ブンブン・サテライツ(Boom Boom Satellites) @日本武道館 2013.05.03.

「ブンブン・サテライツでした!」の意味は?
テキスト・レポート「「ブンブン・サテライツでした!」の意味は?」@日本武道館 2013.05.03.

Boom Boom Satellites
 アンコール最後の「ステイ」が終わり、会場が歓声に包まれる。中野と川島は何度か頭を下げて客席に感謝の意を表していた。そして、川島が「最後にひとこと言わせてください」。それまでの経緯を知っている客席は一瞬静まり、次の言葉を待つ。「ブンブン・サテライツでした!」と川島はいって去っていった。客席からは、ええっ、それだけー? という苦笑いと脱力した空気が漂った。そして大きな拍手で幕を閉じた。

「ブンブン・サテライツでした!」という発言を考えてみると、

1.本当はいろいろ話したかったけど、思いが一杯になってしまい言葉が続かなかった。

2.いろいろあって「武道館のステージに立ったんだぞ」という実感をひとことで表したかったから。

3.「でした!」が過去形であるので、バンドの近い将来の変化などを示唆している。

 ブンブン・サテライツは今年(2013年)1月にアルバム『EMBRACE(エンブレイス)』を出して、それに伴うツアーの日程も発表された。しかし、ヴォーカル&ギターの川島が脳腫瘍を患っていることがわかり、ツアーは中止。紆余曲折を経て日本武道館のライヴだけは予定通りおこなわれることになった。ブンブン・サテライツとして初の武道館でもあり、川島の復帰ということで、並々ならぬ思いを抱いて武道館に向かったのは、バンドもファンも同じだろう。
Boom Boom Satellites
 武道館の内外には人が溢れていて、アリーナもスタンドもほぼ埋まっていた。アリーナの後方で乾杯している女のグループがいたりして、思った以上に女の人が多かった。比率としては半々か男:女が6:4くらいだろうか。始まる前はヴィタリック「フラッシュモブ」などバスドラム4つ打ちのダンスミュージックが流れていて、開演時間を10分くらい過ぎたころ、デジタリズムの「ブリッツ」が流れ、場内が暗くなり、まず中野が登場。そして、川島がステージに立ち、歓声に包まれる。

 ライヴは「アナザー・パーフェクト・デイ」から始まった。次の「ヘルター・スケルター」はビートルズのカヴァー。原曲のイメージを損なわないままブンブン・サテライツらしいギターとエレクトリックなアレンジだ。背後のLEDスクリーンが真っ赤に発光したのは、この曲の血塗られた歴史をあらわすかのような演出である。

Boom Boom Satellites ステージ中央に中野、上手に川島、下手にサポート・ドラマーの福田洋子である。ステージの両側には花道があって東西のスタンド近くまで移動できるようになっている。どちらの花道の先にはマイクスタンドが立っている。横長で巨大なスクリーンがステージを囲むように設置されている。上下に可動し、さまざまな動きをおこなう照明の豪華さは今までみたライヴの中でもトップクラスだった。

 新アルバム『EMBRACE』からの曲が中心に選曲されていたけど『EMBRACE』は今までのブンブン・サテライツの世界を壊さずに円熟したバンドを感じることができたように、ライヴでも、定番の曲を押さえつつ、次のステップに踏み出そうとしている姿をみることができた。前アルバム『To The Loveless(トゥ・ザ・ラヴレス)』からの「ステイ」あたりから始まった変化は、『エンブレイス』での「エンブレイス」や「ナイン」のように柔らかい感触があって、スケールの大きな音像を作る曲としてあらわれた。「エンブレイス」がライヴ後半に、「ナイン」がアンコール1曲目だったことで、重視していることがわかる。もちろん、定番のハードなギターが炸裂してビートが躍動する、「モーニング・アフター」や本編ラストの「モーメント・アイ・カウント」「イージー・アクション」「キック・イット・アウト」の三連発は、アリーナのお客さんたちのほとんどが腕を挙げて踊り、歓声も大きかった。2人は、感謝を表しながらステージを去る。

Boom Boom Satellites スクリーンには、0.1秒単位でカウントダウンしていく時計が映し出されゼロになったところで「ナイン」が始まる。天使の羽根を着けた人がスカイダイビングする映像をバックに演奏されたこの曲は、ピアノの柔らかい音色が特徴で、それこそ大空をダイビングしているかのような広がりを感じさせる曲だ。そして、ライヴの定番曲である「ディグ・ザ・ニュー・ブリード」「ドレス・ライク・アン・エンジェル」と続く。一旦ステージを退き、再びステージに戻り、川島が心配をかけたこと、元気に戻ってこれたことの感謝を述べる。そして「ステイ」。フジロックやその後の幕張イベントホールでも感じたけど、このゆっくりと広がっていくスケールを感じさせるこの曲がブンブン・サテライツの転換点なのではないか。このライヴの最後に演奏されたのは、それだけ大事な曲であるということなのだろう。

 ブンブン・サテライツの日本武道館でのライヴは、バンドの集大成・到達点だった。さらに、デジタルなロックとかギターが激しく鳴るダンスミュージックというカテゴリーからもっと広がりのある音楽という、次のステップも見据えている音作りも聴くことができた。とすれば、最後の川島の発言に対する疑問は1~3のすべてであると、自分は受け止めた。

*掲載している写真はブンブン・サテライツより提供されています。

Boom Boom Satellites

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Photos:
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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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