ザ・クリブス(The Cribs) @ 代官山ユニット 2013.11.05

不変であること
テキスト・レポート ザ・クリブス(The Cribs) @ 代官山ユニット 2013.11.05

 意外なことに、スマッシング・マグに初登場となるザ・クリブス。スマッシュの公演案内には「愛され系ヤサグレUKロック・バンド」なんてキャッチフレーズが付けられているけれど、ギター、ベース、ドラムの正統派ロック・バンドである。そして、バンドのメンバーは大学で出会った友達とか、幼馴染とかではなく、実の3人兄弟。兄弟が在籍するUKロック・バンドはオアシスやザ・キンクスなどいくつかの名前が思い浮かぶけれど、3兄弟ともなると彼らくらいしか見当たらない。カイザー・チーフス、ブロック・パーティー、フランツ・フェルディナンド、そして、アークティック・モンキーズといった同世代のバンドから慕われているのは、 普通のバンドでは到底できない、3兄弟だからこそ鳴らせる音があるからだろう。

 彼らに対するラヴコールは同年代のアーティストだけにとどまらない。2008年にはイギリスでは絶対的なバンドであるザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーが正式メンバーとして加入するまでに至っている。2009年の単独公演、 2010年のフジロックでは、マーをお目当てにこのバンドを観た人も多かったはずだ。2011年のマー脱退後は『Hostess Club Weekender』での来日はあったが、単独ライヴとしては実に4年振りである。

 会場に着くと、ニルヴァーナの「アバウト・ア・ガール」、ウィーザーの「ホワイ・ボザー?」といった荒いギターを前面に打ち出した曲が流れており、思わずニヤリとしてしまう。ジョニー・マーがクリブスに加入する前に参加していたモデスト・マウスの「ザ・ヴュー」なんかもかけていて、開場と同時に入場したオーディエンスからしてみても、あっという間の待ち時間だったかもしれない。オーディエンスの年齢層は全体的に若く、やや男性が多い。最前列のエリアはバンドTシャツを着ている人たちが詰めかけており、ライヴの開始と同時にモッシュやダイヴが起きること間違いなしの空気が漂っていた。

 開演時間から10分ほど押して、キッスの「ゴッド・ゲイブ・ロックンロール・トウー・ユー Ⅱ」に乗せてジャーマン3兄弟が登場(ほかにサポートのギタリストがいた)。怒号のような歓声のなか、「カム・オン・ビー・ア・ノーワン」でライヴは幕を開ける。新作『イン・ザ・ベリー・オブ・ザ・ブレイズン・ブル』からのナンバーにもかかわらず、サビではあちらこちらで合唱が起きる。 立て続けにドラムのロスが手拍子を促し、「アイム・ア・リアリスト」のギター・リフが炸裂する。ここでもオーディエンスはリフにあわせて「ウォオッオオー」と掛け声をあげ、 フロアの熱をバンドとともに上げていく。

  3曲目の「ウィ・シェア・ザ・セイム・スカイズ」が終了した時点ですでにライアンのシャツは汗でびしょ濡れ。また、前方にいたオーディエンスが後方エリアに下がってくる姿もみられ(前方エリアは終始モッシュが起こっていた)、バンドとオーディエンスの両者から今日のライヴを最高のものにするのだという熱い思いを感じることができた。また、ファンにはおなじみの面白い日本語MCでは「アリガトウゴザイマス」に始まり、「カンコーヒヲ、ノミマシタ!(缶コーヒーを飲みました)」や「ニホンノクスリデ、ボクノカミヲ、ソメマシタ(日本の薬で僕の髪を染めました)」といつも通り笑いを誘っていた。

 彼らの知名度を考えると、代官山ユニットのキャパは小さいのではないかと思ったが、この小ささが逆にライヴ会場全体の一体感を生み出すのに一役買っていた。中盤に披露された彼らの代表曲、「チート・オン・ミー」や「マーテル」では、最前列から最後尾までたくさんの拳があがり、「ウォオッオオー」の大合唱が起こった。そして、とどめの「ミラー・キッサーズ」。マーが在籍していたときはイントロやリード部分をすべて任せていたが、再びライアンがギターを搔き鳴らす姿をみていると、こみ上げてくるものがあった。

 もちろん、マーが弾いた方が何倍も巧いんだけれど、ライアンが弾くと誰もが「俺(私)もギターが弾きたい!」、「バンドをやりたい!」という気持ちを抱かずにはいられない。デヴュー当初から全く変わらない、体全体を激しく揺らしながら演奏するスタイルは、安定した音を鳴らすには絶対に不向きな弾き方だし、30過ぎのミュージシャンにしてはあまりにも落ち着きがない(ロスのドラミングも同様だ)。けど、新人バンドが持つ「初期衝動」を5枚のオリジナル・アルバムを出したバンドが未だに持ち続けているって本当にすごいことだと思う。ソロ・アーティストとして活動を再開したマーが、ザ・スミス時代の楽曲をたくさん演奏するようになったのも、彼らの影響があったからかもしれない。

 次の「アナザー・ナンバー」ではギターのリフを合唱するというイギリスでは当たり前だけれど、「oiコール」が主流の日本ではなかなか根付かない文化がしっかりと反映されていた。終盤に突入しても、中盤の勢いそのまま、ソニック・ユースのリー・ラナルドが映し出された「ビー・セーフ」、「Hey scenesters, hey hey scenesters!」のコール&レスポンスが起こった「ヘイ・シーンスターズ」、ゲイリーとライアンのエモーショナルなツインヴォーカルが冴え渡った「メンズ・ニーズ」と圧巻のステージを展開した。ラストは「シティ・オブ・バグス」。 演奏技術はいっこうに向上していないけれど、観るものを惹き付ける求心力は以前よりも増しており、マーとの共作であるこの曲を完全に自分たちのものにしていた。

 アンコールを求める拍手はなりやまなかったが、以前と変わらずアンコールはなし。バンド結成時から変わらない「バンドを続けていける程度のセールスで構わない」というバンド運営と音楽スタンス。日々刻々と変化する音楽シーンのなかで、自分たちの決めたルールに忠実でブレることのない彼らをみて、「変わらないこと」の大切さを教えてもらった気がする。


— set list —

Come on, Be A No-One / I’m A Realist / We Share The Same Skies / Glitters Like Gold / You Were Always The One / Jaded Youth / The Lights Went Out / Cheat On Me / Martell / Bolthole / Women’s Needs / Mirror Kissers / Another Number / Be Safe / Hey Scenesters! / Men’s Needs / City Of Bugs

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Text:
Yasuaki Ogawa
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