チェルシー・ライト・ムーヴィング (Chelsea Light Moving) @ ウォータールー・レコーズ in サウス・バイ・サウスウエスト 2013.03.13

果てなき探求
テキスト・レポート – チェルシー・ライト・ムーヴィング @ ウォータールー・レコーズ in サウスバイ・サウスウェスト 2013.03.13

チェルシー・ライト・ムーヴィング

 サウスバイ・サウスウェスト(以下SXSW)2日目、昼の11時半過ぎにホテルを出て、歩いて会場へと向かう。ビジネスビルディングが立ち並ぶ、コングレス・アヴェニューから6THストリートへ入り、ひたすら西へ歩く。6THストリートは、SXSWのメインストリートと有名な通りだが、昨晩の喧騒が嘘だったかのように人が少ない。それでも、通り沿いに立ち並ぶレストラン、バー、クラブから音が漏れ聴こえてくる。SXSWの期間中、昼間(11:00~17:00まで)は、デイ・パーティーと呼ばれるショウケースが街の至るところで開催されている。そのほとんどが非公式で、無料で入場可能だ。流れてくる興味深い音やメロディに、つい足をとめそうになるが、少し足を速めないといけない。現在活動休止中であるソニック・ユースのフロントマン、サーストン・ムーアによる新バンド、チェルシー・ライト・ムーヴィングのライヴがもうすぐはじまるのだから。

 今回、チェルシー・ライト・ムーヴィングが出演するのは、ウォータールー・レコーズという、オースティンで有名な老舗レコード店主催のパーティーだ。このパーティーは、例年出演者のメンツが素晴らしく、注目株のフィドラーやオルト-J、トゥエンティ・ワン・パイロッツ、更には、ビリー・ブラッグやザ・ゾンビーズといった大御所まで、観ておくべき顔ぶれがそろっている。今年も、足しげく通うことになった。

チェルシー・ライト・ムーヴィング 12時をまわったころ、ようやく会場に到着した。レコード店外の駐車場特設屋外ステージの前で、オーディエンスがビールを片手にゆったりとバンドの登場を待っている。空に雲ひとつなく、日差しが強く、暑い。まさしく絵に描いたようなフェス日和で、会場はピースフルなムードであふれている。
 
 ウォータールー・レコーズの名物オーナー、ジョン・クンツが、ステージでバンド紹介のアナウンスをすると、くつろいだ出で立ちのバンドが登場。待ち望んでいたオーディエンスから、大きな歓声が飛ぶ。「俺たちは新しいバンドだけど、SXSWに出演している他の多くのバンドと違って契約済みなんだ。もちろん、ミスター・ティンバーレイク(ジャスティン・ティンバーレイク)と、プリンスも契約済みだよ!」と冗談を飛ばすサーストン。「でも、ここでプレイできて嬉しいよ」と微笑み、変則チューニングのギターフレーズを奏ではじめた。

「スリーピング・ウェア・アイ・フォール」だ。ラフにきざまれるギターリフ、不満げなメロディにのせて歌が気だるく響けば、それまで陽気だった場の空気が一変する。「Too fucking bad!(トゥー・ファッキン・バッド)」とがなりたてる、パンキッシュな「リップ」が飛び出せば、オーディエンス側は更に熱が入ってくる。フィジカルにではなく、あくまでエモーショナルに、鬼気迫る音の洪水は、我々の内側に浸水し、耳目からあふれ出て、その場を唯一無二の世界に一瞬で変えてしまうほどの破壊力を持つ。ブラック・フラッグを思わせる「バロウズ」や、大人しめのギターフレーズから疾走するリフへの緩急が心地よい「エンパイアズ・オブ・タイムズ」のような曲を聴いていると、サーストンによる第二の”初期衝動”というキーワードが浮かんでくる。

チェルシー・ライト・ムーヴィング 個人的には『コンフュージョン・イズ・セックス』や、『エヴォル』のような、SST時代の初期ソニック・ユースを随所に感じてしまう。「フランク・オハラ・ヒット」の間奏部の、フォーク・サイケを奏でるハッシュ・アーボーズ(Hush Arbors)のリーダー、キース・ウッズと、サーストンによる耳をつんざくような、怒涛のギターノイズの協奏は凄まじいものがある。グランジ全盛期の時代を思わせる、虚無感と暴力性がここに生々しく存在している。新曲として紹介し、演奏した「ノー・ゴー」で、約40分の爆裂ディストーション&ノイズギターにまみれた怒涛のステージの幕がおりた。
 
 サーストン・ムーアは、どうやら今でも純粋に自分の音を探求し、表現しているようだ。ソニック・ユースの活動休止は、公私ともに長年にわたりパートナーであったキム・ゴードンとの離婚に原因ありだとの噂があるが、実際のところは、サーストンが単に自分の音を追い求めた結果ではないか。そのトレードマークのフェンダー・ジャズマスターで一心不乱にノイズをかき鳴らす様を観て改めてそう思わされた。サーストンには、死ぬその日まで、音に対する果てしなき探求の旅を続けて欲しい。そして、その旅路は、我々に表現することに対する勇気と感動を与えてくれるのだから。

Text by Takafumi Miura

チェルシー・ライト・ムーヴィング

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