ジョン・バトラー・トリオ(John Butler Trio) @ 名古屋クラブクアトロ 2011.1.15

“楽しい”をモットーに
テキスト・レポート「”楽しい”をモットーに」 @ 名古屋クラブクアトロ 2011.1.15

John Butler Trio
 3人の陽気で自由な振る舞いと職人的演奏が人々を心地よい興奮と感動に包んでくれた、そんな良いライヴであったのが今でも印象に残っている。本日の公演終了後にはバンドとお客さんの笑顔がたくさん咲き乱れていた。

John Butler Trio 昨年のフジロックの参戦に続いて行われた10月の単独来日ツアーの関東公演分が急遽延期になったため、2011年の年明け早々に決まった振替公演。その恩恵を受けて、昨年のツアーでは日程になく飛ばされていた名古屋公演が新たに追加されたのは、逆に嬉しい誤算というべきか。主催の配慮ある決断に人々も応え、ソールド・アウトに迫るぐらいの大勢のお客さんが駆けつけていた。開演を待ちわびる人々からは仲間内で楽しい談笑が絶えないが(フジロッカーによるグループが多い印象)、なかでも昨年のフジロックのステージが凄かったということが何度も何度も耳に入ってくる。うーん、気になる。昨年、彼等のステージを見ていないだけにその言葉が異様に耳に引っ掛かってしまう。そして、僕の期待を開演に向かうにつれてどんどんと大きくしていく。

 既に、一昨日と昨日に行われた関東公演でも延期を詫びる・・・それ以上の気合の入ったライヴを魅せてくれたそうだが、ジョンバトの曲を軽く聴いただけの僕の心も軽く捉えてしまうぐらい本日のライヴは、キャリア以上に音楽人としての力がみなぎっているように感じた。各人の折り紙付きのテクニックはもちろん素晴らしいのだが、3人だけとは思えない多彩な音色と奥行きの深さ、そして奏でられる音が持つ包容力が格別であったからだ。丹念に音に込められる喜怒哀楽の表現力、加熱するアンサンブルによる分厚くも心地よいグルーヴ、母なる自然を想起させるスケール感ある楽曲と圧倒されること多し。そんなステージを前にして、客席からは驚嘆の声と歓喜の歓声が次々と飛び交う。しかしながら、タオルを投げ合って子どものようにやんちゃにじゃれている様子も見られたり、観客からステージに向かって飛び交う声にしっかりと応え・楽しむ余裕もあった。そうした和やかな場の空気の造り方もさすがだ。

John Butler Trio そしてまた、各メンバーの個性とキャラクターが立っているのも印症的であった。ジョンはアコギもエレキ・ギターも11弦ギターもバンジョーも実に優雅に操り、楽器が体の一部といわんばかりににシンクロしている。また、ギターの音色と絶妙に混じり合う哀愁ある歌声にも心は動く。他のメンバー2人にしても滑らかに低音を操るベーシストは、ジャズ~ファンクに通ずるフレーズからウッドベースも使用してふくよかな低音をブイブイいわせて、貢献。ドラマーの優雅なドラム裁きも安定度が抜群で、各パートのソロ・コーナーの時には、壁をリズミカルに叩いたり、観客とのコール&レスポンスでこれまでにない一体感を生んだりと彼の存在感は大きい。その手だれ3人が実に見事に噛み合うことで、あんなにも大らかで心地よいグルーヴが生まれていくのだろう。巧い、でもそれだけじゃない。人間味に溢れた姿勢を終始崩さずに、陽気な姿が見えるところにも感心してしまう。

John Butler Trio ライヴを体感して特に驚いたのは中盤に演奏された「ジ・オーシャン」という曲。この曲ではジョンひとりによる長大な音絵巻が鳴らされるのだが、ボディを打楽器のように叩きながら、繊細かつ力強く爪惹かれる11弦ギターの音色が、瞑想的でありながらも情熱的な物語を紡ぐ。艶やかな演奏を軸にして、聴き手の新たな感性の扉を開くと同時に拡がりと熱を空間に行き渡らせていく彼の凄みを改めて感じた時間となった。確かめるように鳴らされる音のひとつひとつの精度が高く、波打ち際によせる静かな波から、徐々に力感が増して大津波となっていく激しさを表現しきることで意識をグイグイと引き込まれていく。生真面目に弾いているようで、実はギターを通して観客と会話しているかのような感覚も持っていて、その点も引き込まれていった理由だと思う。これは本当に凄い。

 アンコールでは滑らかに噛み合う演奏にほろりと聴き入ってしまう曲から入り、最後には苗場をも完璧に湧かした「ファンキー・ナイト」を披露。終盤にかけての3人のドラム一斉攻撃で、今日一番の興奮を呼び、人々の拳を振り上げ笑顔を咲かせて熱狂のままライヴは幕を閉じた。約2時間超だが、十分すぎるほど濃い内容。ステージの3人に圧倒されることが何度となくあったが、最後には楽しさの方が確実に勝るところが何より素晴らしいと感じた。この歓喜の輪の広がり、ピースフルな空気は病みつきになりそう。苗場で見ていればさぞかしもっと気持ち良かったんだろうなあという嫉妬を覚えつつも、ここ名古屋でのライヴも音楽の醍醐味を伝えるかの様なプロフェッショナルな姿勢が貫かれていて、印象的であった。

John Butler Trio

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Text:
Takuya Ito
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