ザ50回転ズ -『ロックンロール世界旅行』

まじめな進化とインチキな昭和

CDレヴュー 『ロックンロール世界旅行』 2011.8.22.

 ザ50回転ズの新しいミニ・アルバム『ロックンロール世界旅行』を聴いて感じることは、「彼らは進化したな」ということと「昭和のテイストだな」ということだ。

The 50 Kaitenz 世界旅行をコンセプトに、自分たちのロックンロール・サウンドと世界各地の音楽を融合させた……といえばすごい作品ができたと思うけど、まとわりつくインチキな雰囲気がどうしても拭えない。それははっきりいうと「誤解」の産物なのだ。だけど、誤解だから悪いというわけではない。レッド・ツェッペリンだって北アフリカを取材して作った曲に「カシミール」というインド・パキスタン地域の名前をタイトルにしたり、ブライアン・フェリーの「東京ジョー」やビーバップ・デラックスの「ジャパン」などは日本というより中国ぽい雰囲気があるように誤解の産物だけど、なぜか憎めない曲はたくさんある。そして日本人も昭和の時代に、想像の中のメキシコで「メキシカン」とか数限りない誤解を犯しているのだ。

 50回転ズは、今回のアルバムを作るのにあたり、ネットで調べたり、新たにアルバム買ったりして研究したりせずに、全部自分の中にある世界各地のイメージのみで曲を作ったという。そのためズレているけど憎めない、そのズレっぷりが、まだ海外旅行が憧れであり想像の中で世界を巡っていた昭和の雰囲気を感じさせるのだ。各文化を理解しないで曲を作った、と故・中村とうよう先生なら怒って0点とか付けそうだけれども……。

■首狩り族の逆襲

 オープニングを飾るインストゥルメンタルの曲。アフリカやアマゾン、パプアニューギニアあたりの熱帯のジャングルにいる原住民をイメージしたものと思われる。アルバムの裏ジャケットにもそういうコスプレで3人が写真に収められている。

■ハワイはいいわ

 50回転ズ流のサーフ・ロック。サーフ・ロックといっても、ジャック・ジョンソンみたいな爽やか系でなく、ビーチボーイズのような60年代のロックンロールである。完全にイメージだけのハワイであり、散々ハワイの良さを語った揚句に最後に「行ってみたいハワイ~」と「行ったことないのかー!!!」と突っ込みたくなるようなオチである。途中のダニーによる語りも、加山雄三のパロディであり、わざとらしくてキモくて面白い。波の音はダニーが小豆ザルを左右に揺らして作ったものだ。昔のラジオやテレビで波の音を出すときには小豆ザルを使用していた。

■ベラルーシより愛をこめて

 ベラルーシというか、ロシア民謡を意識したもの。ダークな雰囲気を出しながらスピード感がある。アコーディオンの音が入ると、ちょっとジャンルは違うがフロッギング・モリーを思い出させる。

■荒野のタンゴ

 リリース・パーティのときにダニーが「タンゴとフラメンコを完全に取り違えた」と発言しているように、アルゼンチン・タンゴというより、スペインのフラメンコをイメージした曲。インストゥルメンタルの曲で疾走感はかっこいい。

■Killer(キラー)

「スペシャルズのリズムとドクター・フィールグッドのギターを合わせた曲」(ダニー)。イギリスをイメージした曲らしい。これもロックンロール的な迫力とスピードがすばらしい。

 歌詞をよく聴くと「知らなかったとは言わせはしねえ」「生き物すべてが気に食わねえ」「俺に手を出したのが間違いさ」「止めてみな/人間さんにできるなら」「世界が揺れたその瞬間に/歩きだすさだめを背負い込んだ」と震災で起きた事故をイメージさせる言葉が並んでいる。ダニーは「解釈は自由だし、この曲は震災前に出来た」というけれども、それに気づいて2曲前の「ベラルーシより愛をこめて」の歌詞をみると「故郷はもう あの柵の向こう」「あの町へ帰ろう/いつかまたきっと」とチェルノブイリの事故後閉鎖された汚染地域を思わせる歌詞がある(チェルノブイリはウクライナとベラルーシの国境近くにある)ように、震災で起きた事故が色濃く反映されている。震災前に出来た曲なら歌詞を変えるなり、発表を控えるということも出来たはずである。

 もちろん、この曲は人間が生みだしたゴジラのような怪物一般を歌ったともいえるし「解釈は自由」なのだ。

■ロッキン・カンフー

 これはそのまんま中国。しかも彼らにとっての中国というのは、『少林寺』やブルース・リーに代表されるカンフー映画から受け取った中国のイメージであるということだ。

■カリブ野郎に気をつけろ!

 ひたすら陽気な曲。ダニーも「ベラルーシ~」や「キラー」での声と打って変わって明るく能天気な声を演じている。この演じ分けもダニーの才能のひとつである。しょうもない駄洒落も曲に合っている。アレンジにスティール・パンなどが入っているけれども、ただ、カリブのリズムではない。

■Trip! Trip!(トリップ! トリップ!)

 ドリー作曲で、ビッグ・バンドがスウィングするようなナンバー。イメージはアメリカ。前作の『ロックンロール・マジック』でもそうだけど、ドリーの曲はラスト前のいい順番に置かれている。曲は軽快で印象的なものだし、アルバム全体を振り返る歌詞である。ただこのアレンジだと、ライヴで3人だけで再現するのは難しいかもしれない。

■船乗りたちのメロディ

 最後にアンコールっぽくダニーの作品。「あれー? こんなタイトル前になかったっけ?」と思ってしまった。「放送室の~」「海賊たちの~」「放課後の~」「○○の▲▲」……まあ、ちょっとワンパターンではあるけれども、曲はアイリッシュ・パンク(正しくはケルティック・パンク(Celtic Punk))で楽しい。フィドルでハンバート・ハンバートの佐藤良成が参加している。

 このように50回転ズの脳内世界旅行を楽しめたのだけれども、こうした試みの成果のもう一つは、50回転ズが作る音の世界が拡張されたことである。さまざまなサポート・ミュージシャンの参加も今までにないことだし、楽器が加わっても50回転ズの芯になるところは崩れることなく、バラエティ豊かになった。これはクラッシュがみせた『動乱 (Give ‘Em Enough Rope)』から『ロンドン・コーリング』にかけての変化のように、ホーンセクションの導入と共にジャズやカリブやスパニッシュなどの要素を取り入れたのと軌を一にする。さらに時代に鋭く反応する感性もある。これは50回転ズを進化させたものとして評価すべきミニ・アルバムだろう。ただ、コテコテな昭和風のギャグに覆われているので、気づきにくいかもしれないけれども……。これから3人で日本を巡るツアーに出る。このアルバムをサポートなしでどれだけ再現するのか楽しみなのだ。近くの街に来たらぜひ、ライヴハウスに足を運んでもらいたい。

★全国ワンマンツアー
『50回転ズのロックンロール世界旅行ツアー 』
9/ 6(火) 高松DIME
9/10(土) 札幌BESSIE HALL
9/12(月) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd~ROCK’N'ROLL IS HERE~
9/19(月) 金沢vanvan V4
9/21(水) 名古屋ElectricLadyLand
9/24(土) 福岡DRUM Be-1
9/25(日) 岡山IMAGE
9/28(水) 赤坂BLITZ
10/1(土) なんばHatch

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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