ウィリー・ムーン (Willy Moon) @ ラティチュード・サーティー in サウス・バイ・サウスウエスト 2013.03.12

若き男、ウィリー・ムーンの青い咆哮
テキスト・レポート「若き男、ウィリー・ムーンの青い咆哮」@ ラティチュード・サーティー in サウスバイ・サウスウェスト 2013.03.12

ウィリー・ムーン

 昨年に引続き、今年もオースティンに戻って来た。目的はもちろん、6日間に渡りこのオースティンという町全体がライヴ会場と化すフェス、サウスバイ・サウスウェスト(SXSW)に参加するためだ。今年で3回目の参加となるが、期間中にネットはもちろんのこと、町の至るところで出演者に関する様々な情報、噂が飛び交いまくり、大物のシークレットギグがどこぞかでいきなり行われたりする。お決まりや定型無視の何が起こるかわからない混沌とした現場、そこがSXSWの他では味わえない唯一無二の魅力で、疲れるけれどクセになってしまうフェスだ。今年はウィリー・ムーンからスタートだ。1年ぶりのSXSW1発目というだけで、ただただ嬉しく、気分がハイなってしまうのを禁じえない。

 ウィリー・ムーンは、昨年、「イェー・イェー」がアップル社のiPodのCMに起用されたことから巷で評判になっている男だ。そう、ビートに合わせてiPodが弾み、分裂するあの曲だ。

 ニュージーランドで育ち、現在はロンドンを拠点に活動している23歳のこの若き男、その音楽的ベースはエルヴィスのロカビリー、ボ・ディドリーのジャングル・ビートなど、1950~60年代のロックンロールにあると言ってまず間違いない。そのベースの上に今の連中がノリやすいようにヒップホップ・ビートのスパイスをふりかけ、いい具合に混ぜ合わせたような音が特徴的だ。その音といい、スタンス、外見といい、個人的にはかのジミー・レイに非常に近いものを感じる。いつの時代も若者は古き良き時代のロックンロールに憧れを抱き、それぞれの時代のマナーでリバイバルさせ、それを嬉々と表現しているということなのだろう。

ウィリー・ムーン 今回のライヴ会場、ラティテュード・サーティーという小さな立ち飲みスタイルのバーに到着したのはちょうど開演予定時刻ぎりぎりの時間だった。まだSXSWも初日だからだろうか、客入りが異様に少ない。おかげで容易にステージの目の前を陣取ることができた。
 
 しかし開演予定時刻を過ぎてもセッティングが終わらず、なかなか始まらない。その後更に十数分間セッティングを入念に行った上でようやく、ウィリー・ムーンとそのバンドが登場した。バンド編成はシンプルそのもので、ボーカルのウィリーと、ギター、ドラムの3人のみ。ライヴではあくまでピュアなロックンロールを届けたいという意気込みが感じられるようで微笑ましいかぎりだ。

 リトル・ウィリー・ジョンのカバー曲、「シェイキン」からショウは始まった(ちなみに、リトル・ウィリー・ジョンのオリジナル曲名は「アイム・シェイキン」)。ウィリーはのっけからエルヴィス並みに腰をくねらせ、吼える。この曲といい、その佇まいといい、本当に今は2013年なのかと錯覚に陥ってしまう。そのままキャッチーでサーフロック調のメロディに軽快な電子音が絡む「シー・ラヴズ・ミー」へと流れ、この出だし2曲でフロアは大いに沸き、ひとまずつかみはOKだ。照明が控えめな赤色に変わり、太いビートが特徴的な「ワーキング・フォー・ザ・カンパニー」から「ファイアー」と、出だし2曲とは対象的な暗めでヘヴィな質感の曲が立て続けに披露された。

ウィリー・ムーン それにしても1曲が短い。3分にも満たないような曲がほとんどではないだろうか。実に爽快だ。ウィリー自身「最も面白いことは最初の2分の間に起きるものさ」と語っており、曲の短さに対する強いこだわりがうかがえるというもの。要は2、3分でロックできなきゃ駄目ってわけだ。
 
 ヒップホップのヴァイブを強く感じる「レイルロード・トラック」、哀愁漂う「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」といった曲に続いて、「イェー・イェー」が投下された。人をダンスさせるために生まれたようなこの曲、フロアは盛り上がるに決まっている。ただ、個人的な欲を言わせてもらうとしたら、ライヴではオケをバックに流して音源の再現を試みるのではなく、そのシンプルなバンド編成を活かしたストレートなロックンロールスタイルで聴かせてほしかった。

 スローテンポでブルージーなロックンロールナンバー、「ホワット・アイ・ウォント」、ボ・ディドリー直系の「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」、パワーポップ調の「マイ・ガール」のグルーヴィーで楽しい3連チャンはウィリーの十八番と言える場面だ。ウィリーは、マイクを咥えるわ、フロアに転がるわで、これにはもちろん客もノリノリだ。ラストの「マイ・ガール」を終え、トータル約20数分でステージを降りた。

 今回初見であったこの若き男、ウィリー・ムーンとその一行のライヴは、正直なところ音響やアレンジ、演奏力、ショウマンシップなど、色々な面でまだまだ青臭さを感じるところが多かった。だが、その荒削りで初期衝動あふれる勢いというものは今しか体験できないものだ。それを体験できただけで十分に満足のいくライヴだった。

このSXSWの期間中に予定されていた複数回のステージをこなしていく中で、きっと勘所をつかみとり、自らの糧としてくれたことだろう。SXSWはウィリーのような若手のアーティストにとって、経験を積み、ワールドワイドにアピールしていく上でまさに格好の舞台なのだ。
もうすぐ、日本ではユニバーサル・ミュージック・ジャパンからデビュー・アルバム『ヒァズ・ウィリー・ムーン』がリリースされる。また、つい先日今年のサマー・ソニックへの出演が決定したばかりだ。今年は何かとウィリー・ムーンから目が離せない。

Text by Takafumi Miura

- set list -
Shakin’/She Loves Me/Working For The Company/Fire/Railroad Track/I Put A Spell On You/Yeah Yeah/What I Want/I Wanna Be Your Man/My Girl

ウィリー・ムーン

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