定例 : これを見逃すな! – 踊ろうマチルダ

「『人間』をありのままに見せてくれる、踊ろうマチルダ」
コラム 定例 : これを見逃すな! – 「『人間』をありのままに見せてくれる、踊ろうマチルダ」09.05.22

 生きていればそこいらじゅうに迷いがある。足を踏み入れたとしても、それが上手くいくのかは誰にもわからない。もちろん自分自身にも、わからない。でも、踏み出さなければなにも変わらないし、そうすることで少しは目的のようなものに近づくだろう……「踊ろうマチルダ」という風変わりな名前で活動することを選んだ釣部修宏の歌には、そんな空気が漂っている。

 とりあえずは、共に生きられる大切なものを選び、それと共に歩きだす。釣部にしてみれば、楽器、ということになるだろう。踊ろうマチルダ、というのはオーストラリアに古くから伝わる例えで「マチルダ」は「必要最低限の荷物」(自分にとって最も大切なもの、ということ)であり、「マチルダと(ワルツを)踊る」という言葉を意訳すると「共に揺られる」、つまりは「放浪をする」という意味となる。

 終着駅はどこか、目的はなにか……などと問うのは野暮というものだ。旅というのは、不安定な部分があってこそ旅で、日程すべてがあらかじめ決められているものは、ただの観光だ。たとえ、帰りという縛りがあるにしても、ほんの少しでも、まっさらな時間を思いつくままに色づけしていく余裕さえあれば、神経や感覚は鋭くなり、おのずと糧となるようなものが生まれてくる。馴染んだ土地を離れることが、逃げから始まったことだったとしても、また、社会に対する反発であっても、行った先で形に残らない「なにか」を得たならば、それはれっきとした旅となる。

 まぁ、なんというか、そんな旅のことを膨らませてしまうくらいに響くのだ。彼の歌を体験してみると、ジャック・ケルアックの世界観だったり、アキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュが撮る映画の世界と重なってくる。極めて独特な「言葉を捨てる」ような歌いかたとザラつく声が、彼の旅への想いやこころの動きを等身大のままに伝え、誰しもが持っている迷いと繋がってしまう。

 そして、釣部は終盤で演奏される”異国の夢”で、歌で創りあげた世界をすべてぶち壊すかのように、突如として感情を昂(たかぶ)らせる。味のあったしゃがれ声はさらにひどく潰れ、嗚咽(おえつ)となって轟いてくる。そうなると、もう歌どころではない。彼の魅力は何だろうと改めて考えたらば、声や歌の世界はもちろんだが、それなりの意地はあるけれども弱くて、本当は泣きたいという、「人間」をありのままに見せてくれるところにあるのだ。

 そんな「踊ろうマチルダ」を是非とも体験してほしいと思います。狙い目は5月25日に下北沢COOで行なわれるワンマンライヴ。休憩を挟んだ2ステージということで、かなりのヴォリュームになりそうです。前回行なわれた下北沢440のワンマンは130人超えだったので、この機会に是非。見て損はありません。

踊ろうマチルダ・ツアースケジュール
09/05/23(土)@大阪 南森町 Bar Shelter
09/05/24(日)@三重 菰野 Cafe COB
09/05/25(月)@下北沢 Bar CCO(ワンマン、2ステージ)
09/05/30(土)@渋谷 Wasted Time
09/06/05(金)@新高円寺 STAX FRED
09/06/07(日)@神奈川 新百合ヶ丘 Bar Chit Chat
(Jim Bianco Japan Tour 2009)
09/06/09(火)@松山 Bar Caezar
09/06/13(土)@神奈川 逗子 Bar ランテルナロッサ
09/06/15(月)@下北沢 440
09/06/19(金)@横浜 Thumbs Up
(Jim Bianco Japan Tour 2009)
09/06/22(月)@沖縄 宜野湾 ロックジャミン
09/06/24(水)@沖縄 具志頭 虹亀商店
09/06/26(金)@沖縄 宜野湾 プチ☆カフェ
09/06/27(土)@沖縄 那覇曙 Royde
09/06/30(火)@沖縄 浦添 Bar Scarab
09/07/17(金)@京都 磔磔
09/07/18(土)@京都 磔磔
09/07/22(水)@名古屋 得三

ツアーの詳細は公式サイトでご確認ください。

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Text:
Taiki "tiki" Nishino
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