カオス (Kao=S) @ エリジウム in サウス・バイ・サウスウエスト 2013.03.15

混沌和風バンド、二回目のSXSWでの挑戦
テキスト・レポート「混沌和風バンド、二回目のSXSWでの挑戦」@ エリジウム in サウス・バイ・サウスウエスト 2013.03.15

カオス

 ワウやディレイといった効果音を巧みに操る津軽三味線奏者。低音をブーストしたオープン・コードのアコギを鳴らしつつ、高音の歌もしっかりと聴かせるギタリスト。そして、殺陣をこなす女優でもあり、剣舞パフォーマンスを繰り広げるシンガー。この異色の3人が組み合わさったバンド、Kao=S(カオス)。彼らの海外での初ライヴは、アメリカ・オースティンで毎年開催される世界最大音楽見本市、サウス・バイ・サウスウェスト(以下SXSW)2012の「ジャパン・ナイト」のステージで、それはバンド結成から僅か10ヶ月の出来事だった。

カオス 日本伝統的要素をモダンな切り口で解釈した彼ら独自のスタイルは好評を博し、SXSW2012後のアメリカツアーでも各地で熱狂的に迎えられた。このアメリカでの経験で、バンドは世界へもっといってみたいという夢を持つようになった。帰国後、今後の展開を考えた時にバンドが描いたのは、もう一度世界の音楽と音楽への愛が集まる巨大フェスSXSWへ身を投じて、未知の可能性を確かめる事だった。新たに尺八奏者を加え、再び臨んだSXSW2013でも、前年と同じように「ジャパン・ナイト」を舞台として選んだ。

 3/15、金曜の夜。「ジャパン・ナイト」会場のエリジウム(ELYSIUM)の前には、15年の歴史を誇るこのショウケースを待ち焦がれたファンが開場前から行列を作っている。これまで、歴代のそうそうたる日本のアーティスト達がこの「ジャパン・ナイト」ブランドを作ってきた。ここを訪れる観客は日本のアーティストと音楽が大好きだ。そして同時に厳しい視点も持っている。誤魔化しは効かない。着物や和楽器といった、和の要素が強いKao=Sだからこそ、音楽の祭典SXSWで表現する事の意味を十分に自覚していた。

カオス トップバッターとしての出演では、客入りが満員ではない時間帯からのスタートになる。しかし、ギターと津軽三味線、そして尺八による和風のイントロが会場を包み、狐の面をかざした川渕が登場すると、バー・コーナーでビールを持って歓談していた観客もフロアに押し寄せてくる。静かな立ち上がりの一曲を終え、客席から歓声が沸き起こるが、次の瞬間にインドのタンプーラの轟音がその歓声をかき消す。「コズミック・ソジャーン」のイントロSEだ。

 多国籍要素を消化し、それらを和楽器とギターで表現するKao=Sの真骨頂とも言える「コズミック・ソジャーン」は、津軽三味線を持ってインドを旅した寂空による、10分近い大作だ。醸し出す濃厚な世界観に、会場は2曲目にしてすでに妖気と静寂と重厚さの渦巻く混沌状態におちいる。その空気を割くのは、津軽三味線による古典曲「津軽じょんがら節」の独奏だ。ハットを被り、モニターに足をかけ、目を閉じ、バチで音の固まりを弾き出す姿に、いつのまにかフロアを埋めるほどになっていた客席から雄叫びと歓声が沸き起こる。ロックン・ロールの国とKao=Sとが完全に繋がった瞬間だ。

カオス 前回のSXSWから大きく変わったのは、観客とのコミュニケーションだ。前年のアメリカツアーでは、川渕は堪能な英語で絶えず客席に語りかけた。しかし今回は日本でのライヴと同様に、MCを一切挟まず、バンドはひたすらパフォーマンスと音のみを繰り出す事に徹する。「桜香る」「記憶の花」と、Kao=Sの叙情的な側面を表現した曲が続き、澄んだ川渕と山切の歌声が絡みながら響きわたる。山切が高音でリードを歌う間も、川渕は客席に桜吹雪を吹き舞わせ、布を操り、しなやかな動きで観衆の視線を離さない。

「美・優・静・激」をイメージとして掲げるKao=Sの視覚的ダイナミクスと、唯一無二の音像の組み合わせの魅力は、ラストに演奏された代表曲「桜の鬼」に集約されている。山切の手による8分にも及ぶこのインスト曲は、女性の川渕ならではの、美しくも激しい日本刀剣舞パフォーマンスによってクライマックスを迎える。演奏が終点へ向かい加速し、川渕の掛け声をあげた渾身の一太刀でショウの幕が降りると、会場中から割れんばかりの大歓声があがった。降り注ぐような指笛や雄叫びの賛辞の中、川渕は静かに息を整え刀を降ろした。

 Kao=Sの「ジャパン・ナイト2013」は大盛況のうちに終わった。しかし、バンドにはまだSXSWで、そしてオースティンで確かめたいものがあった。(つづく)

Text by Shuji Yamagiri and Photos by Tomohide Ono

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