エルビス・コステロ&ジ・インポスターズ (Elvis Costello and The Imposters) @ EX シアター 六本木 2013.12.11

Songs about LOVE(愛についての歌)
テキスト・レポート 「Songs about LOVE」 @ EX シアター 六本木 2013.12.11

Elvis Costello and The Imposters

 「僕の歌は愛についての歌だよ!」。ライヴの序盤、エルビス・コステロはこう言った。

 昨年のフジロックから一年振りとなる今回の来日公演は、世界中で話題となっている『Spinning Wheel Tour(スピニング・ホイール・ルアー)』。開場前にアーティスト側の希望で急遽スタンディングから座席指定への変更が発表されたため若干のゴタゴタがあったが、会場に入ると誰もが「おっ!」と声を上げてしまうであろう巨大なルーレットがそびえ立っている。ルーレットには「SHE」、「VERONICA」、「EVERYDAY I WRITE THE BOOK」といった数々の名曲のタイトルが見受けられる。他にも、筒型のダンスステージやハイ・ストライカーを模した遊具などが置かれている。サーカス会場?マジックショー?に来たのかと思わせてくれるほどに豪華なステージ装飾である。

Elvis Costello and The Imposters ザ・キンクスの「ダンシング・イン・ザ・ストリート」が終わると同時に会場が暗転し、コステロを先頭にジ・インポスターズのメンバーが登場。黒のスーツにシルバーのハット。これぞ英国紳士のエレガントなスタイルだ(足下は蛍光グリーンの靴下で「はずし」のテクニックを見せている)。一曲目は疾走感あふれるド直球ロックナンバー「アイ・ホープ・ユア・ハッピィ・ナウ」。下手に置かれたダンス・ステージはビヨンセに似たダンサーが踊るスペースとなっており、コステロではなくダンサーに釘付けになったオーディエンスもいたはずだ(この日は男性客が多かった)。オーディエンスの手拍子にうながされ、そのままニック・ロウのカヴァー曲である「ハート・オブ・ザ・シティ」に流れ込む。ザ・ストライプスもこの曲をカヴァーしているけれど、コステロが歌うとより洗練されたロックナンバーとなる。まさに長年の功があるからこそなせる技だろう。その後も演奏を止めることなく「ミステリー・ダンス」、「レディオ・レディオ」と序盤から怒濤の展開だ。

Elvis Costello and The Imposters ジ・インポースターズの伴奏にあわせ、コステロがシルクハットを被り、ステッキを持って、マジシャンに変身。ここで一旦ブレイク・タイムとなる。「グッド・イヴニング!トーキョー!」とマイク・パフォーマンスをはじめ、『Spinning Wheel Tour(スピニング・ホイール・ツアー)』の説明をする。ダンサー以外にも、ブロンドの髪をなびかせるのショー・ガールがおり、彼女がルーレットを回す人(スピナー)を選ぶ。選ばれたスピナー(カップルか女性のお客さんが選ばれる模様)はステージ上で簡単な自己紹介をし、ルーレットを回して演奏する曲を決定する。ルーレットの的は赤、黄、紫、緑の4色。黄色と赤色は曲のタイトル。紫色はジャックポッドと呼ばれており、レア枠だ。「GIRL(女の子)」や「TIME(時間)」といった言葉(例えば「GIRL」が当たると「パーティ・ガール」や「サルキー・ガール」といった曲名に「ガール」の文字が入っている曲が演奏される)や「HAPPY」、「MODEL」といったアルバムタイトルの一部が書かれている(例えば「MODEL」が当たると『ディス・イヤーズ・モデル』からランダムに演奏される)。そして、一カ所だけある緑色は「JOKER」となっている(ルーレットに書かれた曲のなかから好きなものを選ぶことができる)。

 最初にスピナーに選ばれたお客さんが当てた曲は「タウン・クライヤー」。当てたらそれで終わりかと思いきや、驚くなかれ、お客さんはコステロの隣にあるバーカウンターでコステロの演奏を間近で観られるのだ(青色と赤色のお酒まで出される)。このコステロ流のおもてなしにファンから大歓声があがる。3人目のスピナーが「JOANNA」(キーボードのスティーヴ・ナイーヴだけが伴奏をするアレンジ枠)と書かれたジャックポッドを当てると、会場はより一層の盛り上がりをみせる。伴奏の鏡とも言えるスティーヴ・ナイーヴが演奏するピアノに導かれて披露されたのは「ユー・ビロング・トゥ・ミー」、「アイ・スティル・ハブ・ザット・アザー・ガール」、「シー」の三連発。「シー」のときには観客席に降りて、オーディエンスとコミュニケーションをとるコステロ。ファンが手を差し出せば、嫌な顔をせず握手をするし、抱きつけば優しくハグをする。もはやライヴではなくディナーショーだ。初めてコステロを観た人は、この人がかつて「YOUNG ANGRY MAN(怒れる若者)」の異名をとった激しいロッカーだったなんて想像もつかないだろう。

