ザ・ストライプス (The Strypes) @ 朝霧アリーナ 2013.10.12

夢を見させるロックンロール
テキストレポート「ザ・ストライプス (The Strypes) @ 朝霧アリーナ 2013.10.12

The Strypes

 数年前から次第に自分より年が下のアーティストがミュージックシーンに登場するようになってきた。僕は今年で23歳になるので、例えば、オアシスの『ディフィニトリー・メイビー』がイギリスのロックミュージックに与えた衝撃だったり、ザ・ストロークスの『イズ・ディス・イット』がガレージロックを復活させたリアルタイムの空気がどうだったかということは、悔しいけれどよくわからない。アークティック・モンキーズはデビュー当時から聴いていたけれど、僕にとってみれば彼らも年が上のバンドだったので、バンドに対する見方がとりわけ違うというわけではなかった。だから、メディアがここぞとばかりにアークティック・モンキーズを取り上げ、フェスティバルのヘッドライナーを務め上げたという一連のストーリーを自分の目で目撃しても、若いのにすごいなあくらいにしか思っていなかった(ようやく自分が彼らと同じような年齢になり、如何にすごかったかということが身に染みてわかってきた)。

 自分より年が下の人が鳴らす音を聴くというのは、形容しがたい不思議な気持ちを生む。

 僕にとってザ・ストライプスは、まさにこの摩訶不思議な感情の源泉というか、ついにこのときが来たかと感じさせてくれるバンドであった。ライヴを観るという行為のなかにロックンロールを考えさせたり、ロックンロールの未来を想像させたりとめったに味わうことのできない体験をすることができた。

 初来日を果たした4月から、わずか6ヶ月のあいだに「ザ・ストライプス旋風 」を巻き起こし、洋楽リスナーで知らない人はいないまでに成長した彼ら。そのムーブメントの波はお茶の間にまで浸透し、サングラスをかけたタレントが司会をする有名音楽番組に出演を果たすまでにいたった。僕はこれほどまでにスポットライトが当たった海外の新人バンドをみたことがないし、はっきり言って異常なまでの盛り上がりである。日程の都合上、実現することはなかったけれど、本当は今年のフジロックに出演させることを目論んでいたなんて話を耳にしたときは驚きを隠せなかった。フジロックの主催者(もちろん、この朝霧ジャムも)である日高正博氏をはじめ、音楽業界のあらゆる人が熱い視線を送っており、それはこのスマッシング・マグも例外ではなく、編集長や先輩ライターやカメラマンの方々がいち早く彼らに注目し、取材を行ってきている( 日本での単独公演はすべてレポートしている)。

The Strypes 今回発表された日本を縦断する単独ツアーは全ての公演がソールドアウトになっていることからもわかるように、この朝霧ジャムでもその注目度は他のアーティストと一線を画すものがあり、開演前にはたくさんの人がレインボー・ステージに詰めかけていた(朝霧ジャムのオーディエンスは音が鳴ってからステージ付近に集まることが多い)。また、初日の朝霧高原の天気はかつてないほどに快晴で、日が落ち、辺りが暗くなっても富士山のシルエットが黒々と見えており、あとはロックンロールが響き渡るだけという最高のシチュエーションが用意されいた。

 ほぼ定刻通りにステージが暗転し、メンバーが大歓声に包まれて登場。年齢のゆえに、「かっこいい」とともに「かわいいね」なんていう声を聞くことができた。一曲目は「ミステリー・マン」。軽快なギターのリフを聴けば、自然と腰から踊りだしてしまう。そのまま「シーズ・ソー・ファイン」、「アイ・アム・ア・フォグ・フォー・ユー・ベイビー」に流れ込み、序盤からモッシュやダイブが朝霧ジャムで起きるという異常事態に。

 若いロックバンドなんて掃いて捨てるほどいるわけで、2013年にロックンロールの門を正面から叩いただけでは、「ザ・ストライプス旋風」が巻き起こることはなかったはずだ。おそらく、ライヴ中にロックスターの幻影が見え隠れすることがたくさんのリスナーたちの心を鷲掴みにした原因なんじゃないだろうか。各世代のリスナーたちが自分たちの憧れるヒーローを投影してしまう何かがステージ上のいたるところに存在する。ヴォーカルのロス・ファレリーはオアシスのリアム・ギャラガーよろしく終始サングラスをかけており、これぞロックンロール・スターの出で立ちだし、「ブルー・カラー・ジェーン」や「ユー・キャント・ジャッジ・ア・ブック」におけるギターのジョシュ・マクローリーとの掛け合いなんて、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズを否応なしに彷彿させる。また、エヴァン・ウォルシュのシンプルなドラミングとピート・オハンロンのベースは阿吽の呼吸をみせ、このバンドの軸がしっかりとルーツ・ミュージックにあることを衣装だけでなく音からもはっきりと感じさせる。

The Strypes  音楽に詳しければ詳しいほど、このバンドの虜になる可能性が高い。大好きなロックンロールのあれやこれやの片鱗が、再び目の前によみがえっているのだから。そして、17歳にしてこれほどのものをみせてくれるのであれば、これから時を経るにつれてますます大きな夢を見せてくれるに違いないと、そう信じたくなる。もしかしたら、過度な期待と言ってもいいのかもしれない。この若さに対して夢をみる感情こそ、自分がアーティストよりも年が上にならないとはっきりと感じないものなのだろう。だからこそ、このライヴを観たあと、業界の人間が彼らを救世主のように扱ってしまうのもうなずけた(みんなが右に倣えで絶賛しているので、気持ち悪いと思うこともあるけれど)。

 ちょっと気になるから観てみようというライト層がいることが当たり前のフェスティバルにもかかわらず、東京での単独公演(10月8日10月9日10月10日)とほぼ変わらぬ強気のセットリスト。1時間強のステージを終えるころには、開始したときよりもステージ前方エリアにはたくさんの人が詰めかけていた。「アサギリ、タノシンデル?」、「ステキデス」という短い日本語のMC以外、立て続けにロックンロールを演奏し、日本でのフェスティバル・デビューを見事に飾った。

The Strypes

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Text:
Yasuaki Ogawa
yasuaki@smashingmag.net
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