、楽しみ以上にとても幸福なことに感じていた。

 フィア・ファクトリーの終演後からサウンドチェックが始まって段階で、それに呼応して上がる大歓声が僕の7年前に味わった興奮を体の奥底から呼び覚ます。あの時も始まる前から観客の興奮が凄まじかった。怒号のような叫びが木霊し、拍手が一斉に巻き起こる。19時20分過ぎにサクソンの「ヘヴィ・メタル・サンダー」が開始を告げるように大音量で鳴らされると、興奮はなお一層増す。ファンにはお馴染みの「エクスタシー・オブ・ゴールド」が高らかに鳴り響き、スクリーンに映し出された「続・夕陽のガンマン」で会場は総立ちになって、盛大に主役の登場をお出迎えである。ついにその時は来てしまったのだ。

Metallica 爆撃のような「クリーピング・デス」からライヴはスタート。ステージの四者が放つ凄まじい音塊が問答無用の破壊力で迫るこの興奮、初っ端から激しい荒波にさらわれ、とてつもないパワーに気圧される。前日と同様の幕開けだが、盛り上がり必至のこの曲の威力は説明不要。お馴染みの「ダイ!ダイ!」の叫びと一体感は、7年前よりも遥かに凄いものを感じてしまい、鳥肌が立っていた。雷鳴のようなリフが轟いた「ライド・ザ・ライトニング」も文字通りの電撃が会場を一閃。そして、続いて空耳アワーでも知られている「スルー・ザ・ネヴァー」までぶちかましてくれるんだからヤバイ。7年前に見た時はそれこそ「バッテリー」、「クリーピング・デス」、「シーク&デストロイ」とかいう鬼の3連発でスタートしたのを思いだしたが、今回のスタートも十分すぎるぐらいだ。

Metallica 「今日は昨日と違う曲をやるぜ!」と高らかに宣言したジェイムスの言葉通りに始まった曲は「ディスポーザブル・ヒーローズ」、名盤3rd『メタル・マスター』からの選曲でスラッシーなリフが牽引しながら地響きを巻き起こしていく。そして、『リロード」からまさかの「メモリー・リメインズ」まで飛び出してくる始末。メタリカの存在意義を示す代表曲こそセットから外れてはいないが、昨日に比べると結構レアな選曲が目立つ。実際、セットリストは前日と比べると10曲も変わっている。前日、来れなかったことを確実に後悔させる粋な計らいである。

Metallica 新作ツアーの一環らしくここからは、「デス・マグネティック」からの曲群へとなだれ込む。このゾーンでは新作の意義を観客たちに問いながらも「サイアナイド」では、スクリーンに最前のお客さんたちを順番に映していくなどの演出も取られていたのが面白かった。この曲ではメタリカの演奏している姿よりも、スクリーンに次々と映し出される人々のアピール合戦の方に眼を奪われてしまっていた人も多いだろう。自分は曲そっちのけで眼で追ってしまったことを少し反省していたり(特に印象深かったのは、メタリカのコンサートが100回目?ということで後ほどアンコールでステージに上げてもらった外国人、モーニング娘。の映っている雑誌を掲げてた日本人グループかな)。その後は「サッド・バット。トゥルー」、「ジ・アンフォーギヴンⅢ」と続いていく。

