ザ・ストライプス(The Strypes) @ 梅田クラブクアトロ 2013.10.16

正統派から異端児へ
テキストレポート「正統派から異端児へ」@ 梅田クラブクアトロ 2013.10.16

The Strypes

 正直なところ、がっかりだった。4月の来日公演を観た知人から、ザ・ストライプスは2010年代ロックンロールシーンの救世主であるとか、あの年齢にしてリズム・アンド・ブルーズやロックンロールの神髄を完璧に理解しているといったことを散々聞かされていたこともあったとは思う。日本デビューEP盤『ブルー・カラー・ジェーン(Blue Collar Jane)』からは、若手による古き良き時代への憧れ以上のものを感じれず、本当にみんなが言うほどのバンドなのか大いに疑問に感じた。ただ、周りの知人が感銘を受けたのは、彼らのライヴであって音源ではない。ライヴを観なくして評価を下すのは、音楽ファンとしてあるまじき行為だ。前回の来日のステージを体験できなかったことへのリベンジとして、今回のジャパン・ツアーのライヴは絶対に観逃すまいと心に誓ったのである。そして、彼らの実力のほどをこの目で確かめたいと思ったのだ。

 朝霧ジャムも含めた今回のジャパン・ツアー全日程のチケットが、完全ソールドアウトというザ・ストライプス旋風を吹き荒れる中、10月16日の大阪公演を迎えた。会場入りしたのは、開演予定時刻の約30分前。既にフロアは超満員で、ステージ前方は隙間すらないほどひしめき合っている。オーディエンスは、女性の比率が高い印象だ。中にはメンバーと同世代と思しき女の子達も散見される。物販で新調したストライプスTシャツ姿でタオルをステージに向かって掲げているその熱い眼差しは、さながら心酔しているアイドルの登場を心待ちにいるかのようだった。

The Strypes メンバーによる選曲と思われる、ブリンズリー・シュワルツ、マンフレッド・マン、デイヴ・エドムンズなどの激渋なR&B、カントリー・ロック、ロックンロールのクラシックが軽快に流れ、混み合い熱気のこもった会場に爽やかな風を送り込んでいる。曲がボ・ディドリーの「キャディラック(Cadillac)」に変わり、最終のサウンドチェックのためギター・テクニシャンが登場して、ギターを”ジャーン!”と鳴らせば、それだけでオーディエンスがステージ前へどっと押し寄せる事態となる。そのままザ・ヤードバーズの「アイ・エイント・ダン・ロング(I Ain’t Done Wrong)」が流れ、曲の終盤に差し掛かるとステージの照明が徐々に落ち、何とも絶妙のタイミングでバンドメンバーが颯爽とステージに登場した。この一瞬で、会場の空気がフッと変わるあの感じは、否が応でもデビュー当初のオアシスの登場を鮮明に思い出した。メンバーから発せられるロックスター然としたオーラ、スーツ・スタイルでスタイリッシュにビシッとキメた衣装、そのすべてが有無を言わせないかっこよさで満ちあふれている。

 この登場を目撃しただけで、今夜のライヴの仕上がりを見通せたようなものだ。こんなオーラをまとったバンドに、間違いはあり得ない。先日リリースされたファースト・アルバム『スナップショット(Snapshot)』からのリードトラック「ミステリー・マン(Mystery Man)」を皮切りに、ほとんどMCを挟むことなく矢継早に次から次へと曲を奏でていく。バンドのタイトな演奏に呼応して、のっけからあまりにオーディエンスが激しくジャンプをするので、底がぬけてしまうのではないかというほどフロアが揺れていた。

 ギターのジョシュ・マクローリー作のオリジナル曲は、どの曲も自由自在に乗りこなしていた。「ブルー・カラー・ジェーン(Bule Collar Jane)」の、イントロの静謐かつ泣きも感じさせるメロディアスなフレーズから、あの必殺のリフへとつなげる芸当。ライヴならではの生々しさがあり、オーディエンスにとって聴きなれた楽曲をちゃんと料理しなおし、新鮮な形で提供するきめ細やかなシェフぶりも兼ね備えているのだ。

 個人的な今夜のオリジナル曲のハイライトは、真っ赤な照明の中、ジョシュによる「少しここで、スローダウンするぜ。」の一言から、会場をブルーズ天国へといざなった「エンジェル・アイズ(Angele Eyes)」だ。渋く奏でられるブルージーなギター・フレーズ、ボーカルのロス・ファレリーのしっとりと歌い上げる様、間奏部の一瞬の溜めを挟んでのキレッキレのギター・ソロ、そのすべてが完璧だった。こんなスローでブルージーな曲こそ、バンド真正の巧さを垣間見ることができるのである。

The Strypes そんなオリジナル曲もさることながら、このバンドのライヴにおける真骨頂は、初期衝動が満ち溢れるカバー曲であることは誰もが認めるところだろう。エルヴィスの「監獄ロック」の作者として有名なジェリー・リーバー・アンド・マイク・ストーラー(Jerry Leiber and Mike Stoller)のソングライターコンビのペンによる「アイム・ホッグ・ユー・ベイベー(I’m A Hog For You Baby)」では、ドクター・フィールグッド顔負けのグルーヴィーな波でフロアを船酔いさせた。ブルーズ・ハープ・マスターのスリム・ハーポ(Slim Harpo)のブルーズ・ナンバー、「ガット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット(Got Love If You Want It)」では、ジョシュがベースを、ロスがギターを奏で、そしてベースのピート・オハンロンがブルーズ・ハープを荒々しく吹きまくり、オリジナル顔負けの”黒さ”で迫ってくる。

 こういったカバー曲をその場のノリを大切に楽しみまくる4人のその姿を観て、4月のライヴを観た知人達の上記言葉が間違いではなかったと思い知らされた。当たり前のことだが、ロックンロールバンドは”ライヴこそすべて”である。心底ロックンロールを愛しているのが手に取るようにわかるような、真っ直ぐな音を届けてくれた。「ロックンロール!!」と投げかけられたフロアに向かって不敵に微笑んだロスの表情が脳裏に焼き付いている。

 高いミュージシャンシップ、スタイリッシュで統一感のある衣装、フォトジェニックなルックスと漂うオーラ、そして生粋のライヴ・バンドとしての真正さといった様々な形状のピースが奇跡的にカチッとはまって、このザ・ストライプスというパズルを完成させている。今後さらにこのバンドが飛翔し、音楽史に軌跡を残すには、音源からでもオリジナルとして十分に勝負できる楽曲をいかにジョシュが産み出せるかにかかっている。つまり、ロックの遺産を真摯に受け継ぐ正統派からそれを壊して次のステージへと突き進むような異端児へと変貌を遂げなければならないと思うのだ。だが、このバンドにとってそんなことは大きなお世話に違いない。ザ・ストライプスは、きっと音楽史の1ページを飾るバンドになってくれると心から信じている。それほど素晴らしく、心底ワクワクさせられたライヴだった。

The Strypes

– set list –
 
Mystery Man / She’s So Fine / I’m A Hog For You Baby / What The People Don’t See / I Can Tell / Angel Eyes / Ooh Poo Pah Doo / Down The Road Apiece / Bad Boy / Perfect Storm / What A Shame / Hometown Girls / Blue Collar Jane / You Can’t Judge A Book / I Wish You Would / C.C. Rider / Going Up The Country / Got Love If You Want It / Heart of The City / Rolling and Tumblin’
 
– encore –

Little Queenie / Route 66

–>フォトレポート

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Izumi "izumikuma" Kumazawa
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Text:
Takafumi Miura
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