グラストンバリー・フェスティヴァル (Glastonbury Festival) in ピルトン・サマーセット (Pilton, Somerset) 2013.06.28 – 30

イントロ – 舞い上がる不死鳥
特集 – 「舞い上がる不死鳥」 @ ピルトン、サマーセット 2013.06.28 – 30

ザ・ローリング・ストーンズ The Rolling Stones

 夏至をわずかに過ぎたばかりの英国の夕暮れは遅い。土曜日のヘッドライナー、ザ・ローリング・ストーンズが姿を見せる前も、夜の9時とは思えないほど明るい空が広がっていた。その彼方に見えるのがグラストンバリー・トー。アヴァロン伝説によると、頂上にチャペルを持つこの小高い山にアーサー王が眠ると伝えられているのだが、その神秘的なイメージが絵になったかのような風景に巨大なピラミッド型ステージがなんの違和感もなく収まっている。その前からなだらかに広がる丘の斜面にどれぐらいの人々が集まっているのか… 13万人ほどのキャパシティを誇るこのアリーナが隙間もないほどの人の波に覆い尽くされていた。

 言うまでもないだろう、2年ぶりに復活したUK最大のフェスティヴァル、正確にはグラストンバリー・フェスティヴァル・オヴ・コンテンポラリー・アーツのヘッドライナーとしてここに姿を見せたのがロックの伝説。すでに昨年の早い時期からささやかれていた噂が現実のものとなっていた。しかも、今回から4年にわたって独占放送権を獲得したBBCが総力を挙げたキャンペーンを展開。彼らのライヴを含め、テレビからラジオ、そして、インターネットを駆使して250時間にも及ぶライヴ映像を発信するというので、日本でも大騒ぎになっていたに違いない。

ザ・ローリング・ストーンズ The Rolling Stones ステージに向かって左側、下手の丘の上から遠巻きにヒット曲のオンパレードとなったこのショーを眺めていたのだが、最も興奮したのは彼らが「悪魔を憐れむ歌」を演奏した時だった。すでに日も暮れ、闇夜に浮き上がるピラミッドの屋根が突然動き出したように見えていた。といっても、それは錯覚で、動き出したのは身を潜めていた巨大な不死鳥。機械仕掛けのそれが首をもたげ、大きく羽を広げ始めていた。まるで下界の人間を物色するかのように左右に我々を見下ろし、時折火を噴く… それがストーンズの演奏と絡まって強烈な印象を我々に残すことになる。

『Phoenix Raises(舞い上がる不死鳥』

 翌日、プレス・テントに行くと、まるで号外のように張り出された新聞の見出しにはそう書かれていた。どこかで1年のブランクを置いて復活したグラストンバリー・フェスティヴァルを象徴するのがあの不死鳥だったのだろう。しかも、これを作ったのはここで最もオルタナティヴなエリア、シャングリラからアンフェアグラウンドで異世界を創造するアーティス&パフォーマンス集団の中核、ミュートイド・ウェイスト・カンパニー。昨年ロンドンで開催されたパラリンピックの閉会式で圧倒的なパフォーマンスを見せてくれた彼らが提示する世界にこそこの『祭り』の要があるのだとでもいわんばかりの演出だった。

Glastonbury Festival 会場となるワージー農場があるのは、英国南西部、サマーセットの田舎町、ピルトン。ロンドンから高速道路M4を西に2時間ほど走り、18番出口を降りて南西に向かったあたりとなる。ユネスコの世界遺産にも登録されている街、バースを抜けてさらに南下。鮮やかな緑がまぶしい木々のトンネルをいくつもくぐり抜け、牛や羊がのんびりと過ごす、穏やかに波打つ丘の数々を越えて車を走らせる。グラストンバリー市とシェプトン・マレット市をつなぐ361号線沿いのちっぽけな村。日頃は人通りさえ目にすることがないような、静かな村でこのフェスティヴァルが始まったのは1970年。すでに40年を越える歴史を誇るこれも、始まりはわずか1500人が集まったに過ぎないちっぽけなものだった。

 筆者が初めてここを訪ねたのは82年。ステージはわずかふたつではなかったかと思うが、当時の記録を調べてみると集まっていたのは2.5万人。なにやらこぢんまりとしたウッドストックといった印象が残っている。なによりも圧倒されたのは、出演したバンドやアーティストではなく、ここに集まって人々から満ちあふれていたオルタナティヴなエネルギーだった。そこで出会ったのは経済と効率だけで成り立っているかのような文明から抜け出して、地球と共に生きるもうひとつの世界を求めている人々の群れ。彼らが見せる笑顔や暖かさが新しい世界への扉を開けてくれたように思う。

 あれから30年、それがすっかりと様変わりしたのがわかる。40周年記念となった一昨年の会場の広さは1100エーカー。87年の記録を見ると、会場面積は約500エーカーでその年に歴史の幕を閉じた後楽園球場が38個分すっぽりと入ってしまうとか。その2倍をはるかに超えた2年前から一段と大きくなったのが今年だった。公式発表されているステージの数は54個。しかも、明らかに大きくなったステージもある。加えて、シャングリラやアンフェアグランドからブロック9にアーケイディアといったオルタナティヴなエリアもさらに拡張されて、会場内でもうひとつのフェスティヴァル、あるいは、異次元空間を生み出していた。

Glastonbury Festival かつてこのフェスティヴァルを『片田舎のなにもない丘にオルタナティヴな街が出来上がる』と描いたことがあるんだが、すでに街どころか、巨大な都市が生まれると言うべきだろう。主催者の広報部発表によると『チケットを購入して会場に入った人』の数は約18万人。英国ではこういった大規模なイヴェントの開催には地方自治体の許可を得なければいけないのだが、そのぎりぎりの数字が発表されていた。といっても、12歳以下は無料で入場できることや、プレスや関係者として会場にやってくる人たちの数はここには含まれてはいない。さらには、現場で一ヶ月以上にわたって仕事をしてきた人たちの数も半端なく多いのだ。どう転んでも25万人はいたのではないかと思われるが、正確な数は定かではない。

 おそらく、日本でグラストンバリーといって思い浮かべるのは巨大なステージで繰り広げられるミュージシャンのライヴだろう。それに輪をかけるようにメディアが話題にするのもそこに集約されている。が、ネットを探せばいくらでも出てくるだろう、会場の空撮写真を見てみればいい。あの巨大なピラミッド・ステージでさえちっぽけに見えるのだ。サーカスから映画、子どもの楽園に無数のクラブが出現し、会場のそこかしこで繰り広げられる路上パフォーマンスも数え切れない。その全てをお伝えするのは不可能だろう。ただ、なぜこの『祭り』なのか、その一端でもお伝えできればと思う。

–>テキスト・レポート – ビーディ・アイ(Beady Eye)

Glastonbury Festival

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