快速東京 – 『ミュージックステーション』

快速東京に乗車せよ
CDレヴュー 『ミュージックステーション』 2011.01.09

 昨年のフジロックのルーキー・ステージで一番印象に残っている若手。それが、今回ご紹介する”快速東京”という4人組のバンドだ(そのレポはこちら)。といっても僕が昨年のフジのルーキーでレポートを担当したのは、マグでもお馴染みになりつつあるHEY-SMITH(ヘイ・スミス)と踊ってばかりの国、そしてこの快速東京の3バンドのみ。各日に色々と分担もあって、大半は見る事が出来なかった。けれども、深夜3時に苗場から発車した快速東京は、圧倒的な速度と切れ味を誇るサウンドで眠気を軽ーく吹き飛ばし、体中に興奮をにじませる熱いライヴを披露。前述の2バンドの方が前評判は高かったが、全速力でルーキー・ステージを駆け抜けた彼等には、思いっきりカウンターを喰らってしまった形だ。

 そんな快速東京の1stアルバム『ミュージックステーション』が新年早々にリリースされた。2008年の結成以降に発表した2枚のデモ音源に加えて、未発表曲と新曲を交えた全17曲で約16分強という驚きの短さがその全貌になる。1時間あれば3回半も聴けてしまう、それぐらいあっという間のアルバムだ。どこのパンク・バンドだよ!とかグラインド・コアだよ!とつっこみも入れたくなるが、その短さでもバンドの個性は十分に示されている。

 音楽性としてはパンクやハードコアやスラッシュ・メタルやグラインド・コアといったエキスをすすり、ユニークかつポップに再構築したロックといった具合だろうか。甲高い声で遊び心ある歌詞を叫び、高速のギターリフに性急なリズムがサウンドをひたすら加速させ、バンド名通りの快速レベルの疾走感と迸る熱情を感じさせる。本作でも聴き手と熱戦を繰り広げる様な激しくて速い曲が大半を占めていて、問答無用のテンションと弾丸のような勢いで突っ走り、そして心身に刺さるような刺激を与えていく。彼等の若々しい演奏はCDというパッケージに収まっても興奮度は高い。

 もうひとつ特徴的なのはだいたいの曲が約1分という短さで、その短い時間に自身が面白いと持ったアイデアを詰め込んでいくこと。味鋭いギターリフから技巧派を伺わせるギターソロ、ドラムの乱打、重たい横殴りのグルーヴ、ひねくれたフレーズ、動物の泣きまね、奇怪に絡み合うコーラス・ワーク、4つ打ちまで導入してやりたい放題にアイデアを詰め込んでユニークなサウンドを徹底追及している。混沌としていてまとまりのない印象も少なからず受けるが、少年の心を忘れない創り手の自由精神が曲調の豊かさに繋がっている印象だ。「ギター」に始まり、「かいじゅう」、「ワォワォ」、「ドロドロ」、「ダンス」と個性的な曲は目白押しで、作品は速遅・抑揚のバランスを図りながら鮮やかに表情を変えていく。故に、激しさと速さがもたらす興奮のみならず、ポップに訴えかけたり、茶目っ気ある曲で和ませたり、快活に踊らせにかかったりと色々な形での刺激を持つに至っている。

 しかしながら、前のめりの焦燥感と若々しい演奏がやっぱり快速東京の肝。端的にいえば騒々しいの一言だが、最後まで衰えないこのアグレッシヴな姿勢には惹かれるものがある。これからも異様に高いテンションと遊び心を忘れずにどんどんと突っ走ってほしい。そして、気になった方には是非とも快速東京に乗車して、この興奮とスリルを味わってもらいたいものだ。

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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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