Metallica 複雑な展開が力強くドラマを刻んでいく「アンド・ジャスティス・フォー・オール」もまた珍しい選曲で聴衆の感動を誘う。この後メンバーが一旦ステージから引っ込むものの、戦場の銃声や爆発音のSEに合わせて、赤い火柱が何度も燃え上がり炸裂。そこからメタル界屈指のバラード・ソング「ワン」が始まる。何も色あせることなくその輝きを増し続けるこの名曲では、2段構造のステージを利用した演出が巧みで、明滅する照明と共に彼等のかっこよさを際立たせていた。そこから続けざまに稀代のメタル・アンセム、「マスター・オブ・パペッツ」が繰り広げられれば、モッシュ・ピットがさらに鬼の形相とスピード感を増すのは無理はない。「マスター!マスター!」のコール、カーク・ハメットの中間の泣きのギターに合わせての叫び声は、前述した通りに7年前の一体感を遥かにしのぐほどだ。今日の感動が大きい要因のひとつは絶対に会場の一体感が挙げられる。ここまで、お客さんのエネルギーを感じられることもなかなか無い貴重な体験だ。もちろん、それを引き出すメタリカの力があればこその話で、この絆の深さは長年の活動の証だろう。しかし、これではまだまだ休ませてはくれない。柔らかなアコースティックのフレーズが流れ出した時の歓喜も印象深い中で、猛烈なスラッシュ・リフが血を沸騰させていく。そう、「バッテリー」と並ぶ最強のスラッシュ・ナンバー「ファイト・ファイア・ウィズ・ファイア」だ。もはや、この曲で熱くならない人間などいないだろう。次々と噴出する火柱と共に魂の底から熱く熱くさせられた本日のハイライトであった。

Metallica カークの艶やかで哀愁漂うギター・ソロ・コーナーに引き続く感じで演奏された「ナッシング・エルス・マターズ」では久々の凪いだ時間が到来。柔らかく繊細な演奏をバックに、静かな情熱を湛えながら歌いあげるジェイムズの歌がしっとりと会場を包み込んでいた。本編ラストは、代表曲「エンター・サンドマン」。強靭にうねるグルーヴを感じながらの大合唱で、再びの連帯を感じながら熱狂の夜は一旦の幕を閉じる。

Metallica アンコールでは新作の長尺インスト・ナンバー「スーサイド&リデンプション」を短く披露して観客を煽ると、クイーンのカヴァー「ストーン・コールド・クレイジー」に始まり、創初期の手垢が残る荒ぶるスピード・チューン「モーターブレス」をぶちかます。この疾走感、たまんねえ!と思っているのも束の間、名残惜しくも最後の最後のナンバーは、「簡単な三つの言葉だ」って宣言して(この時点で演奏する曲がわかってしまうが)の、「シーク&デストロイ」。印象的なリフが昂揚を呼び、サビの大合唱が笑顔と興奮の時をもたらせて大団円を迎えることとなった。終演後はメンバーの一人一人が挨拶をしていき、大量のピックやドラムスティックを投げ入れるという旺盛なサービス精神でファンとの絆をより深くしていたのであった。

 もちろん、彼等にも老いはあるし、演奏も鉄壁とは言い難くて非難の声もある。けれども、圧倒的な激しさや力に加えて、エンターテイメント性にも溢れ、なおかつ大きな感動を振りまくライヴを繰り広げられるバンドはそう多くない。他の追随を許さず王者として世界に君臨し続けるためのその”ライヴ力”に改めてメタリカの偉大さを思い知らされたのであった。彼等の代名詞である「バッテリー」が聴けなかったのは残念に思ってもいるのだが、ここまで大きなスケール感を伴った圧巻のステージには、全身が熱くなりっぱなし。また、打ち震えるような感動にしばらく興奮が冷めなかった。同じ思いを抱いた人はきっと多いはず。最後に飛び出した「ニューアルバムを作って、また来日するぜ!」との力強い宣言に期待し、一刻も早い再来日を願いたい。もちろん、その時は必ず足を運ぶつもりだ。

— set list —
Creeping Death / Ride The Lightning / Through The Never / Disposable Heroes / The Memory Remains / That Was Just Your Life / Cyanide / Sad But True / The Unforgiven III / …And Justice for All / One / Master Of Puppets / Fight Fire With Fire / Nothing Else Matters / Enter Sandman

— encore —
Stone Cold Crazy(QUEEN Cover) / Motorbreath / Seek & Destroy

Metallica

–>photo report The Sword(Review)

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Text:
Takuya Ito
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