ピンク・フロイド・トリップス(Pink Floyd Trips) @ 渋谷オー・ウエスト 2013.08.06.

生きたピンク・フロイドを
テキスト・レポート「生きたピンク・フロイドを」@ 渋谷オー・ウエスト 2013.08.06.

Pink Floyd Trips

 ライヴの終盤にギターの木暮”シャケ”武彦が「聴いてくれれば、みんなピンク・フロイドを好きになる」とMCでいっていたけど、まさしくその通りだと思った。ピンク・フロイドをはじめプログレッシヴ・ロックにはどうしても難解である・敷居が高い、とっつきにくいイメージがあるけど、この日のライヴを観てピンク・フロイドは実はわかりやすいものであり、われわれに近い音楽だと感じたのだ。

 別にピンク・フロイドの曲を現代的にアレンジしたわけでない。ほとんどレコーディングされたヴァージョンのイメージを大きく裏切らないような演奏だった。ピンク・フロイドの曲をそのまま演奏するだけで、現代に通用すると信じたミュージシャンたちが自分のテクニックと熱意を込めて演奏するだけで素晴らしいものであった。CDで聴いてるのとは違って生演奏のスリルやイキイキとしたプレイの応酬が感じられたのだ。

Pink Floyd Trips 会場の渋谷オー・ウエストはほぼ満員だった。ステージ前にはパイプ椅子が並べられ、後ろは立見だった。客層はかなり高め。落ち着いた年配か、いかにもロッカーという風貌の人たちと二極化されていて面白い。もちろん「リアルタイムじゃないけど、プログレッシヴ・ロック好きオタク」という筆者のような会社帰りの年代も混じっている。開演前はビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、ドアーズ、レッド・ツェッペリンが流れていて、ステージ背後の大きなスクリーンには、ピンク・フロイドのさまざまな映像が映し出されている。

Pink Floyd Trips そして19時35分ころ、場内が暗くなってキーボードの厚見玲衣が登場し、始まったのが「走り回って(On The Run)」ピンク・フロイドのカヴァーをするにしてもこの曲から始まるか! というもので驚いた。あるDJがテクノを回している間にこの曲を混ぜても誰も70年代の曲だと気づかなかったくらい時代を超越したものなのだ。そして徐々にメンバーが揃って次は「吹けよ風、呼べよ嵐(One Of These Days)」。扇田裕太郎が弾く印象的なベースのリフから始まり、柏原克己の迫力あるドラムが鳴り響き、最後にヴォーカルのケネス・アンドリューが登場し、「One of these days, I’m going to cut you into pieces」と叫ぶ。

 続いて「マネー」とピンク・フロイドの名曲が次々と演奏される。「クレイジー・ダイヤモンド」では木暮と扇田のツインリードギターでサイケデリックで複雑なアレンジを再現する(ベース音は厚見のキーボード)。「炎の橋(Burning Bridges)」や「デブでよろよろの太陽(Fat Old Sun)」のようなあまりカヴァーとして取り上げられることのない曲、「天の支配(Astronomy Domine)」「ユージン、斧に気をつけろ(Careful With That Axe, Eugene)」などの初期の曲も演奏されピンク・フロイドへの愛情の深さを感じた。

Pink Floyd Trips  ハイライトは第1部ラスト「原子心母(Atom Heart Mother)」(前奏とロケット発射のところはカットされていたけど)や本編ラスト「エコーズ(Echoes)」の完全再現、そして女性ヴォーカルを担当した成冨ミヲリが声で客席を圧倒する「虚空のスキャット(The Great Gig In The Sky)」だろう。厚見と三国義貴の2人のキーボードがストリングスやブラスをシンセサイザーで再現して音に厚みをもたらした。それぞれのミュージシャンに見せ場があり、その力量をぶつけ合い、ピンク・フロイドが過去のものでなく、ずっと受け継がれるものであることがはっきりとしたのであった。

Pink Floyd Trips アンコールの前に、まず、この8月6日はピンク・フロイドが箱根アフロディーテで演奏された日であり、わざわざこの日に今日のライヴを合わせたと木暮が語る。そして、厚見玲衣が中学生のときに体験した箱根アフロディーテや翌年の東京都体育館でのライヴの思い出話を披露した。当時のパンフレットを持ってきて語る厚見に、最前列に「自分も箱根に行った」というお客さんがいて面白かった。すごいベテランのお客さんたちが来ていたのだ(ちなみに箱根は筆者が0歳児のときだった)。そして「グリーン・イズ・ザ・カラー(Green Is The Colour)」、最後は根がハードロックな人たちの集まりらしく、ワイルドな「ナイルの歌(The Nile Song)」で締めくくる。

 素晴らしい! の一言。ピンク・フロイドへの愛情が感じられ、単なる懐メロでないものとして提示されたのではないか。そして、特に「原子心母」を聴いて思ったのは「朝霧JAMで聴きたい。牛のいる草原で聴きたい」ということだ。これ以上のシチュエーションはないでしょう。ひとつよろしくお願いします! 

Pink Floyd Trips

写真はバンド・オフィシャル・カメラマン、森島 興一氏より提供されたものです。

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Photos:
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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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