エレクトリック・アイ (Electric Eye) @ ラスティーズ、オースティン 2014.03.12

ヴァイキングの国から持ち込まれた極上のサイケデリア
テキスト・レポート「ヴァイキングの国から持ち込まれた極上のサイケデリア」@ ラスティーズ、オースティン 2014.03.12

Electric Eye

 何事も”最初”って肝心である。殊に多数のアーティスト/バンドが、出演するフェスという場においては、最初に観たライヴが、そのフェスに対する記憶の最も大きなカラーを形成すると言っても過言ではない。

 今回のサウス・バイ・サウスウェスト(以下SXSW)における最初のライヴ体験を演出し、記憶に楔を打ち込んでくれたのは、ノルウェーはベルゲンで2012年に結成された、4ピース・サイケデリック・ロックバンドのエレクトリック・アイ(Electric Eye)だ。昨年4月にロンドンを拠点とするファズ・クラブ・レコーズ(Fuzz Club Records)からファースト・アルバム『ピックアップ・リフトオフ・スペース・タイム(Pick-up, Lift-off, Space, Time) 』をリリースし(ここ日本では、2014年5月21日にフレイク・レコーズ(FLAKE RECORDS)よりリリースされる予定だ)、昨年来、スカンジナヴィア各国やポルトガルといったヨーロッパを中心に地道にツアーを続けている。

Electric Eye それにしてもノルウェーという国、近年オスロ・サイク・フェスト(Oslo Psych Fest) に、お膝元のベルゲンではつい先日の5月8日から10日にかけてベルゲン・サイク・フェスト(Bergen Psych Fest) が開催されているところをみると、サイケデリック・ロック熱が急激に上がっていることが見て取れ、実に面白い。もちろん、エレクトリック・アイは前記2フェスに出演しており、地元シーンの牽引役を担っていることがうかがえる。

Electric Eye 幸いにも、スウィング・ハウス・オースティン・オキュペイションという昼間のデイ・パーティーにて、SXSWにおける彼らの初ステージに立ち会うこととなった。会場に到着すると、米国俳優の故フィリップ・シーモア・ホフマンを思わせるシンガー、セイント・ポールを冠するセイント・ポール・アンド・ザ・ブロークン・ボーンズ(St. Paul and The Broken Bones)の演奏の真只中で、そのソウルフルに歌い上げられる歌声と、ファンキーで黒いグルーヴに少ない客入りながら会場はすでに熱を帯びていた。セイント・ポール・アンド・ザ・ブロークン・ボーンズがステージを降りるやいなや、エレクトリック・アイの4人はすぐにステージに上がってきた。これがSXSWでの初ステージだ。よほど入念にセッティングを行いたいという気合いの表れなのだろう。ただ、ステージ前に集まったオーディンエンスが、一旦はけてしまうほどの長さのセッティングには笑ってしまった。なるほど、どのメンバーも心なしか気難しい面構えをしている。セッティング中、細かいところまで互いに口を出すそのスタンスも含め、職人気質のバンドのようだ。

 そして、何の前触れもなくファースト・トラック「シックス・エイエム」がはじまった。静謐なイントロから徐々に展開されていくインスト曲なので、冒頭はまだ音合わせをやっている最中だと勘違いをしたオーディエンスも多かったことだろう。実に職人バンドらしい堅気な出だしだ。中央のスクリーンに描かれる目がチカチカする白の円のループ効果もあって、のっけから意識が朦朧としてくる。ベースとドラムの正確かつタイトなビートの上を、フロントマンのオイステイン・ブロートによるスライドギターのブルージーなフレーズが荒々しく跳ねまくり、その奥で控えめにキーボードがドローンといったコーティング処理を施す。一音、一音が混ぜ合わさってステージから放出される音の洪水は、場を一瞬で”向こう側”の世界へと変えてしまった。

Electric Eye 続く「ムーヴィング・ライト」から「レイク・ジェネヴァ」のつなぎ部は、間違いなく本ステージのハイライトといえるだろう。インドのラーガに基づいたような旋法で、宇宙空間にどこまでも漂う星雲のごとく気だるく流れるギターが描き切るサイケデリアに、オーディエンスは恍惚の境地に至り、誰もがその轟音の波に完全に身をゆだねていたのだ。

 この日はトータルで4曲と短いセットであったが、幽玄な空間を演出しつつも初期衝動感満タンでオーディエンスの内にグイグイ踏み込んでくる性急で強引な音運び、そして随所に潜む”ポップ”と呼んではばからないほどの耳馴染みの良いフレーズといったエレクトリック・アイのエッセンスにいわゆるサイケデリック・ロックバンド勢にはない新しさを感じることができた。しかも相当のミュージシャンシップも備えている。彼らの今後の展開が楽しみで仕方がない。いずれは来日して、この極上のサイケデリアで、閉塞感でいっぱいいっぱいの我々をひと時の逃避行へといざなって欲しいものである。(Photos by Takafumi Miura)

– set list –
6 am / Moving Light / Lake Geneva / Tangerine

Electric Eye

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Text:
Takafumi Miura
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