高田漣 @ 朝霧アリーナ 2013.10.12

晴天に吹く風のような心地よくもシンプルなアンサンブル
テキスト・レポート – 「晴天に吹く風のような心地よくもシンプルなアンサンブル」 @ 朝霧アリーナ 2013.10.12

高田漣

 朝霧ジャムでは、2008年のpupa(ピューパ)、2010年にはThe Beatniks(ザ・ビートニクス)のメンバーとして出演してきた高田漣が、この朝霧高原の会場に初めてソロ名義で登場した。彼は、高田渡という日本のフォークムーブメントの偉大な立役者を父に持ち、弦楽器奏者としてYMO、細野晴臣、星野源を始め、数々のアーティストのサポートを務め、多彩な経歴を持つマルチ弦楽器奏者だ。

 高田渡の詩集『個人的理由』にある詩をのせた楽曲”まちぼうけ”でスタートする。サポートにはドラムス伊藤大地、ベース伊賀航という細野晴臣や星野源などでサポートメンバーとして、知る人にはかなり馴染みの深い3人組である。15時台のムーンシャイン・ステージは、賑やかしく1発目を飾ったラ・ペガティナが終演し、嵐が去ったような静けさが感じられた。エレクトリック・ギターからまるでアンプラグドかと思うほどの音色をイントロに落とす”鯵”。鍵っ子だった幼少期の思い出を歌った曲らしい。もの淋しくも感じられる歌のないように寄り添うようにすっととけ込んでいくリズム隊の間合いは絶妙だ。

高田漣 MCでは「途中の高速道路の渋滞で何度もめげそうになった」と語っていたが、やっとの思い出渋滞を脱出し、会場についてからはいそいそとテントを張り、ステージ前でようやく一口目のビールにありつけたお客さんの安堵の気持ちとシンクロし、なんとも言えないまったりとした時間が進む。「風邪を引かないように気を付けてください」と放った言葉は他愛もないことではあったが、落ち着きと深みのある声の魅力にじわじわと会場は引き込まれ、前方で柵に持たれている人が目を閉じて演奏に聞き入っている光景が見られた。

 ここで披露したほとんどが今年6月に発表された6枚目のアルバム『アンサンブル』に収録されている曲だった。ライブ中盤には、名曲“野バラ”。これもまたアルバム収録曲であるが、以前からライブでも度々披露されている人気曲だ。昭和の詩人、菅原克己による詩に曲をつけたもので、父の作曲のやり方に挑戦したものだと、オフィシャルの楽曲紹介の中で語られている。弦楽器奏者として活躍する彼が、自らの楽曲の中に込めたのは詩へのこだわりだ。そのスタンスは詩人であった彼の祖父、そしてフォークシンガーであった父から脈々と受け継がれている偉大な遺伝子なのだと思う。

 ラストの”火吹竹”は3代に渡って紡がれている傑作と言える曲だ。ライブのよさもさることながら、配信が主流の世の中に逆らって、あえてCDを入手しても価値のある楽曲の数々。ブックレッドで詩を読みながら家で聴き込むのもまた違った味わいを感じられるのではないだろうか。ギター、ベース、ドラムのみのシンプルな編成ながらも、幾重にも感じられる音の層はとても心地よく、例年よりも気温が高かった朝霧高原に涼しげな風を送っていた。

高田漣

–>フォト・レポート or 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団

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Text:
Hiromi Chibahara
tammy@smashingmag.net

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