アルセスト (Alcest) & ヴァンピリア(Vampillia) @ 名古屋今池スリースター 2012.09.28

光、郷愁、感動。
テキスト・レポート「光、郷愁、感動。」@ 名古屋今池スリースター 2012.09.28

 フランスのブラックメタル・シーンを出自に、ポストロックやシューゲイザーと結びついた独特の感性を持った美しいサウンドが、世界各地で称賛されているAlcest(アルセスト)。大傑作の1stアルバム『Souvenirs d’Un Autre Monde(スーヴェニール・ダン・オートレ・モンデ)』で注目を集めて早5年、ついに彼等が日本の地に降り立った。今回の初来日は、関西を拠点に活動する奇才集団のVampillia(ヴァンピリア)とまわる東名阪ツアー。その名古屋公演を追った。

 予定の開演時間から約30分遅れ、まずはVampillia(ヴァンピリア)が登場。デス声担当とオペラ歌唱がそれぞれいて、ギター、ベース、キーボード、ストリングス、パーカッション、そしてあの吉田達也と竜巻太郎(NICE VIEW、TURTLE ISLANDなど)がツイン・ドラムを務める関西の男女混合の大所帯バンドである(日によって編成は違うが、名古屋公演は9人編成)。

 ”関西のブルータル・オーケストラ”とも評されるその音楽は、国内外問わずにじわじわと広がりを見せており、昨年1月にリリースされた元スワンズのジャーボーとメルツバウが参加する『Alchemic Heart(アルケミック・ハート)』は、アメリカの音楽メディアのピッチフォークで8.0という高評価を獲得。また、今回のアルセストの招聘を始めとして、元スワンズのジャーボー、マット・エリオット、ナジャなど、実現が難しいとされてきた来日公演を次々と実現してきた”いいにおい”シリーズの首謀者でもある。また当サイト絡みでいえば、毎年、特集を組んでいるSXSWに2011年、2012年と連続出演を果たしている(残念ながら取材記録はない)。

 そんな彼等、ライヴだとポストロックのように静と動を重んじている印象は強い。だが、普遍的なロックからノイズ~ブラックメタルにまで振りきれてジャンルという境界線を軽々と超え、さらにはオーケストラを思わせる迫力で圧倒。僕は定期的にこのいいにおいシリーズに足を運んでいるので、何度かヴァンピリアを目撃しているが、まるでジェットコースターに乗っているかのような興奮の連続をいつも味あわせてくれる。もちろん、今日のライヴでもだ。今年7月に発表したアッティラ(メイヘム、サンO)))などに参加のヴォーカリスト)とのコラボ楽曲「Dottrue(ドットトゥルー)」や前述した『Alchemic Heart』から「Sea(シー)」のアレンジ・バージョンなどを披露するなど盛りだくさんの内容で、過去最長セット(約50分)を終えた。なお彼等は、10月7日に大阪で撃鉄を迎えての無料ライヴを敢行予定。詳細はこちらから。

 そして、転換中に流れていたスロウダイヴの2ndアルバム『スーブラク』に耳を傾けながら待つこと約30分。いよいよアルセストのライヴである。「Autre Temps」のイントロが流れる中で、中心人物のネージュを含めた4人が次々とステージに登場し、同曲をそのまま演奏開始。桃源郷へと誘うような旋律とネージュの柔らかな歌声が響き渡り、会場を包み込んでいく。続けて1stアルバムからの「Les Iris」を披露。ブラックメタル風の疾走パートを盛り込みながらも、儚くロマンティックに彩られていくこの楽曲でもメロディが際立っており、胸は強く締め付けられる。

 壮美な風景が浮かぶような、また妖精が弄れるような世界が広がるような、美しく幻想的なサウンド。「別世界の音楽」「天上の音楽」といった言葉で表現されたりもするアルセストの音楽だが、ライヴでもその印象は強い。トレモロやノイジーなギター、また金切り声の絶叫等でブラック・メタルの要素はほんのりと残してはいる(メンバーの容姿もメタルのそれっぽい)。けれども、ネージュ自身の幼少の頃の神秘的体験を源に、豊かな感性と美意識から生み出される楽曲は、やはり叙情的で温かい。

 今回は、2012年初頭にリリースされた3rdアルバム『Les Voyages De L’ame(レ・ヴォヤージュ・ドゥ・ラーム)』に伴ったツアーではあるが、1st~2ndアルバムからもバランスよく選曲(再発もされた人気の初期EP『Le Secret(ル・スクレ)』からの演奏はナシ)。ちなみに歌はフランス語だが、MCは英語でこなしていた。また、「Les Voyages De L’ame」の演奏後には「アリガトウゴザイマス」と日本語で挨拶もあり。

 ライヴは中盤で演奏した木漏れ日のように温かい「Printemps Émeraude」に個人的にかなりグッときたし、ブラックメタルの狂性と美しいメロディが絶妙に融和する「Percées de Lumière」では、大きな歓声とヘッドバンギングで湧いた。この曲の冒頭ではドラマーがタバコを吸いながら叩くという微笑ましい場面も見受けられた。そして、本編ラストは「Summer’s Glory」で、別世界から差し込んできたかのような光と多幸感で会場を包み込んだ。

 その後のアンコールでは、初めて日本へ来れたことへの喜びと感謝を述べ、1stアルバムに収録されている大名曲「Souvenirs d’un autre monde」を演奏。繊細で優しい歌声、郷愁のメロディが涙腺をゆるめるクライマックスは本当に見事であった。そして、再び会場から沸き起こる大きな拍手と歓声。約75分にも及ぶライヴは、待ち焦がれていた日本のファンに大きな感動をもたらしたのであった。主催からは、近い将来、アイスランド録音の新作をひっさげてかえってくるとのコメントもあり。再びの来日を待ちたい。

— set list —
Autre Temps / Les Iris / Les Voyages De L’Ame / La Ou Naissent Les Couleurs Nouvelles / Écailles de Lune – Part 1 / Printemps Émeraude / Percées de Lumière / Summer’s Glory

— encore —
Souvenirs d’un autre monde

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Text:
Takuya Ito
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