What’s Love?(ワッツ・ラヴ?)-『WA-YO SKA? ~ON-KO-CHI-SHIN~』 (ワ・ヨウ・スカ?~温故知新~)

『 WA-YO SKA? ~ON-KO-CHI-SHIN~』全曲解説!
CDレヴュー『 WA-YO SKA? ~ON-KO-CHI-SHIN~ (ワ・ヨウ・スカ?~温故知新~)』 2013.04.10.

What's Love? ワッツ・ラヴ?の新譜『 WA-YO SKA? ~ON-KO-CHI-SHIN~』は、過去日本人が洋楽をカヴァーして日本語詞をつけたものを、スカ/レゲエ・ヴァージョンとして、さらにカヴァーするという趣向のアルバムだ。洋楽のオリジナル曲は基本的に80年代までの懐かしい大ヒット曲。それをカヴァーした日本語ヴァージョンは、有名なものから地味なものまで幅広い。それを曲によってはゲストヴォーカルを迎えて、ワッツ・ラヴ?流に料理している。さて、それぞれのお味は……ということで、全曲レビューをおこなった。

1. THE FRANZ LISZT TWIST feat.CHAN-MIKA / ハンガリア・ロック feat.CHAN-MIKA

麻生京子 19世紀のピアニストにして作曲家であるフランツ・リストが作曲した「愛の夢 第3番 変イ長調」が原曲である。それを1962年にゲイリー・エドワーズ・コンボというグループが「フランツ・リスト・ツイスト」として大胆にツイストナンバーにしてしまった。その曲に漣健児=草野 昌一(『ミュージック・ライフ』の初代編集長にして、数々の洋楽の訳詞をおこなった)が日本語の歌詞を付け、麻生京子(のちの麻生レミ)が「ハンガリアン・ロック」として歌った。なぜハンガリアンというタイトルかといえば、リストの出生地が当時ハンガリーだったからである。

 勢いありオープニングにふさわしい曲。ゲスト・ヴォーカルのチャン-ミカの歌い方もパンチの効いた声で元気よい。

2. ALONE AGAIN / アローン・アゲイン

草刈正雄 ギルバート・オサリバン有名な曲(ドラマなどの主題歌、CMなどでよく使われる)。オリジナルの歌詞はかなり暗い内容で、厭世的であるけれども、ギルバート・オサリバンが淡々と美しいメロディを歌っているので、むしろユーモアが生まれている。これを草刈正雄がカヴァーした。この草刈正雄ヴァージョンは原曲の歌詞とニュアンスが近く、名訳といえる。ワッツ・ラヴ?の松本も飄々と歌うので、かなり原曲に近いニュアンスを出すことができたのではないか。

3. LA VIE EN ROSE feat.Yo Harding / バラ色の人生 feat.Yo Harding

越路吹雪 フランスの国民的歌手であるエディット・ピアフ名曲に岩谷時子が日本語詞を付けて、越路吹雪歌ったもの(岩谷時子と越路吹雪との関係はググってみよう)。日本でも多くの人にカヴァーされている。ゲスト・ヴォーカルのヨー・ハーディングによってグッと熟女が醸し出す雰囲気が曲も歌詞も合っている。

4. FEEL LIKE MAKIN’ LOVE feat.ARISA YAMAZATO(mount sugar) / ひらめきラヴ feat. 山里ありさ(mount sugar)

 ロバータ・フラックソウル・バラード井田リエ&42ndストリートというグループがカヴァー。1977年にその日本語詞の曲が発表されたけど、オリジナルは文句なく名曲だし、日本語カヴァーの方も現在でもオシャレなものとして聴けるクオリティがある。涼しげな感じがよい。ワッツ・ラヴ?によるヴァージョンもその涼しげな感じを受け継いでオシャレで可愛らしいものになっている。

5. SUPERSTITION / 迷信

 スティーヴィー・ワンダー名曲を野口五郎がカヴァー。野口五郎はジャズやファンクが好きであり、いろいろカヴァーを残している人なので、原曲に対して愛があるのはわかるし、キーボードをギターに置き換えた演奏はカッコイイと思う。ワッツ・ラヴ?のヴァージョンはちゃんとキーボードとホーンによってスティーヴィー・ワンダーのヴァージョンに近いものに仕上がっている。だけど、この日本語の歌詞はどうにかならなかったのか。スティーヴィー・ワンダーは強い意志で迷信を否定していくという歌詞であって、日本語詞では甘いのだ。

6. LIKE A VIRGIN feat.Lena(NOSA LENA) / ライク・ア・ヴァージン feat.Lena(NOSA LENA)

吹田明日香 マドンナ大ヒット曲をそこそこ売れたアイドル歌手、吹田明日香カヴァー。歌詞を手がけたのは中森明菜やチェッカーズで当時売れっ子だった売野雅勇であり、歌詞がいかにも雰囲気のみの中身のないもので、まさにザ・80年代。浮かれていた時代の産物である。

