マイス・パレード(Mice Parade) @ 名古屋クラブクアトロ 2011.01.29

練度の高い演奏がもたらす豊かな音と響き
テキスト・レポート「練度の高い演奏がもたらす豊かな音と響き」 @ 名古屋クラブクアトロ 2011.01.29

Mice Parade

 フジロック・フェスティヴァル08や昨年のTAICO CLUB’10(タイコクラブ)への参戦、またクラムボンのプロデュース/コラボレーション等、ここ日本でも高い知名度を誇るマイス・パレード。昨年発売されたニューアルバム『ホワット・イット・ミーンズ・トゥ・ビー・レフト・ハンデッド』も好評を博している中で、女性シンガーであるグレゴリー・アンド・ザ・ホークを引き連れて東名阪を周る来日ツアーを敢行した。

 客席が程良いにぎわいを見せる中、開演から2,3分過ぎたところでゲストのグレゴリー・アンド・ザ・ホークが登場する。メレディス・ゴドルーというNYの女性シンガー・ソングライターによるソロ・プロジェクトであり、マイス・パレードとはファットキャットのレーベルメイト。かつてのデビュー・アルバムをアダム・ピアースがプロデュースしており、お互いに周知の仲である。そんな彼女のステージは、バックには誰もおらず、ひとりでアコギを演奏しながらの弾き語り。そよ風のようなアコギの調べ、しっとりとした歌声で織り上げていく楽曲が実に心に染みてくる。その演奏からは季節外れの陽だまりの温かさと繊細な空気に身を包まれた。ラストを迎える前の曲では小さいハープを用いた柔らかくも厳かな曲調もあり。神経を集中させ、完璧に聴き入ってしまうほどの約30分の彼女の独り舞台は、とても貴重な体験となった。

Mice Parade  対して本日の主役のマイス・パレードのライヴは、いつまでも音に身を委ねていたい心地よさと昂揚感に満ちた充実したものであった。ステージ目いっぱいに6人のメンバーが陣取り、卓越した演奏と豊かすぎる表現力で観客の心をつかんでいく。ダグ・シャリンの精微で力強いドラミングをベースに、多彩な色を持ったギターとキーボードが見事に絡み合い、アダム・ピアースとキャロラインの歌声が叙事的に添えられていくと、完璧な世界が浮かび上がる。形容されるように多楽器の使用と知的なジャンルの横断による無国籍なサウンド。だが、とても人懐っこくて、懐かしい。耳にすんなりと入っていき、体を自然と熱くしてくれた。

 今回のツアーは当然ながら新作『ホワット・イット・ミーンズ・トゥ・ビー・レフト・ハンデッド』が中心となっているわけだが、その作品からは豊かな音色を紡ぎながらもさらにポップに噛み砕かれた印象を作品から受ける。けれども、ライヴになるとまた別の魅力が浮かび上がってくるのがおもしろい。ダグ・シャリンのドラムを中心に力強い肉体性が加わることで楽曲の立体感が増し、それによって情緒も深まる。また、収縮と弛緩のバランス感覚の良さも目立ち、いい意味での音の抜けやダイナミズムを感じさせるのもちょっとした音のアクセントに気を払っているからだろう。細やかな感情の蠢きまでもバンド全体で的確に表現する辺りに練度の高さを伺わせる。

Mice Parade また、歌・ギター・カホン・ドラムを用い、歌う・叩く・弾くを見事にこなしていたアダム・ピアースを始めとしてメンバーのほとんどがマルチプレイヤーぶりを発揮しているのも特徴。楽器の入れ替わりがかのトータスみたいに結構忙しそうであった。ただ、多彩な音色が複雑に絡み合う楽曲を丹念に表現している割に、楽しさや陽気さの方が強く伝わってくるのは緊張感を持ちつつも笑みを浮かべながら演奏しているメンバーに惹かれたからだろう。会場に気さくに語りかけたアダムのMCにも人間味が溢れており、招聘元のSMASHに対しての感謝の気持ちも述べていたのも耳に残っている。即興を交える自在性といい、所々に忍ばせるエンターテイメント性といい、バンドの懐は実に深い。

 ライヴは終始和やかなムードに包まれていたが、個人的に印象深いのは本編ラストからアンコールにかけて。アダムがドラム、ダグがベースを務めた「ドゥ・ユア・アイズ・シー・スパークレス」のアダムの歌うようなドラムが全体を見事に操縦してポップな音世界を生みだし、続く「グラウンド・アズ・コールド・アズ・コモン」では見ているものの興奮を煽りまくるツインドラムのバトルが存分に繰り広げられ、大いに感興を誘った。アンコールでは、ポストロック的な立ち上がりから観客の手拍子とタイトなバンド演奏が見事に一体化していった「ステディ、アズ・シー・ゴーズ」を披露して、締めくくり。演奏時間はアンコールを含めて1時間強と終わってみると短かっただけど、それを感じさせない程の情報量の多い音と喜怒哀楽が込められたステージに満足感は大きかった。

Mice Parade

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Photos:
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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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