アイシス(Isis)- 『LIVE I-VI』

深化を物語るライヴ作品集
CDレヴュー 『LIVE I-VI』 2012.04.02

 全世界に衝撃と悲しみを与えた解散からまもなく2年近くが経過。その巨大な存在が無くなってしまった事を嘆く声は、未だに後を絶たない。レッド・スパロウズ、マミファー、ハウス・オブ・ロウ・カルチャー、トワイライト、グレイマシーン、ジョディス、スプリット・クラニアム、クローンなど各メンバーの活動/プロジェクトを追ってはいるのだが、アイシスの解散という現実を自分も受け止めきれてない部分がある。その決断を潔く、彼等らしい美学に基づいているとは感じるが、残念だという気持ちの方が遥かに強い。アイシスの灯は今も心の中で燃え続けている。

Isis 彼等に関しては何度も紹介してきたから説明は不要かもしれないが改めて。ハードコア/ヘヴィロックからアンビエントに至るまでを咀嚼・統括し、前衛的でコンセプチュアルな作品を構築して新しい時代を拓いたバンドである。ストイックに音を追い求め、自らの音を常に昇華し続けてきた。発表するごとに大胆な進化/深化を遂げてきたオリジナル・アルバム5枚は、その象徴。ヘヴィ・ミュージックをネクスト・レベルに導き、全世界で多くのフォロワーを生んできた。まさかのラスト・アルバムとなった『ウェイヴァリング・レイディアント (Wavering Radiant)』は、自身のこれまでを総括しながら強さと美しさが共立した身震いするほどの完成度を誇る作品で、ここを到達点にしたのも今となっては理解できる。

Isis 今回のレビューで取り上げるのはライヴ作品集で、デイメア・レコーディングスより3月に発売された”全世界300セット限定”となる6枚組のLIVE BOXセットである。『Ⅰ』~『Ⅴ』までの5枚は”LIVEシリーズ”として、これまでにライヴ会場や通信販売で1000枚限定で発売されたものの再プレス(現在は配信でもそれぞれ入手可能)。僕が彼等のライヴに行き始めたのが2007年なので、それ以前のことはわからないが、『Ⅳ』と『Ⅴ』は2007年と2010年の来日の際にライヴ会場で少数販売していた(付属のライナーを読むと『Ⅱ』も購入できた模様)。『Ⅵ』は今春に新しく発売するもので、海外ではアナログ盤とデジタル配信のみでリリースされ、CDフォーマットでの販売は日本だけ。本作品は6枚組で装丁にこだわっていることもあって1万円近い値段がするのだが、既に完売状態で早くも貴重な品物となっている。
 
Isis 本作品集は、2003年9月にモグワイのオープニング・アクトを務めた際の音源である『Ⅰ』から、2ndアルバム『オーシャニック』を完全再現したオール・トゥモローズ・パーティーズ主催の2006年のスペシャル・ライヴを収めた『Ⅴ』、2007年の結成10周年ツアーのポートランド公演の『Ⅵ』まで様々だ。当然ながら6枚それぞれに魅力がある。このライヴ音源はかなりラフに録音されたものから正式にミックス、マスタリングを行ったものまであるそうだが、どの作品にも生々しい迫力と臨場感があるので、聴き手の感性を大いに刺激するはずだ。『Ⅰ』から『Ⅵ』へ聴き進めていくごとに、アーロン・ターナーのヴォーカルでの変化が顕著だが、バンドの感覚が研ぎ澄まされていくのがわかる。特にハードコアの強さを漲らせながら、説得力とスケールを遥かに増した『Ⅵ』は、思わず唸ってしまうほどのライヴ作品だ。

Isis アイシスはライヴにこそ真髄があるといえるバンドであった。”音の粒子が見える”とまで評されるライヴは、細かなテクスチャーの実現から圧倒的なダイナミズムまでもが感覚という感覚を支配。鉄壁のバンド・アンサンブルにグイグイと引き込まれ、やがては天と地を引っくり返すようなとんでもない衝撃が襲いかかる。彼等のステージを体感したことがある人ならわかってくれるだろう。語り継いでいきたくなるあの凄さを。”神がかり的”とまで評したくなるあの凄さを。僕は彼等を初めて見たのは2007年1月の名古屋公演になるんだけど、あの時に受けた衝撃は未だに忘れる事が出来ない。それは結果的に最後となってしまった2010年3月の渋谷O-East公演も同様だ。

 特にこの作品集では、5テイクも収録されている「Weight(ウェイト)」が強く印象に残る。スタジオ・テイクでは、ボストンのオルタナティヴ・ロック・バンドの27のエイエル・ナオアとマリア・クリストファーが参加し、重厚なサウンドにたおやかな女性ヴォーカルが重なって天空へと突き進んでいく。この曲が多彩なゲストを迎えることで昇天度を高めており、『Ⅰ』ではモグワイのドミニク・アイチソン、『Ⅱ』と『Ⅵ』ではスタジオ・テイク同様に27のメンバー2人、『Ⅳ』ではトゥールのジャスティン・チャンセラー、『Ⅴ』ではex-ゴッドフレッシュ~イェスーのジャスティン・K.ブロードリックが助力している。日本で披露されたのは、2004年の初来日時の渋谷O-West公演のアンコールの1回だけのようだが、ゲストと共に神通力を宿していくこの曲の変化だけでもアイシスの凄さは伝わるはずだ。

Isis スマッシング・マグでは、アイシスをこれまで熱心に取り上げてきた。2004年5月の初来日公演を始め、今では伝説の回とも謳われるコンヴァージ、マストドンと共に奇跡を起こしたEXTREME THE DOJO VOL.11、そして、07年1月に行われた4度目の来日公演。さらにはサン O)))やBorisとの共演で奇跡のソールドアウトを記録した09年の超轟音祭り、Leave Them All Beind(リーヴ・ゼム・オール・ビハインド)での貫禄のステージは、今でも印象に残っている。結果的に最後となった2010年3月の来日公演では、東京名古屋大阪の模様を全てカバー。06年に出演を果たしたフジロックは、フジロック・エキスプレスにてその雄姿を収めている。こちらも今回のライヴ音源同様にチェックしていただければ幸いだ。

 解散後、各メンバーは冒頭に述べたバンド/プロジェクト等で精力的に活動中。それぞれがアイシス以降を示す音楽を鳴らし、新たな地平を目指している。これからも5人の動向には注目していきたい。また、今後もライヴ音源と映像は、引き続きリリースされる可能性があるとのことで、期待は大きく膨らむ。アイシスというバンドの灯は、これから先も決して消える事はなく、燃え続ける。

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Photos:
Naoaki Okamura
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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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