サウスバイ・サウス・ウェスト2013 @ オースティン、TX 2013.03.12 -16

イントロ – 音楽、愛してる? ホントに、音楽って大切なの? SXSWは問いかける。
特集:イントロ – 「音楽、愛してる? ホントに、音楽って大切なの? SXSWは問いかける。」サウスバイ・サウス・ウェスト2013 @ オースティン、TX 2013.03.12 -16

Austin-Bergstrom International Airport

 テキサス州オースティンのバーグストロム国際空港にたどり着いて手荷物を受け取りに行くと、巨大なギターのオブジェの数々が目に入ってくる。「今年もやってきたなぁ」と、SXSW(サウスバイ・サウスウェスト)の幕開けを実感するのがこの瞬間だ。思うに、これが『The Live Music Capital of the World(ライヴ・ミュージックの都)』へのゲートなんだろう。

 3月半ばにここをくぐり抜けていくのはさまざまな楽器を手に世界中から集まってきた無数のミュージシャンたち。さらには、撮影機材を手にした写真家やジャーナリストに業界関係者から、もちろん、ライヴを楽しみにやってきた音楽ファンがいる。彼らが目指すのはダウンタウンの中心にあるコンヴェンション・センター。まずはここで登録を済ませ、バッジと呼ばれるパスやチケット、あるいは、リスト・バンドを受け取ってとっぷりと音楽三昧の日々に突入することになる。

The Austin Convention Center 音楽に関わるさまざまなハード&ソフトウェアの見本市が開催され、セミナーからレクチャー、討論会も開かれているのがこの巨大な建物。同時に、ラジオやテレビ、ネット中継も駆使したライヴ演奏やプロモーションがひっきりなしに展開し、数多くのクラブが集まる6番街を中心に、文字通り、無数とも思えるショーケースがいたるところで繰り広げられることになる。これまで幾度もお伝えしてきたように、公式プログラムに掲載されているもののみならず、非公式なパーティやライヴ、野外コンサートも数え切れない。さらに、中心地域がホコ天として開放されていることもあり、通りのど真ん中から街角、店の軒先などにミュージシャンが出没して演奏。夜ともなれば、6番街が人で埋め尽くされて、騒音規制が始まる深夜2時まで完全なお祭り騒ぎとなるのだ。実に、街中が踊りだすと言っていいだろう。

 このSXSWが『ライヴ・ミュージックの都』と呼ばれるオースティンの象徴なんだろう。実際、この街が公式にそう呼ばれるようになったのはSXSWが動き始めた数年後のこと。それでも、ここはずっと昔から音楽の街だったという歴史があることを忘れてはいけない。ドイツ系移民が多かったことから、すでに19世紀終わりにビアホールが姿を見せ、そこで音楽が演奏されていたとか。戦前からカントリー系のクラブが乱立し、有色人種の多かった東側ではブルースの巨人が演奏していたクラブも多かったという。無名時代のジャニス・ジョプリンが演奏していたのもそういったクラブだった。

W.C. Clark(2009) 実を言えば、数年前に『日頃のオースティン』体験を求めて、オフシーズンにやってきているんだが、『ライヴ・ミュージックの都』という看板に偽りのないことを思い知らされたのがこの時だった。カントリー系の老舗クラブ、ブロークン・スポークでは10枚以上のアルバムを発表していたカントリー・シンガー、デイル・ワトソンがダンス・パーティで演奏し、最近噂のギャリー・クラークJrの叔父で、テキサス・ブルースの巨人、W.C.クラークがザ・サクソン・パブでラジオ中継ライヴをしていたり… 6番街を歩いていると四方八方から耳に入ってくるのはライヴの音。バーベキューでも食べようかとレストランに入ると小さなステージで演奏しているバンドがいる。まさにどこでも生演奏を楽しめるのだ。しかも、たまたまハロウィンの時期だったというので、SXSWと変わらない6番街でのお祭り騒ぎに巻き込まれるというおまけも付いていた。