 その曲をワッツ・ラヴ?はゲストヴォーカルのレナによって、お姉さん的なセクシーヴォイスで歌わせ(吹田明日香のヴァージョンに引っ張られずにウィスパーボイスにしなかったのは正解)、童貞を誘惑し思わず勃起するような曲に仕上げたのは見事。

7. WORK SONG / ワーク・ソング

尾藤イサオ ナット・アダレイ作曲し、兄のキャンボール・アダレイヴァージョンでも広く知られるジャズのインストゥルメンタル曲。本国ではその曲にオスカー・ブラウンJr.歌詞をつけた。日本では尾藤イサオが歌っている。ワッツ・ラヴ?のヴァージョンも無骨な感じがよく出ている。

8. LAMBADA(LLORANDO SE FUE )feat.CHAN-MIKA / ランバダ feat.CHAN-MIKA

 今聴くと恥ずかしい曲ナンバーワンではないか。「マカレナ」とか最近だと「ガンナムスタイル」のように凄まじく流行ると廃れるのも早く、しかも音楽というよりは「流行った」という現象が取り上げられたので、当時を知る多くの人はダサいものとして記憶している。

石井明美 ボリビアのフォルクローレ・グループであるロス・カルカスの「Llorando se fue」(ジョランド・セ・フエと読むらしい。日本語タイトルは「泣きながら」)という曲だった。この美しいフォルクローレの曲を、フランスのカオマが盗作(のちカオマがロス・カルカスに著作権料を支払うことで決着)し、ダンス・ナンバーにして世界的に大ヒットとなった。日本では石井明美が、カオマのヴァージョンに近いカヴァーしている。

 そんな気恥ずかしさを感じる曲だけど、しかし! おれはこのカヴァーはこのアルバムでのベストトラックとして推したい。エゲツないチャン-ミカの歌と楽しそうに演奏しているプレイヤー陣が化学反応を起こしているのだ。間奏での「やる気まんまんっ!アッ!」というかけ声にはまいりました。われわれの記憶に残る恥ずかしさをエゲツなさで乗り越え 猥雑さが輝いててしまった傑作。

9. CARELESS WHISPER / 抱きしめてジルバ

西城秀樹 ワム!ヒット曲を郷ひろみと西城秀樹カヴァー。歌詞はそれぞれ違うけど同じ時期に出たもので、あんまり大きな話題にならなかったと記憶している(2人とも全盛期は過ぎていた)。当時ワム!が大好きだったので、日本人による日本語カヴァーは原曲への冒涜だと憤っていたけど、今聴くと秀樹のヴァージョンはそんなに悪くない。ワッツ・ラヴ?によるカヴァーも秀樹のヴァージョンで、勢いある演奏と切ない歌詞が程よくブレンドされたものとなっている。

10. HOTEL CALIFORNIA / ホテル・カリフォルニア

イーグルスの歴史に残る名曲に、大御所作詞家・なかにし礼が日本語詞をつけてタンポポというグループに歌わせたもの。オリジナルの歌詞は当時のアメリカに対しての批評意識が強く、幾重にも重なった言葉がいろんな解釈を生み出し、それが名曲と呼ばれるゆえんでもあった。しかし、なかにし礼大先生の歌詞はまるでキャバレーか風俗店の呼び込みみたいで、原曲の素晴らしさを破壊しまくったものである。これを取り上げたバンドも――おバカなものだからそのバカ方面でふざけるなら有りだと思うけど――この日本語ヴァージョンを「良きもの」としているなら残念だ。

 「迷信」のときでも思ったけど、残念な歌詞はちょっと手直ししてもよかったのではないか。もちろん、日本語詞の素材をそのまま生かすということなんだろうけど、オリジナルに日本語詞がついた時点で「自然な素材」ではないし、ダサい/ダサくないの審美的な視点はバンドは持つべきだったのではないだろうか。もしくは、そのような場合はもっとふざけてもよかったのでは。例えば、原曲の後半にあるツイン・ギターによるソロを2本のサックスで完コピしましたというのなら、そういう真剣なおふざけで、まだ面白く聴けたかもしれないけど。

11. A PLACE IN THE SUN / 旅

 スティーヴィー・ワンダー「ア・プレイス・イン・ザ・サン」のカヴァーというのはわかっていたけど、この日本語詞が誰によるものなのか検索してもわからなかった。ツイッターを通じてバンドに質問したところ「徳永芽里さんのヴァージョン」という返事をいただいた。徳永芽里という名前も検索しても断片的なことしかわからず、60年代後半に活動した人であることがわかるくらい。ともかく、スティーヴィー・ワンダーにとっても初期のヒット曲に日本では早くも反応していたということになる。

 哀愁ある歌詞と声でこのアルバムの締めくくりにふさわしい曲になっている。

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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