踊ろうマチルダ – 『踊ろうマチルダ LIVE at 梅田シャングリラ 2011』

踊れ!

DVDレヴュー 『踊ろうマチルダ LIVE at 梅田シャングリラ 2011』 2013.01.30

踊ろうマチルダ 邦楽って悪くないな。そう思わせるアーティストって今探してもそういないと思う。語弊を恐れずに言いたい。踊ろうマチルダってかっこいいとかかっこわるいとかそういうのじゃない。ロックとかブルースとかフォークとかそういうものでもない。それはかき鳴らすギターであり、声であり、感情そのものだ。
 
 初めて彼の声が聞こえてきたときは、戸惑い、何を言っているのかわからなかった。しかし、マイクにかじりつかんばかりに歌うツルベノブヒロにくぎづけになる。曲が進むにつれ、耳がなれてくると、歌詞とそれが持つ景色が頭に直接流れ込む。5曲目の”夏の終わり”が始まるころには、すっかりその世界に引き込まれ、涙しそうになるほどだった。彼の唄い方は、一貫してしゃがれていて、全力で、がなるように唄うのだが、”さようなら”、”踊ろうマチルダ”、”Bus to Hell(バス・トゥ・ヘル)”のように、曲調が違うと印象がまるで異なる。それは、歌詞の持つイメージがそれぞれの曲を物語っているからなのだろう。それほど彼の描く歌詞のイメージは、すんなりこちらに伝わってくるのだ。

 印象深いのは、”ギネスと泡と共に”で、ツルベの歌が消えてもなお残る観客の歌声。ここまで見て初めてフロアに目が行った。楽しそうに踊る観客たちと、騒がしいほどの歓声。そう、それは1曲目から既に始まっていたのだ。合いの手とも取れる観客の声とツルベの歌。それに違和感はなく、全部含めて「踊ろうマチルダ」なのだった。DVDという媒体にこれまで、「ライブ」を味あわされたことがあっただろうか。既に自分が行ったライブの映像を見ているなら興奮するのもわかるが、初見で、しかも、僕は彼のことを知らなかったのだ。既視感とは違う懐かしさが、僕の中にとどまっていて、曲が進行するにつれて感動に変わり、共感し、震えてくる。初めて見る人も、ファンもまとめて踊らせる。それが彼の音楽なのだと思う。

 本編の終わり近く、”ロンサムスイング”から”マリッジイエロー”の流れが個人的に一番好きだ。一種のナルシズムではないが、男なら誰でも考える恥ずかしい事、それをかっこよく唄うツルベに心底嫉妬した。最後の最後まで声をがならせ唄う彼の姿に感動した。男性諸君に言いたい。フラれてミスチルを聞いている場合じゃない。踊ろうマチルダを聞け。救ってくれるのは、ラブソングなんかじゃない。等身大の男の歌だ。

 このDVDには、本編17曲とアンコール2曲の計19曲が収録されている。このDVDをこれから見る人がいるなら、是非全編通して一気に見てほしい。MCなどはほとんどないが、音楽を聴き終わった感覚とは違う、たくさん会話した後の満足感のようなものがある。そして、いやこんな事は言うまでもないが、きっと彼の音楽を実際に体験したくなるだろう。そうなったが最後、あなたはすでに踊ろうマチルダの虜なのだ。

Share on Facebook

Information

Text:
Ryohei Maruyama
ryohei@smashingmag.net

Ryohei Maruyama's Works

Write a comment