ブライアン・フェリー – 『オリンピア(Olympia)』

高すぎるフジロック濃度

CDレヴュー 『オリンピア(Olympia)』 2011.01.01.

 ブライアン・フェリーの新しいアルバム『オリンピア』がすごい。1985年の『ボーイズ&ガールズ』を彷彿とさせる傑作だといえる。丹念に重ねられた音のひとつひとつを細かく聴いていく楽しみもあるし、老齢に差し掛かりいい具合に枯れてきた彼の声が心地好いし、プロモーション・ビデオを観る限り、いまだに若いねぇちゃんが大好きな元気さも兼ね備える。

Bryan Ferry 今のところロキシー・ミュージックの最後の作品である『アヴァロン』(1982年)に収められた「トゥルー・トゥ・ライフ」とソックリのイントロから『ボーイズ&ガールズ』に入っている「スレイヴ・トゥ・ラヴ」のような重厚なギターが鳴り、『ベイト・ノワール』のようなエスニックな響きもある「ユー・キャン・ダンス」を聴いて「うぉぉぉう!!これはスゲェ!!」と思い、誰が演奏しているかチェックすると、目ん玉が飛び出そうになった。ブライアン・フェリーのアルバムのゲストはいつも豪華なのだけど、今回はもっとすごい。「これは、ほぼフジロックじゃないか……」。メンツのフジロック濃度が高すぎるのだ。

マニ
フリー

 その「ユー・キャン・ダンス」でベースを弾いているのは、プライマル・スクリームのマニとレッド・ホット・チリペッパーズのフリーである。この2人を同じ曲でベースを弾かせるなんて贅沢な! と思うでしょう。だけどそれだけではないのだ。なんとこの曲では、マイルス・デイヴィスとの仕事などでも知られるマーカス・ミラーまでベースをプレイしている。トリプルベースなのだ。UKインディロック、USミクスチャー、そしてブラックミュージックそれぞれを代表するベースの頂上決戦や! と叫びたいくらいだ。マニは2曲参加、フリーは輸入盤ボーナストラックを含めて4曲参加。

 プライマル・スクリームは言うまでもなく何度もフジロックに出演(例えば98年2008年)。マニ単独で99年と2008年にDJもおこなっている。レッド・ホット・チリペッパーズは97年、2002年、2006年に出演とフジロックとは関係が深い。

ブライアン・イーノ

 ロキシー・ミュージック初期のメンバーであり、フェリーより人気が出すぎて(?)フェリーとの確執が生じ、バンドを去った。その後、ソロアーティストとしてアンビエント・ミュージックの概念を確立する一方、プロデューサーとして、U2コールドプレイなどの大ヒット作に留まらず、ロック界に絶大な影響を与えている。特にパンクテクノへの影響力はこの人抜きでは語れない。そのイーノも2001年にフジロックのホワイトステージに出演経験があり。

 フェリーとは和解し94年の『マムーナ』に参加したのをはじめ、以降のいくつかのソロアルバムにゲストとして迎えられている。このアルバムでは3曲でシンセサイザーを演奏している。

シザー・シスターズ

「ハートエイク・バイ・ナンバーズ」の作曲と演奏にメンバーのベイビーダディがクレジットされ(作曲クレジットはおそらく本名のスコット・ホフマン)、演奏にはジェイク・シアーズの名前もある。シザー・シスターズはロキシーの「ドゥ・ザ・ストランド」をカヴァーしたこともあるように、グラマラスな雰囲気を現代に受け継いでいるバンドである。

 フジロックには2006年2010年に出演。2010年はグリーンステージの大トリで沸かせた。ちなみに、この曲でベースソロを弾いているのはフリー。2006年のフジロックではグリーンにレッド・ホット・チリペッパーズ、同じ時間のホワイトステージにシザー・シスターズだった。時が流れ同じ曲で共演とは胸が熱くなる。

グルーヴ・アルマダ

「シェイムレス」で、作曲と音作りに参加しているのはイギリスのダンスユニットのグルーヴ・アルマダである。2007年のホワイトステージに出演(写真はこちら)。この曲はアルバムの中では異質なものなはずなのに、違和感なく他の曲と並び、フェリー色に染め上げてしまうのはさすが。

スティーヴ・ウィンウッド

 2003年のグリーンステージに登場している。ライヴ自体はよかったけど、そのときのお客さんの少なさ(同時刻にホワイトステージでやっていた、くるりが満員)は残念だったし、あまりヒット曲をやってくれなかったのも、初見の人が多いフジロックのお客さんに対してアピール不足だったのも残念だった。

 スティーヴ・ウィンウッドがこのアルバムに参加しているわけではないのだけど、「ノー・フェイス、ノー・ネイム、ノー・ナンバー」をフェリーがカヴァーしている。これはスティーヴ・ウィンウッドが在籍していたトラフィックの曲で、フェリーはカヴァーアルバムを何枚も出しているようにカヴァーの名手であり、原曲に引っ張られずに、それでいて、原曲のイメージを残すという絶妙な味わいを醸し出している。

スティーヴ・ナイーブ

 エルヴィス・コステロの盟友として98年のフジロックに登場し、09年には自身のバンドを率いてフィールド・オブ・ヘヴンにも出演。10年の朝霧ジャムにも登場した。「テンダー・イズ・ザ・ナイト」で透明感のあるピアノを奏でている。ちなみに現在は、2009年にフジロックで共演したグレン・ティルブルックが率いるスクイーズの再結成ツアーにキーボードとして参加している様子。

アンディ・マッケイ
フィル・マンザネラ

 フェリーと共に、現在までロキシー・ミュージックの正式メンバーであり続けている2人も参加している。言うまでもなくロキシー・ミュージックは2010年のフジロックに出演。2人ともフェリーのソロアルバムにもよく参加している。2011年にもロキシー・ミュージックのツアーがあるようだ。

 これで、お腹いっぱいと思うかもしれないけど、フジロックに出てないゲストも超豪華なのだ。ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモア、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワート、プロデューサーとしても名高いナイル・ロジャースなどなど大物が揃う。ティム・バックリーのカヴァーである「ソング・トゥ・ザ・サイレン」で演奏しているのは、イーノ、マッケイ、マンザネラと「ほぼロキシー」なうえに、デイヴィッド・ギルモアとジョニー・グリーンウッドがいるというすさまじい布陣なのだ。

 渋いところでは、マイケル・ジャクソンの作品でリズム・ギターとして裏から支えていた故デヴィッド・ウィリアムス、UKロックの裏街道を歩むクリス・スペディング、元プロコル・ハルムのロビン・トロワーなど。さらに演奏やアルバム・カヴァーのデザインなどでフェリーの息子たちも参加している。

 これだけの人が集まってくるフェリーの人徳もあるだろうし、音楽的な魅力もあるだろうし、それまでに築き上げたキャリアの重みがモノをいわせているということもあるだろう。これだけのミュージシャンが集まって、それぞれが職人的な技をみせてくれるので、緻密に作り上げられた音の世界を存分に楽しめる。

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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