セルソ・ピーニャ(Celso Piña) @ MACC (メキシカン・アメリカン・カルチュラル・センター) in サウス・バイ・サウスウエスト 2013.03.15

アメリカで叫ばれたメキシコの誇り
テキスト・レポート – セルソ・ピーニャ @ MACC in サウスバイ・サウスウェスト 2013.03.15

Celso Piña

 クンビアにはまったなら、避けては通れない御大がセルソ・ピーニャだ。クンビアが生まれたコロンビアの人間ではないが、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した映画『バベル』にて、アメリカ/メキシコ国境を越えるシーンで流れた、”クンビア・ソブレ・エル・リオ”は聴いたことのある人も多いはずだ。

 セルソ・ピーニャが出演した「メキシカン・アメリカン文化センター(MACC)」は、メキシコ系アメリカ人の集いの場。テキサスにスペイン語話者が数多くいたりと、メキシコとの縁そのものが深いこともあるだろう。SXSWのオフィシャル・ショウケースは、どこもかしこもパスとリストバンドありきだ。「パン・アメリカーナ(※中南米を含めた「全米」)SXSWフリー・ショウ」は、読んで字のごとく、何もいらない無料のイベントだった。入り口では、「パスなどどうでもいいが、危険物のチェックはさせてもらう」とのことだった。

Celso Piña 入ってみると、まるで国境でも超えたかのようだった。まったくと言っていいほど英語が聞こえてこず、アメリカ(以下、アメリカ合衆国を指す)のマッチョな能天気さとは違った、妖しくも陽気な雰囲気で満たされている。「アレを巻いた」匂いも漂っており、治外法権の場かと思うほどだった。観客は目測で4000人はいただろうが、ギチギチに詰めているわけではなく、それぞれが踊れるスペースを十分にとっており、一人で回りながら踊る者、男女ペアになり絡み合って踊る者、実に様々な楽しみ方が存在していた。日本では、老若男女、まんべんなく集まって踊りまくる光景はあまり見ることがない。

 大柄なドラムがぶれないビートを叩きつつ、打ってすぐミュートしたりときめ細かなテクニックで魅せ、ベースは無表情ながら堅実に土台を固めていく。緩急を使い分けるギターに、MC担当の叫びとラップが乗る。2/4拍子のリズムが絶えず下から突きあげ、ピーニャのアコーディオンが舞う。

Celso Piña 白いヒゲをたくわえた主役の魅力はそれだけではない。歌い手としても一流だ。ひとたび喉を鳴らせば艶があり、濡れた声が響きわたる。さらに、ことあるごとに両手を広げたり、あいの手や猿のような叫び声、笑い声を発したりと、「煽り」のスペシャリストでもあった。バンドの家族であろう女性たちもこぞってステージへと上がっては踊り、「ショウケース」というよりは、さながら「祭り」のようだった。そんな祭りは、「偉大なるメキシコ」を体感させてくれた。面白かったのは、ピーニャが放ったMCと、それに対する観客の反応だ。

「オースティン!(イェー!) アメリカァ? (ブーッ!) モンテレイ!(イェーッ!) メヒコー!(ウォォォォ!)」

「モンテレイ」とはピーニャの拠点だ。さらに、

「リベルタ、メヒコ!(調和ある自由の国、メキシコ!)」

 この言葉には、ひときわ大きな歓声があがっていた。会場にいる大多数のメキシカンの誇りが、真に迫ってきた。ラテンアメリカ、とりわけメキシコの人たちにとっては大きな存在だ。ピーニャにとってのアメリカは、「気に入らない隣国」だが、アメリカの中で生きるメキシカンの感情をくむライヴを見事に打ち上げ、ピークのままに幕を閉じたのだった。

Celso Piña

–>セルソ・ピーニャ(フォト・レポート)

–>ジ・エナミー

Share on Facebook

Information

Photos:
Taiki "tiki" Nishino
taiki@smashingmag.com
Facebook
Taiki "tiki" Nishino's Works

Text:
Taiki "tiki" Nishino
taiki@smashingmag.com
Facebook
Taiki "tiki" Nishino's Works

Write a comment