チャラン・ポ・ランタン @ 東京キネマ倶楽部 2011.11.24

平成の昭和歌謡
テキスト・レポート 「平成の昭和歌謡」 @ 東京キネマ倶楽部 2011.11.24

チャラン・ポ・ランタン

 ここに取り上げる『チャラン・ポ・ランタン』は、ストリートで叩き上げたボタン・アコーディオン奏者・小春、その妹でシンガーのももちゃんからなる、姉妹ユニットだ。

 思い起こせば2年ほど前、ももちゃんの初ステージを見ていた。それは、ボタン・アコーディオンの小春が率いていた、『マイノリティ・オーケストラ』のライヴでのことだった。

 当時を思い起こせば、小春は、『ピンクなんとか(ピンク・フロイド)っていうバンドにいた人が、何か知らないけれども「YouTube」でウチらを見てね〜、呼ばれてイギリスに行って来ました〜!』

 …などと、プログレ・ファンならば壁を叩いて喜びそうなエピソードを、能天気さとユーモアでくるんだうえ、ちょっとばかし毒をふりかけて、活弁士の如く喋りまくっていた。達者なのは口だけではなく、アコーディオンの世界大会に進出する腕前を持ち、その、耳に飛び込んできたアコーディオンの「踊り、跳ねる音」に唖然としたことはまだ忘れてはいない。

チャラン・ポ・ランタン 口八丁手八丁な彼女が「昭和生まれで良かった…」と思ったのもつかの間、小春の「も〜もちゃ〜ん!」の呼びかけで、小脇に「ブタちゃん」を抱えた女の子がステージに登場した。何と、こちらは16歳、高校生(当時)だという。

 髪の毛を見れば、漫画で描かれるようなキューティクルが輪を成し、それがそのまま世代の違いを印象づける。あの小渕恵三が掲げていた「平成」の筆文字を、「時代の移り変わり」として子供心に強く刻みつけられた身としては、ついにこんな日が…などと思いを巡らし、お客さんを一気に「おっさん/おばさん」に振り分ける「女子高生」という響きに怖さを覚えた。

 しかも、ひとたびももちゃんが喉を鳴らせば、昭和の歌謡が流れ出る。初舞台だけあって、決して慣れた様子ではなかったが、はしばしで磨けば光る「原石」だということを認識させられた。「ブタちゃん」を連れ立ってアメ玉を配る光景には、「不思議な子」という印象もあり、今、本人に「あの時、実は見てたんだよ」なんて言うと恥ずかしがるあたり、かなり緊張していたのかもしれない。

チャラン・ポ・ランタン それからしばらくして、ストリートで叩き上げた実姉、小春と『チャラン・ポ・ランタン』を結成し、より多くの行動を共にできる時間が増えたということが、ももちゃんを次のステージへと進ませたのだろう。小春には、姉という面はもちろんのこと、ユーモアやテクニック以上のプロ意識が備わっているのは、『マイノリティ〜』の頃から強く感じていた。

 鴬谷での始まりは、小春のソロから流れ込む、生田恵子の”東京ティティナ”だった。ももちゃんは、お姫様のように幕の奥から登場し、切なげな表情を浮かべている。スローなうちはドスを利かせて歌い、テンポが早まれば、可愛らしさを全面に出して、弾むように歌う。小春はといえば、メロディの屋台骨を支えつつ、ももちゃんがその上で自由に跳ねられるように配慮しているようだった。

 続くは、『チェブラーシカ』から”ゲーナのうた”だった。”東京ティティナ”の元を辿ればフランスで、チェブはそもそもロシアのアニメ。姉がヨーロッパを持ち込み、妹がこぶしを絡めて、昭和の香りを付けていく。かつて、ネタ元として、満遍なく世界の音楽を取り込んできた「昭和歌謡」の成り立ちを、追体験させてくれたような気がする。

チャラン・ポ・ランタン そもそも、この日の鴬谷は『踊ろうマチルダ』のワンマンの千秋楽だった。その主役である釣部修宏が、まだ本名で活動していた頃の楽曲、”ロシアンガールはもういない”をカバーしてみれば、中盤から本人が登場し、3人横並びでの演奏に。これは、『踊ろうマチルダ』のワンマンの場において、嬉しいサプライズとなっていた。最近の釣部は、未発表の新曲が増えてきたこともあり、”ロシアンガール〜”をめっきりやらなくなったし、それだけでなく、チャランポの場合はキーを変えているために慣れたキーではなく、終始、苦笑いしながらの演奏だった。一言で表すなら「ユルい」のだが、そんなセッションはキネマ倶楽部に柔らかな風を吹かせていた。

 ”カシスオレンジ”に入る前には、小春がももちゃんの歳(18歳)に触れ、

「小春が18の頃はね〜、ゴールデン街で流しをやっててね〜、お金をもらうにはねぇ…」

 と、たくましい経歴をサラッと。ももちゃんも負けじと、曲の中盤で小芝居を展開させてくる。

「どうせ小春のほうが好きなんでしょ?」
「『愛してる』って、言ったじゃない!」

チャラン・ポ・ランタン ざっと説明すれば、「ももちゃんが過去の男を罵倒する」といった内容だ。ファンならば、その相手役に指名されることが至上の悦び。なにせ、成人前の可愛らしい女の子が、去って行った(という設定の)自分を振り切ろうと意地を張ってくれるのだから。ちなみに、この小芝居には、ももちゃんが相手役の予備知識を持っている場合には、アドリブが入ってくる。一番いじられ易いのが「主催者」、次に「最前列」、そして「カメラマン」…当然、どれも男子限定だ。もし、ももちゃんに翻弄されたいのであれば、自身でイベントを企画し、チャランポを出演させることだ。

 今回は、『踊ろうマチルダ』の1部と2部の幕間に登場ということで、あまり長くはなかったが、その魅力は十分に伝わった。出ずっぱりの小春(マチルダでも弾いている)のボタアコと喋りのどちらも香ばしく、ももちゃんにしても、初舞台で感じた「原石」から脱皮し、深みある声と大人をおちょくる「エンターテインメント」を身につけていた。

 2011年12月現在は事務所を抜けて、フリーの身。小春、ももちゃん共に、ゲスト出演や別ユニットなどで、連日どこかしらでライヴをやっているという。23歳と18歳という事実を踏まえれば「末恐ろしい」と口走りたくもなるが、そんな事実以上に、こちらを楽しませてくれる『チャラン・ポ・ランタン』の今後に要注目だ。

チャラン・ポ・ランタン

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Text:
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