Sgt.(エス・ジー・ティー)- 『Birthday(バースデイ)』

心の芯に響くコンセプチュアルな大作
CDレヴュー 『Birthday(バースデイ)』 2011.10.12

 先月末に行われた2ndアルバムのレコ発ツアー・名古屋公演(09/25 @ 名古屋VIO)に足を運んだのだが、彼等に圧倒された。その名は“sgt.(エス・ジー・ティー)”、ポストロックをお好きな方なら、耳にした事がある人も多いと思う。強靭なグルーヴにグイグイと引っ張られ、優雅に舞うヴァイオリンの旋律が力強く描き出す壮麗なるサウンドスケープに昂揚、そして感動。彼等を見るのはサクソン・ショアとの合同ツアーの時以来で約2年ぶりだったけれども、定評のあるライヴパフォーマンスに磨きがかかっていて、この2日前に京都で見たBoris / envy / Monoとはまた別の次元へと確かな手腕で導いてくれた。ここ最近はその時の影響もあって、3年ぶりに発表となった2ndアルバム『Birthday(バースデイ)』を絶賛ヘヴィロテ中。というわけで今回はこの作品を取り上げたい。

Sgt. sgt.は1999年結成で現在も精力的に活動を続けている、インストゥルメンタル・ロック・カルテット。ギター、ベース、ドラムにヴァイオリンという編成が大きな特徴である。その美しさと獰猛さを兼ね備えたドラマティックかつダイナミックなスケールの楽曲が高く評価され、人気を獲得。10年に及ぶ活動で培った技術・経験・創造力という揺るぎない土台をベースに大輪の花を咲かせた2008年発表の1stフルアルバム『Stylus Fantasticus(スティルス・ファンタスティクス)』は、多くの人々が認める傑作であった。個人的にもかなり愛聴した一枚である。さらに前述したように長年にわたって鍛錬してきたライヴ・パフォーマンスにも定評があり、Smashing Magでも2008年の大阪公演のフォト・レポートを一度お届けしている。

 それから09年にはギターに新メンバーを迎え、ミニアルバム『Capital of gravity(キャピタル・オブ・グラヴィティ)』をリリースし、2010年には初の海外ツアーも敢行してさらなる成長を遂げた。そして、産み落とされたのがこの2ndアルバムの『Birthday(バースデイ)』である。驚くほどの猛々しさや狂気の渦巻き、複雑な構成を基軸にしつつも時空を越えていく飛翔感や凛とした美しさが醸し出す幻想的な世界観・・・。sgt.たる根幹の音楽性はそのままに本作は“星の少女が旅をする物語”を多彩なアイデアとアンサンブルの元で投影していくコンセプト・アルバムに仕上がっている。言葉以上に雄弁かつリリカルで破壊的なインストゥルメンタルを奏で、涙腺を刺激する高い物語性を体現してきた彼等にとって、まさしく進化/深化を示した作品だ。

Sgt. 赤子の声が序章を飾る20秒強の「古ぼけた絵本」が始まりを告げ、自らの音楽をさらに精錬した「cosgoda(コスゴダ)」で加速して銀河を突き抜けていく。強靭なグルーヴの上を美麗な鍵盤とヴァイオリンが響き、火花を散らすようなスリリングな展開を繰り広げる9分間が早くも聴き手を圧倒。メンバー自らの高い技術と複雑でスリリングな展開が結びつき、そこに中村圭作(kowloon)や大谷能生(MAS)、kim(Uhnellys)などのゲストが招かれ、叙事的で刺激的な音空間を見事に造形している。また、それがアート感覚にも還元されていて作品の深みにも繋がっている。

 フリーキーなサックスが暴れ回り、プログレッシヴ・ロックにも迫る展開力とジャズの生々しい緊張感とロック的ダイナミズムが交錯する「アラベスク」、軽快なラップとうねるグルーヴィなリズム、情熱的なトランペットに艶やかなメロディが手を取り合う迫真の#7「Zweiter Weltkrieg(ツヴァイター・ヴェルトクリーク)」では新しい世界を見せてくれているといえるだろう。細やかな表現力や様々なアイデアを投下し、構築に工夫を重ねながら新たな領域へと突入したのも本作における魅力といえる。一気にジャズ/クラシック的なフィーリングが増して荘厳で華やかな「あなたはわたし」~「きみは夢をみている夢がきみをみている」の締めくくりもまた甘い陶酔と深い余韻を誘う。

 自らの想い描くコンセプトを突き詰め、言葉以上に雄弁で映像性の高い音色で綴られた楽曲の数々。それらがひとつひとつ繋がって結びついていき、ひとつの大きな物語へと収斂していく。新進気鋭のイラストレーター・末吉陽子が手掛けたブックレットと共に、想像力を膨らませながら是非とも堪能してほしい作品だ。穏やかな安らぎから激しい戦慄までが巡り、地上より宇宙までのスケール感を演出する音世界を細やかに表現した本作には、心の芯に響く感動がある。

Sgt. なお、この2ndアルバム発売と同じ日に一部の店舗とライヴ会場、そして配信限定でのみ販売だった2枚組のライヴアルバム『LIVE(ライヴ)』が全国流通開始。壮麗なる美しさと激しいダイナミズムが生々しい緊張感を持って表現されたこのライヴ作は、1時間半にも及ぶボリュームとなっていて、彼等を知る確実な手助けとなるはずだ。

 10月22日(土)には渋谷オーネストにてレコ発ファイナルとなるワンマン公演を予定している(詳細は公式サイトにて)。2ndアルバムに参加した多くのゲスト陣が招かれて開催する盛大なライヴとなるようなので、是非とも五感で受けとめてきてほしい。その衝撃は計り知れない。

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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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