ラスト・アライアンス @ 心斎橋クラブクアトロ 2011.01.16

決意の青。クアトロで繋がったひとつのリング
投稿 @ 心斎橋クラブクアトロ 2011.01.16

 ラスト・アライアンス(以下ラスアラ)の音楽の懐奥深くに、まさにダイヴィング! そんな、楽しすぎたライブだった。

 今回の『キープ・オン・スマッシング・ブルー・ツアー2011』は、いつものニュー・アルバムに伴うライブだったけれど、その夜のライブはとてもスペシャルで強烈な感触のあったライブだった。おそらく、東名阪の全3公演すべてでその手ごたえはあったのだと思う。

 口下手で口数の少ないラスアラの4人が、ライブでよく喋った。特に、安斎龍介(Vo/G)次いで松村孝彦(Vo/B)が主にMCに時間をついやしていた。決して饒舌とは言えないトーク。しかし、言いたいことは十分観客に伝わっていた。アーティストの音楽に対する真意を受け止めたオーディエンスの跳ね返すエネルギー。それをまた、アーティストが押し返す永遠のループ。そのグルーブのうねりが凄まじく大きかったから。いま、この時! ラスアラと僕たちが、生の音楽を共有していることがたまらなくうれしかった!

 話は少しさかのぼる。昨年10月27日彼らは新作『キープ・オン・スマッシング・ブルー』を発売したが、このアルバムの全工程を終えた8月29日神奈川県登戸駅付近の駐車場で機材車の盗難にあっている。アルバム制作をしていたのだから、彼らの相棒・ギター、ベース、ドラム、その他の機材すべてが車内にあり… 持って行かれた。約半月後に控えていたあるバンドのサポート・ライブには、借り物の楽器で演奏した。そのときのマーチャン・ダイジング(物販)は、ラスアラのものはなにひとつなかった。その後、現在も楽器が見つかったという情報は聞いていない。

 11年1月16日(日)の大阪、心斎橋クラブクアトロ。客電の落ちたほぼ満員の会場内に落雷の轟音が響く。そして、青く白くストロボ現象を起こすステージのライティングが観客の気持を高ぶらせた。メンバーが出てきて新作の1曲目「ブルー・ライトニング」が始まると、モッシュ・ピットは待ってました! と言わんばかりにダイバーたちが人の頭上を転がっていた。

 この日、僕は初めてドラムスの小澤浩史の新しく購入した白のドラムセットを見たが、ドラムから打ち出されるその音は低く重いチューニングで、ベードラなんてものっすごく長くて深さのあるヤツで、ドッ、ドッ、と身体に響くその音からはまるで、雷神が降臨、ドラムスを担当しているように目に映った。新作から2曲、前作『カワサキ・リラックス』から2曲、2ndアルバムから”夢想時代”で5曲をアグレッシブに攻めまくると安斎がMC。

「『キープ・オン・スマッシング・ブルー、 ツアー2011』にようこそ。5人目の子どもが生まれました。」

 何か勘違いしているような場内の拍手と歓声。すかさず、「アルバムのことです。」とつけ加えた。短く話した後、新作から6曲目「ルーザー」へなだれ込み、エッジの強いナンバーが続く。

 ラスアラは稀有な存在だと思う。それは、ファンの年齢層が10代から30代くらいと幅広いからだ。ライブの時はだいたいどこのライブハウスでも、前方モッシュ・ピットは10代20代の若い層が占め、後方で30代くらいのアダルト層が静かな闘志を燃やしながらステージを見つめている。この日のライブもやはりそうだった。今回のライブ中盤で演奏された「タイムカプセル」のラスアラ・メンバーと同世代へ宛てたような夢の途中の切ないバラードは、聴かせる名曲として安斎を一心に見つめる観客たちの心に深く刻まれたはずだ。こういう曲は、多くのアダルト層に共感を得られているのではないか。また、ダブル・アンコールで演奏した「ヘキレキ」(TVアニメ「はじめの一歩」主題歌)などは、もろに現代を生き抜く若者たちへの応援歌。安斎、松村が交互に切り込みツイン・ヴォーカルを務めるメロディックな疾走チューンは、この日の幸福感に満ちたライブの最後にふさわしいナンバーだった。彼ら自身、まだ夢の途中で達成したいものがあるのだろう。彼らの音楽観そのものが10代〜30代が抱える精神性にシンクロしているから多くのファンの共感を得られているのではないか。瑞々しさと焦燥が今作にも見え隠れしている。

 変わらないために、変わり続ける。今回のアルバムのテーマだ。アルバムに込めた思いと、バンドのこれからの行方や気構えを安斎が熱く語ってくれた。要約してみる。変わりゆくもの。アルバムが毎回違う作風だったり、精神的なこと。最近わかってきたことは、本当にたくさんの人たちに接して自分たちが音楽活動を続けられているということ。レコード会社、スタッフ、音楽を聴いてくれているみんな。「みんながいないと音楽できない。」とても優しげな表情で話をする安斎の顔が、ミュージシャンから一人の人としてそこに立っているように見えた。ギターの佐野森吾がMC中の安斎の邪魔にならないように、ジャラーン、ジャラーンと小さくギターを鳴らしていた。その空間はとても心地よかった。

 長いMCは何曲か挟んで2度に渡る。今度のBGMは松村。変わらないもの。喜怒哀楽、自由への思い、反発心など、いろんな感情や思いをラスアラの音楽に詰め込んでいる。絶対につかみ取りたい大切なものがある限り、自分たちは音楽をやり続ける。それをわかって今日は帰ってほしい。トレードマークの4つの輪っかがあるけれど、あれはラスアラの象徴。「4つの輪っかは一生外れない!」安斎が言うと、すかさず松村が「ロマンティックだぜ!」と一言。「クアトロでリングひとつに繋げてひとつになろうぜ! まだまだやるから一緒に気合いいれようぜ!」安斎がオーディエンスを煽ると、場内の観客の気合いのボルテージが一気に上がった。

 何にしても、困難を乗り越えて新作のワンマン・ライブを無事に終えることができた。それがうれしい。ストイックに音楽を演奏するだけのいつものライブとは違う、彼らの胸の内を、生で、見て、感じて、知ることができたから、こっちも思いっきりラスアラの懐に身を投げることができた。ビルの8Fにあるクアトロの床が抜け落ちるんじゃないかっていうくらいみんながジャンプしていた。それは、世代を越えて彼らが好きだっていうみんなで作ったひとつの輪っかの証し。ラスト・アライアンスの4つの輪っかの中心の軸は不動。変わらないものは、初期衝動。軸そのままに、だが、熱く焼け焦げるように車輪を回す。変わりゆく車輪は彼らの音楽そのもの。変わりゆく、変わらないものを背負いラスト・アライアンスはどこへ行くのだろう。それをまた、次のライブで見届けずにはいられないのだ。

Text by 吉田陸

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