Elvis Costello and The Imposters 4人目のスピナーが当てたのはジャックポッドの「HAPPY」(『ゲット・ハッピィ!!』からランダムに演奏)。アルバムから選ばれたのは「アイ・キャント・スタンド・アップ・フォー・フォーリング・ダウン」と「ハイ・フィデリティ」の2曲。毎回ルーレットを回すわけではないのだが、間を置かずに次から次へと演奏するので、名曲たちが組曲に様変わりしているかのようだった。 5人目のスピナーは「I CAN SING A RAINBOW」を当て、「グリーン・シート」、「ブルー・チェアー」、「(ザ・エンジェルズ・ウォナ・ウェア・マイ)レッド・シューズ」とタイトルに色が関連する曲を歌ってもらっていた(スピナーの男性はコステロのTシャツを着ており、ステージ上で感極まっている様子がとても印象的だった)。

 アンコール一曲目は「エブリデイ・アイ・ライト・ザ・ブック」。サビの「Everyday, Everyday, Everyday」の部分では合唱とコール&レスポンスが自然とオーディエンスから起こる。その後、ルーレットの隣に置かれていた、海外のお祭りではおなじみのハイ・ストライカーを模した遊具がついに使われた(お客さんはハンマーを振りかざして、最上部のベルを鳴らすことができればルーレットのなかから好きな曲を演奏してもらえる)。選ばれたお客さんの力が足りなかったため、最終的にはブロンドのショー・ガールがハンマーを振って成功したのだが、お客さんのリクエストがなんとルーレットに載っていない「チャーチ・アンダーグラウンド」。さすがのコステロも「チャーチ・アンダーグラウンド?そんな曲しらないよ(笑)。J-Popかな? K-Popかな? 他の曲はどう?」と戯けていたけれど、最終的には「チャーチ・アンダーグラウンド」を披露するという憎らしい演出もあった。ルーレットのリストにない曲まで演奏してくれるなんて、もはやリクエストライヴである。

Elvis Costello and The Imposters その後もオーディエンスを休ませることなく、コステロの真骨頂であるバラードナンバー「ヴェロニカ」、抜群の安定感をみせるピート・トーマスのドラミングとコステロの軽やかな口笛でアンサンブルが奏でられた「ア・スロウ・ドラッグ・ウィズ・ジョゼフィーヌ」、ラストのワンフレーズはマイクを通さずアカペラで歌たい上げた「ジミー・スタンディング・イン・ザ・レイン」とヒット曲のオンパレードでオーディエンスを興奮の渦に巻き込んだ。

 そして、この日はなんとダブル・アンコール。ここにきてもなお、次から次へとアンセムが演奏されることに驚かされる。コステロが自らルーレットを回して曲をセットするパフォーマンスを見せた「アイ・ウォント・ユー」は素晴らしく、ライヴ序盤と変わらないアグレッシブな演奏をアンコールでも見せてくれた。「パンプ・イット・アップ」ではオーディエンスも最後の力を振り絞って大合唱。そして、本日二回目の「ピース・ラヴ・アンド・アンダスタンディング?」でライヴは幕を閉じた。

 「平和、愛、そして理解しあう事のどこがおかしいんだい?」

 毎回、日替りのセットリストとなるライヴのなかで、唯一必ず演奏されるニック・ロウのナンバー「 ピース・ラヴ・アンド・アンダスタンディング?」。ここにコステロの歌う理由が、ギターを鳴らす理由があるのだと思う。

Elvis Costello and The Imposters

— set list —
- Set List -
I Hope You’re Happy Now / Heart Of The City / Mystery Dance / Radio, Radio / Town Cryer / Beyond Belief / You Belong To Me / I Still Have That Other Girl / Talking In The Dark / She / I Can’t Stand Up For Falling Down / High Fidelity / Green Shirt / Blue Chair / (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes / Monkey To Man / Country Darkness / My New Haunt / Tripwire / (What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love And Understanding?

— encore1 —
Everyday I Write The Book / Church Underground / My All Time Doll / Veronica / A Slow Drag With Josephine / Jimmie Standing In The Rain

— encore2 —
(I Don’t Want To Go To) Chelsea / Sugar Won’t Work / I Want You / Pump It Up / (What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love And Understanding?

–>フォト・レポート

Share on Facebook

Information

Photos:
Julen Esteban-Pretel
julen@smashingmag.net
Web Site / Facebook / twitter
Julen Esteban-Pretel's Works

Text:
Yasuaki Ogawa
yasuaki@smashingmag.net
Facebook / twitter
Yasuaki Ogawa's Works

Write a comment