マヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラ (Manu Chao La Ventura) @ 名古屋クラブクアトロ 2010.10.07

情熱の輪で繋がっていく
テキスト・レポート「情熱の輪で繋がっていく」 @ 名古屋クラブクアトロ 2010.10.07

Manu Chao

 『マヌ・チャオを見に行くしかない!』 そう思い立ったのは、この日のライヴの前々日の夜ぐらい。編集長から連日届けられる熱狂のフォトレポート、そしてライヴを見た人々の感興の声が背中を後押しし、財布のひもを緩める。あの熱を体感しなければ!という思いに心と体がいてもたってもいられなくなる。10年に一回来るかどうかだろうし、本気でこれは見に行くべきだろうと覚悟を決め、前日にチケットを購入。マヌ・チャオ名古屋公演に備えた。だが、数々の絶賛の声が上がるにせよ、お恥ずかしいことに僕はマヌ・チャオについて全く知らない。前身であるマノ・ネグラについても何も知らない。普段からロックばっかり聴いている人間であって、今回は完全に未知の音楽と世界である。けれどもライヴに臨むにあたって色々と知っておくべきことはあるにせよ、届けられたマグのレポートと写真で最低限の知識をつけるぐらいに止めて、先入観をそんなに持つことなくライヴに臨むことにした。

Manu Chao 開演ギリギリに会場へ入ってみると、名古屋クアトロは凄い人だかり。満員とまではいかないまでも9割越えの埋まりようで驚くほどの人気である。お客さんの年齢層は幅広く、国籍も問わず多くの人間が彼の音楽と繋がっている印象。何より待ちわびたお客さんの笑顔が溢れているのが目に付く。開演予定の19時を少し過ぎた辺りで、待ちわびた大勢のファンから「早く出てきてくれ!」と催促するように大きな歓声と拍手が巻き起こり、それを背にして3人のメンバーはステージに登場する。そして、登場するやいなやマヌは観客とハイタッチを交わして、熱烈な歓迎に早くも恩返し。上着を脱ぎ、アコギを構え、戦闘態勢を整えてからライヴはスタート。まずはアコースティック・セットということで、どことなく熱を孕んだ心地よいリズムと情熱的なメロディ、陽気な歌が会場の気持ちを満たしていく。2本のアコギが共鳴し合い強力な磁力を放てば、時には流麗かつ攻撃的なギター・ソロも交えて昂揚感を音色にさらに増量する。抑えたサウンドであるにも関わらず凪をほとんど感じさせないのは、その演奏の端々で情熱が迸っているからであろう。じっくりと見ていたのに胸の内側がだんだんと熱くなっていったのを感じていた。

Manu Chao 25分~30分ほどそのアコースティック・セットが続いていたが、上手のギタリストがエレキ・ギターに持ち替えたところからフロアの温度が格段に上がる。ドラムが激走し、ギターが虚空を切り裂き、高らかに吠え、狂騒が巻き起こっていく。この時を待っていました!といわんばかりに暴れ出す観客たち。こうなってしまってはもう止まらない。ボルテージが一気に上がって会場がスパーク。鳥肌物の興奮がこうして全体に伝播していく。冷静に見聴きしていればダブのリズムを軸にしてメロディと言葉で色々と味付け、ラテン/ソウル/ファンク等をごった煮して溜めた所で、パンキッシュな疾走と爆発で劇的な盛り上がりへとつなげていくのだが、その瞬間の爆発力がとてつもない昂揚感を生む。最後にバズーカをぶっ放しているようなあのエネルギーは、一体どこから来るのかと思うほど。最初はじっと見ていただけの自分も、足でリズムを刻み、掛け声に反応し、拳を上げて応えている。よもやここまで精神も肉体も引っ張り込まれるとは思ってもみなかった。掛け声のひとつひとつが情熱の輪をつくり、みながつながっていくのもまた感動的。ほとんど休みなし、アンコールにも何回も応えたステージは本当にあっという間に過ぎ去った。

Manu Chao ただ、ライヴ後に今回のツアーを全部追っているライター、tikiから「あれはフルメンバーじゃないからね。ドラムの人は本当はパーカッション担当だし、非常に濃いベーシストもいる。もっと絢爛な音が鳴り響く感じであの3人だと、うーん60%ぐらいかな。」という言葉を聴いて、俄然興味を抱く。これ以上の世界が目の前に広がるというのか。でも、初めてライヴを体感した自分からしたら今日のでも十分に凄い。3人が放つ巨大なエネルギーの前に、全身に稲妻が駆けるような衝撃を味わった。こういった小さいハコでライヴする事自体が奇跡的とも聴かされたが、ダイレクトに伝わるからこその面白さ、楽しさ、興奮、今でもそれを思い出してしまうぐらい。五感で感じ取った熱さは本物だ。

 ちなみに会場にはマヌ・チャオを追いかけ続けているという80歳越えのおばあちゃん(外人)もいれば、僕の見ていた後ろに小学校に上がる前ぐらいのかわいらしい女の子も喜んでステージを見ていて、音楽に国境も年齢も関係ないことを改めて思い知った次第。もちろんそれは、マヌ・チャオの音楽がその壁を乗り越える力を有しているからこそ。僕自身、今日体感した未知の前に圧倒する力を感じながらも、そんな人間をも優しく輪に加えてくれるかのような優しさも覚えた。音楽の持つ力はやはり偉大である。

Manu Chao

–>photo report Review(Taiki “Tiki” Nishino)

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Text:
Takuya Ito
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