サケロック @ 東京キネマ倶楽部 2010.12.19

楽しいムダを送り続けるインスト・バンド
テキストレポート−サケロック「楽しいムダを送り続けるインスト・バンド」@ 東京キネマ倶楽部 2010.12.19

 鴬谷の東京キネマ倶楽部で毎年年末にライブを行うサケロック。結成10周年を期に2年ぶりのアルバム『MUDA(ムダ)』を発表した。それに伴う年明けからのツアーの幕開けとも言えるレコ発イベントがこの日のライブだ。タイトルが斬新すぎて驚いたが、「役に立たなくていらないムダ」ではなく、自分たちが日々過ごす上で「必要な楽しいムダ」のことのようだ。新しいCDは店頭でキラキラした金色のジャケットで、開けるとケースやブックレットに仕掛けが施されている。クリックひとつで買う手間やものを置くスペースを必要とせずに音楽が手に入る便利な世の中で、音を再生する以外の部分で触ったり見たりして楽しむ感覚にリーダー星野源(以下、星野)はこだわりを持っている。

 今年は星野のドラマ『ゲゲゲの女房』の出演や浜野謙太(以下、ハマケン)のドラマ『モテキ』の出演など俳優活動もあり、新たなファンの獲得でマイペースに支持を広げていっているようだ。このライブのチケットは平日2日間の店頭販売での先行発売にも関わらずソールドアウト。これには、今年のライブ納めにいつものあれをどうしても見たいというサケロックファンの熱心さが伺える。

 開演時間になるとそろりと星野がギターを持って現れる。ほどなく下手の壇上からハマケン、ベースの田中、ドラムスの伊藤が現れ直立不動で「インストバンドの唄」を合唱する。この曲の入る『Songs of Instrumental(ソングス・オブ・インストゥルメンタル)』が出てからライブでは度々ある演出なのだが、ただ歌っているだけなのになんだか愉快で会場にも毎回笑いが起こる。前作アルバム『ホニャララ』に収録された「老夫婦」では、吹き抜けの天井にトロンボーンのほわんとした音がこもり、その反響がなんともいえない心地よさを生んでいた。

「モズレア」や「グリーンランド」といった初期の頃の曲から2008年にでた前作アルバムの曲まで、ほのぼのとしたインストゥルメンタルが次々と披露された。そして会場が暖まったところで、いよいよ新譜からの曲に突入した。「MUDA(ムダ)」では、これまで箱もののギターを使っていた星野が、エレキギターに持ち替え、サケロックにとっては珍しく歪んだ音でのイントロで始まる。そしてトロンボーンのメロディーを追いかけるようにメンバー全員が歌詞のない声で掛け合いをする。新譜ではサポートを入れずにシンプルに4人のみでのレコーディングを行っている。今回のライブも同様に4人での演奏。しかしながら、音数や音色の足りなさは感じられず、結成10年で育んできたサケロックのオリジナルのほんわかとしたゆるい魅力が余白めいっぱいに感じられた。

 エレキギターやエレキベースといったロックバンド王道のセットでの演奏にノリノリになったのか、突然誰からともなくレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなヘビーなリフでセッションが始まった。すると予定にはなかった「信長」という過去に即興で作られたハマケンがヴォーカルをとる曲に脱線した。サケロックはよく脱線する。着地点のない脱線はどこに落ち着くのか、落ち着くことすらあるのかもわからない。そんな予定外の出来事で面白可笑しく楽しませてくれるのが、このバンドのすごいところだ。

 アンコールには「生活」。曲に行く前にハマケンがめちゃくちゃに発する言葉にドラムス、伊藤がそれにドラムで応戦するコーナーだ。絶妙にオチきらないタイミングで伊藤が曲をスタートさせ苦笑いと笑いで盛り上がる。お決まりの流れはわかっているのにまた見たくなる。彼らの今後の夢は「80歳になったら武道館に出る」ことらしい。50年後に夢の舞台で「生活」が見られることを期待したい。

— set list —
インストバンドの唄 / 慰安旅行 / 菌 / モー / 穴をほる / 老夫婦 / ちかく / モズレア / エイトメロディーズ / グリーンランド / MUDA / GREEN MOCKUS / GOOD BYE MY SON / WONDER MOON / FUNK / URAWA-CITY / 今の私 / インストバンド

–encore–
生活 / KAGAYAKI

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Text:
Hiromi Chibahara
tammy@smashingmag.net

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