「なにより、僕らは音楽を愛しているんだよ」

 残念なことに、昨年8月、51歳の若さで急逝したSXSWの中心人物のひとり、ブレント・ゲルケ氏に話を伺ったときに印象に残ったのはそんな言葉だった。

「デトロイトにモータウンがあって、メンフィスにはサンやスタックス、アラバマにはマッスルショールズ…でも、オースティンと言っても…なにも出てこないんだよね」

Brent Grulke(2009) と、なんとかしようと、ヒッチコックの映画『北北西に進路を取れ』のタイトルをいただいて『南南西』を目指せと名付けられたこのイヴェントがオースティンで始まったのが87年。それが年々肥大化し、とてつもない規模になったのはここ10年ぐらいだろうか。経済波及効果を考えると、すでに3年前の報告でオースティン最大の貢献をしているのがSXSWと記録されている。

 おかげで「SXSWは商業主義に走っている」といった批判が出てくるのだが、さて、どうなんだろう? ビジネスとして成立させなければいけないのは当然だし、始まった当時から、愛する音楽やアーティストを多くの人々に知らしめることが狙いだった。また、ミュージシャンのみならず、音楽に関わる全ての人たちが「どうやって音楽で食っていけるか」を模索し、探し出す場でもある。そんな意味で言えば、端っから「商業(ビジネス)」があるのだ。

 が、なによりも、重要なのはそれを支えている『音楽愛』だろう。単純に人寄せパンダで売れているアーティストを呼ぶショーではないのだ。それはプログラムをチェックすれば一目瞭然だし、ブレント氏のこんな言葉にもそれが色濃く反映されていた。

「正当な評価を受けていないミュージシャンをなんとかサポートしなければいけない。この世にはそんな人たちがいっぱいいるじゃないか」

 そんな彼の想いを雄弁に物語っていたのが、今年、彼を追悼する形で開かれたライヴだった。彼との会話で名前が出ていたロビン・ヒッチコックやアレハンドロ・エスコベドに、地元のバンド、グルーポ・ファンタズマなどが素晴らしい演奏を繰り広げ、ブレントへの感謝の気持ちをオーディエンスとシェアしていたのが嬉しかった。

Wild Feathers 毎年さまざまな切り口で音楽の魅力を伝えようとする企画が考えられ、形になっているのがSXSW。優に数万人は収容できる野外コンサート会場で今年はメキシコ系バンドのショーケースもあったし、昨年亡くなったレヴォン・ヘルムへのトリビュートも行われていた。数々の名作が生まれたアラバマのマッスル・ショールズに関するドキュメンタリー映画の公開に合わせて、すでに伝説と言われるミュージシャンたちを一堂に集めたライヴも組み込んでいる。といっても、それぞれの小屋が独自の色や狙いや思惑で興味深い企画を打ち出していて、何をどう選べばいいのか嬉しい悲鳴を上げることになるのだ。

 また、地元にいても追いついていけないほどのサプライズが目白押しなのも『音楽愛』のなせる技だろうか。もちろん、強烈なパブリシティ効果が得られるのを見越した上ではあっても、プリンスがあり得ないほど小さなサイズの小屋で演奏したり、ジョン・フォガティの出演が急遽発表され、誰かのステージにパブリック・エナミーが姿を見せたという情報が伝わってきたり… と、日本ではあり得ないハプニングに音楽ファンの嬉しい悲鳴が聞こえてくるのだ。

 いずれにせよ、ここで取材を重ねれば重ねるほどに感じるのは、集まってきた人たちの音楽への想いじゃないだろうか。「SXSWは音楽を祝福する場だ」とステージで語っていたのはエミルー・ハリス。アイアン&ワインは「みんな、音楽を愛してるよね」とオーディエンスに問いかけていた。そんな『音楽愛』を確認できただけでも幸せだった今年のSXSW。おそらく、同じような想いを共有しながら、オースティンの街を走り回ったのが今回の取材班。それぞれが全く違った視点から選りすぐったライヴのレポートをこれから徐々に発表していくことになります。お楽しみに。

–>ショーン・ラウ

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