マヌ・チャオ (Manu Chao) – 「興奮の嵐を連れてきたマヌ・チャオが語る」 – part.1

■「信頼で結ばれた3人組。ボクは本当にメンバーに恵まれている」
インタヴュー 「興奮の嵐を連れてきたマヌ・チャオが語る」 2010.10.19

Manu Chao La Ventura

 ラジオ・ベンバ・サウンド・システムで来日してから8年。ミクスチャーシーンを牽引してきたミュージシャン、マヌ・チャオが長い沈黙を破って日本に戻ってきた! 輸入盤しか手に入らず、既存メディアから情報はほとんど流れてこない・・・。そんな情報飢餓状態に、いらただしい思いを持ち続けていた人も多いはず。来日を機に、偶然にもマヌと会う時間が持てたラッキーなファンの一人として、彼が話したことを伝えたいと思う。

Manu Chao La Ventura 10月4日、東京リキッドルームには長く待たされたファンの「期待」が爆発寸前にまで膨らんでいた。大きな歓声と共に登場したマヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラは、3人組のシンプルな編成だった。「3人組と言うのはコンパクト。とてもシンプルな編成だけど、少ない人数でも(指でピラミッド型を作り机に3点をおしつけて) こんな風に、しっかりとしている。即興でなにかをやってみようと思うと、少人数ならすぐにできるのもいい」とマヌ。彼が核となり動き回ってメンバーをまとめていくスタイルでは、マノ・ネグラやラジオ・ベンバのような大人数編成は、かなり負担が大きいのだろう。

ギターのマジッドは、マヌがパリに住んでいた時代、近所のギター小僧だった頃からの付き合いだ。若い時にはダイアー・ストレイツに傾倒し、尊敬するのはジャンゴ・ラインハルトとパコ・デ・ルシア。オフステージでも、片時もギターを手放さない。ドラマーとして同行しているのが、マノ・ネグラ、ラジオ・ベンバでパーカッションを担当していたガルバンシート。「彼は以前、ドラマーだったんだ。今も、元マノ・ネグラのメンバーとバンドを組んだり、彼らとフランスのミュージシャンのライブにドラマーとして参加している。彼は本当にいいドラマーだよ」と、マヌは満足の笑顔を見せる。

Manu Chao La Ventura「5週間前にはラ・ヴェントゥーラはなかったんだよ」。長い年月に培われた信頼関係。会えばツーカー、長いリハーサルを繰り返さなくても、すぐにプレーできるってわけだ。サウンドはシャープでタイト、ベースレスであることを忘れさせる。ライブの間、バックの二人は指示を見逃さないぞとばかりに、彼の方を見ている。名古屋の舞台でだったか、マヌが急に舞台袖に引っ込んだ時、一瞬、二人はとまどったように顔を見合わせたが、すばやく、何でもないように態勢を取り戻していた。すでにブラジルで数回ライブを行っているが、「10月4日、東京がラ・ヴェントゥーラの本格的スタートの日」だった。

■ 「買うのをやめて、消費サイクルから飛び出そう」

 マヌは社会問題について、常に関心を示し、積極的にかかわっている。今回のツアーでは、「沖縄から、日本から米軍よ、出て行け!」と、我々に連帯を表明してくれた。彼は「マイクを使う特権のあるミュージシャンには、それを通して語れない人々の言葉を伝える責任がある」と、かねてから発言している。それが真実であることが証明された瞬間だった。

 アルゼンチン・ブエノスアイレスでは精神病院から患者たちによって放送されているラジオ「ラ・コリファタ」に対して音楽を通じた支援活動を数年前から行っている。「愛や孤独、人生などを、彼らはとても明晰な言葉で語るんだ。心を動かされるよ」。他のミュージシャンとのコラボレーションで支援CDの作成、コンサート。そして、寄付を集めるために立ちあげられたサイトでは、現在も彼が制作した2作目のアルバムがダウンロードできる。

Manu Chao La Ventura 彼の代表作「クランデスティーノ(不法滞在者)」。ヨーロッパに拠点を置き、頻繁に南米、アフリカ旅するマヌにとって不法滞在者は身近な問題だ。「老齢化するヨーロッパと、そこに流れ込んでくる第三世界の若い人々。そのバランスの悪さが問題を引き起こしている」という。なによりも、移民追放を唱えながら彼らの弱い立場を逆手にとって低賃金・悪条件で働かせることで成り立っている経済の矛盾を、欺瞞と切って捨てる。「国境なんて必要ないんだよ」と付け加えた。

 最近、よく語っているのは「教育」についてだ。ビジネスになっている教育。お金をたくさん払って受けられる私立学校での教育と公立の学校で受ける教育、その格差が問題だと憂う。さらに、食=健康教育の欠落を嘆く。「食べ物ってとても大切なことなのに、学校では、食べることや、良い空気を呼吸すること、こうしたすごくベーシックな、健康的なことを教えていない。体の中に入れるものは、その人そのものだというのに。子どもに、きちんと食べて、自分の体をちゃんとケアすることを教えなくてはいけない」と語ったところで、突然言った。「あっそうだ、政府を困らせるのには、どうしたらいいか教えてあげようか」。なんだ、なんだ?「モノを買わなければいいんだ。彼らの消費サイクルに入らないこと。そうすればヤツらは困る」。

Manu Chao La Ventura 彼は、今、バルセロナの郊外に農園を持っている。忙しい彼に代わって友人が作業を担当、できたものは互いにシェアしている。自家製の野菜とハチミツ。自給自足のすすめだ。「都市であってもベランダで作れる。他の土地で作っている人とシェアすることもできるだろう」。車やバイクに乗らず、バルセロナではもっぱら自転車。「それで十分なんだ」。既存の消費サイクルから飛びだせ、それが一番効果的な革命というわけだ。グローバルな視点で問題をとらえながら、身近なところから変革を始めようと言い続けている、彼らしい考え方だ。

 ミュージシャンでなければ? の質問に、はっきりと「ドクター、医者になりたい、人の病気を治してあげたい」と言った。他のインタビューでは「中国医学」と具体的に答えている。「本を読んだりして、少しずつ、少しずつ、少しずつ勉強を始めているんだ」と話していた。食、健康、教育、エコ、東洋医学・・・話しながら、現在の彼の意識の在りどころが見えてきた気がした。

Text by Ikuko Tanimoto

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