テラ・メロス (Tera Melos) @ 名古屋栄タイトロープ 2010.10.15

スリリングなサウンドと歌の鮮烈なる交錯
テキスト・レポート「スリリングなサウンドと歌の鮮烈なる交錯」 @ 名古屋栄タイトロープ 2010.10.15

 驚異の演奏から放たれる凄まじい音符の乱れ打ちに今日も痺れた。あのスリルが再び!そう、ちょうど1年前にパラボリカ・ジャム’09で初来日を果たしたアメリカ・サクラメント出身のマスロック・トリオ、テラ・メロスが再び日本に襲来したのである。今回は9月に発売された5年ぶりとなる2ndフルアルバム『パンタゴニアン・ラッツ』を引っ提げてのツアーで、なんと驚くことに朝霧ジャムにも出演を果たし、2日目の朝イチにぶちかましてくれたそうな(自分は参加してないけれども、朝霧ジャムのレポートは後ほど公開予定)。そこでも好評を得たという彼等は、翌日から元気に約2週間休みなしの日本縦断ツアーを慣行。その名古屋公演を僕は追った。去年の衝撃を再び全身で味わうべく。

 本日の名古屋公演は、クラブクアトロではオーガ・ユー・アスホールのワンマン、栄デイトライヴではヴェルヴェット・ティーンの来日公演とライヴが色々と被っていたせいもあって、やや寂しい客入りではあった。会場のキャパは100人ほどだけど、その半分ぐらいだろうか。けれども、このライヴを選択したことが間違いではないことを出演者たちの音楽、そして演奏がきちんと証明してくれた。

 最初に登場した東京のインスト・ロック・デュオのWozniak(ウォズニアック)はベースとドラムが極限でぶつかり合うかのような激しいインスト・サウンドで気合を示す。3年前にフジロックのルーキー・ステージに登場した名古屋の4人組バンドのDOIMOI(ドイモイ)は、オルタナ、ヘヴィメタル、パンク、グランジが核融合を果たしたかのようなサウンドで蒼く熱い炎を上げる。そして、3番手のKIRIHITO(キリヒト)は2人とは思えないパワフルかつポップ、攻撃的かつダンサブルな時間を造形し、いい感じに盛り上げてテラ・メロスへとバトンを受け渡す。

 しばしの転換を挟み、22時過ぎからいよいよお待ちかねのテラ・メロスが登場(とはいうものの、ずっと自分たちで機材をセッティングしていたが)。出てきた直後から挨拶代わりといわんばかりに痺れるような演奏で聴衆の度肝を抜く。鮮やかに炸裂する変拍子と鋭くアグレシッヴな音色。初めて見る人はあの演奏にまず驚くことだろう。ハードコアのアタック感とプログレの構築性、それにフリージャズやインプロの閃きにエモ、パンクといった要素までを落とし込んだめくるめくインストゥルメンタル。それは彼等独自の感性に貫かれていて、中毒性がとても高い。転調に次ぐ転調が全身に電撃を走らせ、ジェットコースターに乗っている時のような興奮を呼ぶ。この音符の豪雨、好きな人にはやっぱりたまらないものである。

 去年の来日時と違う点といえば、ギターにシンセに歌にと忙しい役目をきっちりとこなすサポート・メンバーを加えて4人体制になっていたこと。それ故に新作『パンタゴニアン・ラッツ』で全面的に押し出してきた”歌”や”美メロ”に、意識を払ったライヴになっていたと思う。その両要素をポップの潤滑油とすることで、激しく混沌としたサウンドに柔らかさや麗しさを加えることに成功していた。さらにその効能として彼等の根幹がより引き締まっていて、鋭角さやスリルが瞬間の切れ味を存分に増していた。目まぐるしい運指の動きを見せるテクニカル&トリッキーなギター、フレットの最上部から最下層まで自在に動き回ってリズムの刻みからメロディまで奏でるベース、その端正なマスクと細く引き締まった体から信じられない手数で牽引するドラム、激しいバトルは視線を奪い、脳天に突き刺さる。楽器が自分の体の一部と評したくなるほどの卓越した演奏力、凄いという他ない。

 時折、MCを挟みつつもライヴはあっという間に過ぎ去っていく。とはいえ、断片的にあの曲を演奏しているなと感じるものの、全然違うフレーズが出てくるし、どこで曲が途切れているのかまるで検討がつかない。ただ、単純にCD通りの曲の再現で終わらない所もまた彼等の素晴らしきところといえるだろう。この一寸先を読めなくする閃きと即興性がまた、ライヴならではの醍醐味と興奮をしっかりと味あわせてくれる。けれども、演奏に集中してばかりいるかと思えば、そうでもない。MCではフレンドリーに会場に語りかけたり、終盤では、ベーシストがベースを最前のお客さんにゆだねて、自分はエフェクターをいじくり倒すという一幕も見られたりもし、決して突き放すだけのバンドではない印象を与えていた。意外とアットホームというか、そのギャップもまた惹かれる要因といっていいだろう。

 約1時間のステージを終わった段階で既に時計は23時を過ぎていたが、鳴りやまぬ拍手と歓声を前に再び登場し、「ワン・モア・ソーング!」と高らかに宣言してアンコールにもしっかりと応えてくれた。最後にもう一発、凪と激流の連続で会場を呑みこんで約70分にも及んだライヴはこれにて終了。去年の公演を見たときよりもアルバム出したことで、当然のように歌が増えていたのがまず印象に残っている半面、個人的に彼等にはインスト志向であってほしいという思いがあるので複雑な気持ちではある。しかし、そのスリリングなサウンドと歌の鮮烈なる交錯が新たなる世界を奏でだしたのも事実で、テラ・メロスという嵐がさらなる猛威をふるう、それを予感させるには十分だった。

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Text:
Takuya Ito
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