あがた森魚 @ 米子ワンメイク 2012.09.11

あがた森魚はジャンルであり、世界です
フォト・レポート @ 米子ワンメイク 2012.09.11

あがた森魚
あがた森魚
あがた森魚
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あがた森魚

 林静一によるイラストが美しい、観音開きのジャケットが珍しかったあがた森魚のデビュー・アルバム『乙女の儚夢』は今も自宅のレコード棚にある。それと一緒に肩を並べてずっと居座っているのは、続いて発表された名作『噫無情(レ・ミゼラブル)』や『日本少年‐ヂパング・ボーイ』といったLPの数々。この2枚も発売当時に購入したオリジナルで、後者におまけとして封入されていた『双六世界地図』をなくしたものの、この3枚は30数年にわたって筆者の人生と共にあった宝物のようなアルバムだ。

 なんでもあがた森魚がデビューして40周年… ということは、このアルバムを買ったのが40年近くも前のことかと、あの頃からずいぶんと老けてしまった自分を再認識することになるのだ。が、それでも、一連のアルバムからあふれ出るあがた森魚の世界が色あせるどころか、ますます輝きを増しているのはなぜなんだろう。

 あの当時、ムーンライダースの前身、はちみつぱいをバックにしたライヴを幾度も見ていた。80年代に入ってテクノ的な方向性を打ち出した頃からしばらく疎遠になるのだが、再びあがた森魚に揺り戻されたのは今世紀に入ってからだろうか。節目節目のライヴを見ながら、また惹きつけられていった。そんななか、ここ数年で最も感激したのが還暦を記念しての全国縦断ツアーを終えて集大成のような形で開催された09年2月の九段会館ライヴ。圧倒的だった。このときの模様を収録したDVD『あがた森魚とZIPANG BOYZ號の一夜 惑星漂流60周in東京』も宝物となっている。その他、名盤『噫無情(レ・ミゼラブル)』を再現したライヴなど、数々のあがた森魚体験があるのだが、なぜか『弾き語り』によるライヴは未知だった。

 会場は米子にあるワンメイク。踊ろうマチルダのアルバム『故郷の空』のジャケットが撮影されたライブハウスだった。わずか60万人と全国で最も人口の少ない地方自治体にある地方都市となれば、数多くの人が集まってくることはないだろうと想像したとおり、20人ほどのオーディエンス。彼らの前にあがた森魚がアコースティック・ギターを抱えて姿を見せる。時にはステージから降りてマイクなしで歌ってみたり、あるいは、客に背を向けてピアノを弾きながら歌うという、なにやらシュールな光景もあった。が、そこにいたのはこれまでバンドをバックで見てきたのと同じあがた森魚だった。

 彼自身が監督をした最初の映画作品『僕は天使ぢゃないよ』のテーマ曲に「冬のサナトリウム」から「サルビアの花」へと、興味深いMCを挟みながらライヴが進んでいくんだが、歌が始まると歌の向こうから、アルバムで聞き慣れた音が広がっていく。面白いのは、この日初めて聴くことになった「キューポラ・ノワールの街」とて同じこと。実を言えば、曲名もはっきりせず、『俺の知らない内田裕也は 俺の知ってる宇宙の夕焼け』の巻頭を飾る歌だというのは、後で調べてわかったんだが、まだ聴いてもいないこの曲からも現実にはその場にない音までが聞こえてきたように思えてならない。

 いつだったか、あがた森魚は「まるで金太郎飴」と記したことがある。いわゆるフォークに始まり、テクノに走った、あるいは、タンゴに染まり、アフリカにも向かったと言われるスタイルの変遷を振り返っての言葉なのだが、どこを切り取ってもあがた森魚という音楽でしかあり得ないという結論に達してしまうということを意味する。すでに、あがた森魚はジャンルであり、世界なんだろう。しかも、驚かされるのは、デビューから40年で年老うどころか、逆に今の方が遙かに自由奔放にとてつもないオーラを放っていること。なにやら今こそが全盛期だと言わんばかりのあがた森魚がまぶしいぐらいに輝いて見えるのだ。

 お馴染みの「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」から、昔からのファンには嬉しい「赤色エレジー」や「大寒町」など、新旧織り交ぜながらの1時間半ほどだろうか、オーディエンスどころかライブハウスを「あがた森魚色」に染め上げてライヴの幕が閉じていた。そして、お客さんたちとの打ち上げで語り合う。ひょっとしたら、地方の小さな町だからこうなるのかもしれないんだが、全国を走り抜けた還暦ツアーのドキュメント『あがた森魚 ややデラックス』を見る限り、どこの町でも同じなんだろう。それもまた実に楽しく、米子の夜は更けていったのです。

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