シャーベッツ @ 赤坂ブリッツ 2012.04.13

ロックンロールで描く美しくも切ない世界
テキストレポート「ロックンロールで描く美しくも切ない世界」@ 赤坂ブリッツ 2012.04.13

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 雨の降る中、赤坂ブリッツを後にするとき、美しく、どこか切ない映画を見たあとの感動に満たされていた。オーケストラのような広がりを持ち、それでいてロックンロールの潔さをグレッチの音にのせて表現する浅井健一(ベンジー)が率いるシャーベッツのライブは、それ自体が一つの美しい作品としての輝きを放っている。

 ボーカル・ギターのベンジーを中心に、キーボード・コーラスの福士久美子、ベースの仲田憲市、ドラムの外村公俊の4人からなる現在のシャーベッツは、1998年から幾度かの休眠期間を挟みながら活動を継続してきた。昨年は7月に『FREE(フリー)』のリリース、フジロックでのフィールド・オブ・ヘブンへの登場と大きな動きを見せていた。今年に入ってからもその勢いは衰えることはなく、2月からは「Lux Fox Tour (ラックス・フォックス・ツアー) 2012 」を展開し、それと同時に2011年7月に行われたシャーベッツ復活ライヴを収めたDVD『タコス・オブ・ヘル(Tacos of Hell)』を発表している。2月の名古屋ダイアモンドホールからスタートしたこのツアーも、ついに東京赤坂ブリッツと大阪梅田クラブクアトロを残すのみとなった。

sherbets パーティーの始まりを心待ちにしているロックンロール・エンジェルスで埋め尽くされた赤坂ブリッツは、定刻を10分ほどすぎてから暗転し、マイルス・デイビスの「ラウンド・ミッドナイト」が厳かに流れる。シャーベッツのメンバーは、青いライトでかすかに照らされたステージの上に登場すると、無言のままそれぞれの楽器を手にする。張りつめた緊張感の中、彼らの演奏する1曲目はなんと「ロンドン・パンクス・ベル(London Punks Bell)」。仲田の叩くようなベースと外村の跳ねるようなドラムが織りなすタイトなリズムに合わせて、低音弦のリフを重ねてゆくベンジーのギターに、1曲目から会場は大いに揺れる。さらに、「Let’s party!」というベンジーのかけ声とともに「ハイスクール」のリフが流れると、会場に一気に火がつく。この曲では福士のサイドギターが、ベンジーの歌を支えていたのが印象的だ。

sherbets シャーベッツの持ち味のひとつでもあるサイケデリックな世界観が存分に発揮された「トライベッカホテル」では、福士のキーボードとベンジーのグレッチによるギターアルペジオが絡み合い、幻想的な空間を作り出していた。さらに「リディアとデイビット」と「これ以上言ってはいけない」では、ベンジーのボーカルと、それを追いかける福士の繊細なコーラスが美しく、これらの曲の物語性を大いに高めている。特に、「リディアとデイビット」では、曲の終わりに挿入されたピアノソロが胸に沁み、この幻想的な空間を生み出すのに福士のキーボードの果たす役割の大きさを改めて思い知らされる。

sherbets 中盤は叙情的な曲が続き、会場全体が聞き入っていた。「風の話」では、アコースティックなフレーバーのイントロから始まり、そこにドラムとベースを重ね、最後は全体で盛り上がってゆく展開から、静かな曲調の奥に隠されている衝動を感じる。また、緑色のライトの中で演奏された「はくせいのミンク」では、ベンジーのカッティングギターが冴えている。中盤に演奏された曲の中でもとくに「並木道」の描き出す情景は秀逸で、二人が腕を組んで並木道を歩いてゆく映像が目に浮かぶようだ。その情景に会場全体は夢の中にいるようなぼんやりとした感覚に包まれている。不要なものを排除した最小限のライティングが施されているにもかかわらず、会場全体が映像的かつ絵画的な雰囲気に包まれているのは、なんとも不思議な感覚を覚える。 

sherbets 叙情的な曲が続いた後は、「スーパー・トンガ・パーティー(Super Tonga Party)」を演奏。これで会場は一気に目を醒まさせられる。ここからは会場の中に溜まっていたエネルギーを一気に放出すべく、速いロックンロールを畳み掛けるように演奏し、「カミソリソング」と「シェイク・シェイク・モンキー・ビーチ」では、待ってましたとばかりに会場がモッシュとダイブの嵐になる。

sherbets メンバー紹介で「We are the Sherbets!」とベンジーが叫んだ後に演奏された「ブラック・ジェニー」は、この日の演奏の中で最も印象的だった。この曲は静かな回想と怒りにも似た激しい衝動で構成されているが、そこでは一貫してこの世界の不条理が情緒的に描写されている。さらにその描写を積み重ねてゆくことで最後には大きな衝動をロックンロールとして昇華させる。散り始めている桜、撃ち殺される小鳥たち、人生の短さを教えてくれる綺麗な夢といった、失われてしまったもの、損なわれてしまったものに対する思い。「世界を動かしているのは、愛だと言おう」「楽しい事ばかりを考えなくちゃ」と叫ぶベンジーの言葉に、切なさで思わず涙しそうになった。

 アンコールでの3曲中、最も盛り上がりを見せたのは「ジョーン・ジェットの犬(Joan Jett’s Dog)」だ。タイトなリズム隊、それに重なるベンジーのギターと福士のキーボードのアンサンブルに、ロックンロールバンドとしてのシャーベッツの一つの到達点を見る。最後は、ベンジーがギターを黒のストラトキャスターに持ち替えて「小さな花」を演奏。全20曲、2時間強のステージだった。

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 グレイテストヒッツとも言えるセットリストもさることながら、フラッシュライトの中、激しいロックンロールギターをかき鳴らすベンジーと、控えめなライトの中、言葉と音で情景を描いてゆくシャーベッツのコントラストがとても印象的な構成のステージだった。孤高のロックンロール・スター、ベンジー率いるシャーベッツは、今現在、バンドとして本当に良い状態にあり、さらに進化し続けていることがひしひしと伝わってくる。今後、さらに熟成と深みを増しながら研ぎすまされてゆくであろうシャーベッツがどんな世界を描いてくれるのか楽しみだ。

— set list —
London Punks Bell / ハイスクール / タクシードライバー / 未来のマシン / トライベッカホテル / リディアとデイビット / Neighbourhood Funky Special / これ以上言ってはいけない / 風の話 / はくせいのミンク / 並木道 / カリフォルニアドリーミング / チャームポイント / Super Tonga Party / カミソリソング / シェイクシェイクモンキービーチ / Black Jenny

— encore —
Rainbow Surfer / Joan Jett’s Dog / 小さな花

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Photos:
Julen Esteban-Pretel
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Text:
Ryuichi Tanaka
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