ジェイムス・ブレイク (James Blake) @ 名古屋 クラブクアトロ 2011.10.14

新たな才能がもたらした斬新で贅沢な夜
テキスト・レポート「新たな才能がもたらした斬新で贅沢な夜」 @ 名古屋 クラブクアトロ 2011.10.14

James Blake

 どれだけの人が待ち望んでいたかは会場に詰めかけた大多数でわかる。先に行われた東京公演の評判があまりにも良くて、凄く大きな期待を膨らませて公演に向かったんだけど、想像以上のパフォーマンス。デビュー作『ジェイムス・ブレイク』は、クラブ・ミュージック、ダブステップ経由のトラック・メイキングに加え、そういったジャンルを飛び越える神通力を持ったその歌声が世界中から大絶賛を浴びたわけだが、音源では計り知れない衝撃がライヴには間違いなくあった。それは、目撃できたことを誇りに思えるほどのものといってもいいだろう。完全に魅了されてしまった。

James Blake まずは、オープニング・アクトのキャサリン・オカダ(MCで言ってたが、ジェイムスとは友達らしい)が出てきて、ギター一本での弾き語りの約30分ステージを披露。終了後は爆音でブリアルが流れ続けていて、20分程経過した後に噂のジェイムス・ブレイクがまず一人で出てくる。そのままピアノと美声で綴る「イナフ・サンダー」を演奏。出足から会場の雰囲気をゆっくりと確かめる様にして一音一音を鳴らし、丁寧に歌いあげてしっとりと会場を包み込んでいく。意表を突くような選曲だが、歌に対する絶対的な信頼がそうさせたのだろう。心に染みわたっていく声に導かれて、ライヴにすっと入っていけた。

 その後はサポートの2人が登場し、三人編成で1stアルバムの冒頭を飾る「アンラック」へ。予想以上に圧力と重みを感じさせる低音のビートがうなり、浮遊する電子音や歌が混じり合う。どこか憂いを帯びつつ、芯の強さや美しさを感じさせてくれるのだが、心身が揺られつつも陶酔していくような不思議さがある。それは、空間を慎重かつ大胆に切り分けた独特の間に吸い寄せられたからだろうか。 「アイ・ネヴァー・ラーント・トゥ・シェア」では始めに歌声をそのままサンプリングして重ねて聴き手の関心を引き、徐々に歪だが美しい世界が拡がっていく。ポスト・ダブステップという形容が世界中で躍る中で彼の作品を聴いて、個人的に思ったのは”引きの美学”だったのだが、少ない音数での圧倒的な説得力はライヴでも健在。ソングライターとして、トラックメイカーとしてその才覚を発揮しつつも内省的に響くサウンドは、心をグッと捉えてくる。

James Blake その中でダブステップ的な揺さぶりと柔らかなヴォイス・サンプリングが特徴的な「CMYK」は、この日のフロアが一番揺れた瞬間だった。今日の客層は本当に幅広い感じだったが、夜な夜な踊り続けたい方々からするとこの手の曲がもっとジェイムス・ブレイクには望まれているのかなと思ったりも。ただ、そこから続けざまの「リミット・トゥ・ユア・ラヴ」では冒頭のピアノと歌に感電。予想を遥かに超える重低音に驚きもしたが、それが引いた瞬間に訪れる静謐の美というものが素晴らしいものだった。しかもこれだけで終わらずに曲が倍ぐらいの長さになっていて、ダブっぽいニュアンスの強い楽曲に進化して表情/機能性を全く変えてしまったのも印象に残っている。本編ラストの「ザ・ウィルヘルム・スクリーム」では美しいメロディを奏でるギターと歌声に耳を傾けていると、徐々に頭角を現していくシューゲイザー的なノイズに包まれていく。この儚く幻想的な曲調には、ただただ恍惚と聴き入ってしまったのだった。

 アンコールは2曲。デジタル・ミスティックズのカヴァー「アンチ・ウォー・ダブ」が本能に訴えかける様なリズムを刻み、そこに深遠な音響が重なり、全身を揺さぶり続けた。この曲は先の「CMYK」張りの盛り上がり。そして、サポート2人を帰してから新しいEPにも収録されているジョニ・ミッチェルの「ケース・オブ・ユー」をジェイムスが一人で弾き語る。自身のパーソナルな面を覗かせ、また歌の絶大な効力を知らしめて、ライヴは幕を閉じた。演奏後には深々とお辞儀してステージを去る。そんな彼に対して、一向に鳴りやまない大きな拍手がこのライヴの出来を物語っていたように思う。個人的にも”斬新”、その言葉を強く刻む貴重な体験であった。

— set list(原文です。実際はアンコールに”Anti-War Dub”) —
 
Enough Thunder / Unluck / Tep and the Logic / I Never Learnt to Share / Lindisfarne / To Care(Like You) / CMYK / Limit to Your Love / Klavierwerke / Once We All Agree / The Wilhelm Scream

— encore —

Case of You

James Blake

–>photo report

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Photos:
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Text:
Takuya Ito
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