原始神母~ピンク・フロイド・トリップス(Pink Floyd Trips) @ 東京キネマ倶楽部 2014.10.23.

何度でも生まれ変わるピンク・フロイド
テキスト・レポート「何度でも生まれ変わるピンク・フロイド」@ 東京キネマ倶楽部 2014.10.23.

 まずいっておきたいのは、なぜこのバンドを今年の朝霧ジャムに出さなかったのか? ということだ。このバンドは10月10日に埼玉県の西川口、10月14日に長野県の飯田でライヴをおこなう、つまり、朝霧ジャムの日は空いていて、しかも埼玉と長野の中間に朝霧高原がある。ピンク・フロイドといえば牛、朝霧高原といえば牛乳、ピンク・フロイドが日本で初めてライヴをおこなったのは朝霧高原と富士山を挟んだ反対側の箱根、と朝霧ジャムでやる条件がたくさんあるのに、なんで出なかったんだろうなぁと。しかも、この日のライヴの素晴らしさを体験すれば、懐メロカヴァーバンドでなく、生きたピンク・フロイドを鳴らすバンドとして、絶対野外で観たくなるはずなのだ。

原始神母 原始神母は去年までピンク・フロイド・トリップスと名乗り、ピンク・フロイドの初期から中期の曲を演奏するというプロジェクト。日本の腕利きミュージシャンたちがリードヴォーカルにアメリカ人を迎え、基本的に原曲通りに演奏する。生演奏ならではのプラスアルファがある、というか生演奏だからこそ聴き手がプラスアルファを感じてしまうのが彼らの魅力である。

 着いたときには、本編前のアコースティックセットで扇田裕太郎とゲストのクリス・ペフラーが「サン・トロペ」を演奏していた。そして、クリス・ペフラーがバンドを紹介して、会場内を嵐が吹き荒れる効果音で満たし、扇田裕太郎のベースが鳴り響き「吹けよ風、呼べよ嵐(One of These Days)」が始まった。ギターの木暮”シャケ”武彦、キーボードの厚見玲衣と三国義貴、ドラムスの柏原克己、コーラス担当だけどこの曲ではパーカッションの成冨ミヲリが一体になってハードに打ち鳴らされる「吹けよ風、呼べよ嵐」の迫力はすごい。そこへヴォーカルのケネス・アンドリューが加わって最高潮を迎える。続いて「神秘(A Saucerful Of Secrets)」、サイケデリックで前衛的な演奏。ちゃんと銅鑼も用意されていた。シド・バレット時代の「天の支配(Astronomy Domine)」 、レアな曲でアルバム『雲の影』から「泥まみれの男(Mudmen)」。

 今回、女性ヴォーカルにラブリー・レイナが加わり、成冨ミヲリより高いキーを担当したのだけど、「原子心母(Atom Heart Mother)」で、ひとり加わった効果を実感する。ヴォーカルパートが迫力を増してクラシックな風格を備えた演奏に進化した。曲によってはステージ背後のスクリーンが使用され、サイケデリックな模様が映し出されていた。照明も気合入っていて、このライヴハウスの設備で使えるものはすべて使ったかのように、音とシンクロして、バンドが作り出す世界を一緒に演出していた。

 続いて演奏された「アランのサイケデリック・ブレックファスト(Alan’s Psychedelic Breakfast)」には驚かされた。まさかこの曲を「演奏」するのか。卵を割る音やガスレンジを点ける音などの効果音はさすがに実演することなく録音されたものだったけど、厚見と三国の軽やかで明るいキーボード、交代して木暮と扇田のアコースティックギターのデュエットが穏やかで心地よい。そして前半は「クレイジー・ダイアモンド(Shine on You Crazy Diamond)」で締める。やっぱり音の分厚さ、迫力は生で体験してこそなのだ。

原始神母 15分くらいの休憩時間をとって、心臓の鼓動音の効果音が流れて後半が始まった。そして「走り回って(On the Run)」。10年先、20年先のテクノの先駆けのような曲。続いて「タイム(Time)」、「虚空のスキャット(The Great Gig in the Sky)」、「望みの色を(Any Colour You Like)」、「狂人は心に(Brain Dameage)」と『狂気』からの曲を組曲のように連発する。前回もそうだったけど、今回も「虚空のスキャット」はすごかった。成冨ミヲリの迫力ある声とラブリー・レイナの高い声が化学反応を起こして懐メロでもない、今鳴らされた音として生々しく迫ってくる。そして「狂気日食(Ecrips)」で「All that you~」と繰り返される言葉と演奏が一段一段階段を上っていくように積み上がり頂点に達する。本編締めの「エコーズ(Echoes)」も、20分を超える大作である。楽器たちによって奏でられ、緻密に折り重なる音が物語を作るような趣きがある。

 アンコールは、まずアコースティックギターで「あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)」。そしてお祭り騒ぎのようになった「マネー(Money)」、最後は前回と同じく「ナイルの歌(Nile Song)」でハードなロックをぶちかまして終わった。

 18世紀や19世紀に作曲された曲が「クラシック」として、現在でも、なお多くの人によって演奏され聴かれている。当たり前の話だが、その際に誰もオリジナルメンバーによるオリジナル演奏が一番いいとかいわない。バッハやモーツァルトやベートーヴェンなどによるクラシックの偉大な作品はいつの時代も何度でも新たに解釈され、新たに生命が吹き込まれ、新たな発見がもたらされる。原始神母のライヴを体験すると、ロックがもはやそういう時代に入ったということを実感する。アンコール時にMCで「来年もやります!」と宣言。だったら来年こそ朝霧ジャムに出しましょうよ! フジロックのフィールド・オブ・へヴンやオレンジコートあたりでもいいですが、「最終的には箱根でやるのが夢」と語っていたので、やっぱり箱根に近い朝霧高原で体験したい! ぜひお願いします!

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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3 Responses to “原始神母~ピンク・フロイド・トリップス(Pink Floyd Trips) @ 東京キネマ倶楽部 2014.10.23.”

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