リーヴ・ゼム・オール・ビハインド(leave them all behind 2012) DAY.1 @ 代官山ユニット 2012.11.03

地獄から天国までもを貫く轟音の祭典
テキスト・レポート「地獄から天国までもを貫く轟音の祭典」@ 代官山ユニット 2012.11.03

Sunn

 数多の人々を歓喜させた開催発表から早4ヵ月。先月には主催者インタビューをお届けした”轟美重音”を謳うフェスティバル「リーヴ・ゼム・オール・ビハインド(leave them all behind) 」の第3回目がついに開催された。アイシス(Isis)やサンO)))(SUNN O))))を要し、国内外総勢5組が名を連ねた2009年4月の第1回を上回る、”初の2日間開催”と過去最大規模で迫る今回。当然ながら垂涎もののラインナップが両日に揃う。初日は、世界を震撼させ続けるヘヴィ・ドローンの暗黒神サンO)))をヘッドライナーに迎え、同じく海外からはチェルシー・ウルフ(Chelsea Wolfe)、日本からはボリス(Boris)と朝生愛の4組が名を連ねた。

Boris
 第1回に引き続いて前売り券は完売を記録し、若干数のみ発売された当日券も早々と無くなるなど超満員に膨れ上がった今宵の代官山ユニット。定刻の16時30分、まずは3回連続出演となるボリス(Boris)がトップバッターとして登場。いつも通りに栗原ミチオを加えた4人編成だが、今回は、2000年に発表した70分にも及ぶ超大作『フラッド(flood)』を演奏する(ちなみに完全再現ではない)。本フェスに第1回から皆勤となる彼等から送られる大きなサプライズだ。

 出てくるなり大きな声援を浴びるもいつも通りにクールな面持ちで、集中力を漲らせて演奏を開始。作品は全4パート70分に及ぶのだが、本日は”パート1”のイントロ部を思いっきり省略して、セッションっぽいパートからいきなりの轟音が会場を揺らす。そして、”パート2”における哀愁のギターが寄せては返し、大らかに包み込んでいく。美しい旋律としんみりと響く歌、それからサイケデリックな音色と独特の情緒をふくらませ、終盤では怒涛の轟音の洪水がこの”轟美重音”を謳うフェスのスペシャルなスタートを高らかに告げていた。演奏は約40分ほどだったが、栗原ミチオが加わって今のボリスで表現する新しい『フラッド(flood)』になっていたと言えるかもしれない。そして、ステージを去る際の「どうもありがとう」というアツオの最後の言葉が、なんとも温く響くステージであった。

Chelsea Wolfe ゴシックかつミステリアスな音像と物憂げな歌声を武器に、欧米で高評価を受ける話題の女性SSW、チェルシー・ウルフが2番手に登場。ライヴ・メンバーの男性3名を従え、中央に凛と佇む彼女が独特の磁場を序盤から広げ、そこへ引きずり込んでいく。底が見えない暗さと切なさを孕むサウンド、意識下に訴えかけるような彼女の歌声。これには、背筋をゾクッとさせられる事が多々あった。また、ゴシック・フォークとしての趣が強かったスタジオ音源と比べると、ライヴではドラムを中心にバンドとしての演奏と迫力が押し出されていて、印象がまた違う。「ディーモンズ」では特にその強さや勢いを感じさせたし、「モーゼス」や「トラックス」などポーティスヘッドも引き合いに出されることも納得の深い闇が広がっていた。セットは前述の曲を含めて2ndアルバムの『アポカリプシス』を中心に進行。世界から賞賛される彼女のステージを約50分、十分に堪能することができた。

Ai Aso 続いて、本日トリを務めるサン O)))の10台以上にも及ぶアンプの要塞を背にして、朝生愛のステージは始まる。ゆらゆら帝国のチームである面々と親交が深いという女性SSWで、ギターとシンセサイザーを用いての柔らかな歌ものを披露。これまでとは打って変わって、周りのざわつきが耳に届くほどに音量は最小へと切り替わる。優しさを伴って伝わってくる歌とメロディには、耳も体も自然と癒されるようだった。一時の安らぎ、嵐の前の静けさ。2日間を通したフェスの中でも、彼女は異質な存在感を発揮することとなった。ちなみにここまで、事前に発表されたタイムテーブルよりも少し早いペースできっちりと進行。このスムーズな転換もまた素晴らしかった。

Sunn
 そして、音量は最小から最大へ。21時からはお待ちかねのサンO)))がついに登場。こんなにも彼等を待っている人がいたのか!?と驚くほどの大きな歓声に迎えられる、と同時に緊張感は高まり、大きく膨らんだ期待は、要塞の如きアンプから放たれた音に包まれた瞬間に確信へと変わる。暗すぎる照明、視界を遮るほどのスモークの中、黒装束を身にまとったグレッグ・アンダーソンとスティーヴン・オマリーの尋常ではない轟音ギターで会場を制圧。また、ムーグ奏者のトス・ニューウェンフイゼンの参加で、さらなる迫力とおぞましさを加味。代官山ユニットはその圧倒的な音圧によって揺れ続ける。

 そんな中でステージの方を目を凝らして見てみると、グレッグとスティーヴンの2人は結構な頻度でギターを掲げてアピールしていたし、ワインを飲み回していたのには驚いた人も多かったようだ。45分から50分を過ぎた辺りで、メイヘム等で活躍してきたヴォーカリストのアッティラ・チハーがようやく登場し、独特の歌唱法でこの暗黒儀式を加速させる。地の底から魔物でも召喚しようとせんその歌唱に加え、さらにはレーザーポインターを振り回す怪パフォーマンスが繰り広げられた。

 「本公演は非常に大きな音量で行われます。可聴範囲を超える低音も多く出ます」と会場の至る所に注意書きが貼られていたが、この現場体験こそがサン O)))のライヴの醍醐味。第1回のリーヴ・ゼム・オール・ビハインド以来2度目の体験となった自分としても、危険を感じずにはいられない瞬間も多々あった。だが、永続的な振動とともに時空が歪み、別世界にでも連れていかれたようなこの感覚は、たまらないものだった。時間にして約95分。終わってみれば、彼等のライヴが唯一無二の体験であるということを改めて思い知らされたのであった。

 そして、物語は明日へと引き継がれる。

——setlist——

-Boris-
performing “flood”

-Chelsea Wolfe-
Movie Screen / Demons / Mer / Tracks (Tall Bodies) / Noorus / Kings / Moses / Feral Love / Ancest /Pale On Pale

-朝生愛-
Agenda / カミツレの大きな水たまり / Most Children Do / なつめやし /
知らないコルチカム / Komish /ランド

Sunn
Photo by Miki Matsushima

–>leave them all behind 2012 DAY2

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Photos:
Official Photographer


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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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