朝霧ジャム – イッツ・ア・ビューティフル・デイ! @ 朝霧アリーナ 2014.10.11 – 12

アウトロ – 来年、またここで
特集「アウトロ – 来年、またここで」@ 朝霧アリーナ 2014.10.11 – 12

朝霧JAM

「やべぇ!レゲエのライヴって、こんなにベースが腹に響くのか!」レゲエ界きっての伝説のリズム隊、スラロビことスライ&ロビーのステージを観ていた少年たちが叫んだ言葉だ。フェスティヴァルの醍醐味は、一期一会な環境で様々な音楽と出会い、自分に響く音楽を発見して、感動することにある。少年たちの人生初のレゲエのライヴ。感動のあまり思わず先の言葉が飛び出た時点で、今年の朝霧ジャムは大成功だと言えるだろう。

 今回めでたく、初めての朝霧ジャムを迎えることができた。ありがたいことに、”お初もの”には何かとビギナーズ・ラックってやつがつきもの。開催前にあれだけ心配されていた台風19号の影響は一切なく、雨なんて滞在中に一滴も降らなかったのだから。文句をつけようがない環境の中、幸せな音のシャワーを思う存分に浴びまくることができた。

タートル・アイランド (Turtle Island)  記念すべき初の朝霧ジャムで最初に観たのは、タートル・アイランドだ。昨年のフジロックの前夜祭における激アツなステージにKOされて以来大ファンなのだ。去る6月に、日本人アーティストとしては12年ぶりとなる、グラストンバリー・フェスティヴァル最大のステージであるピラミッド・ステージ出演という偉業を果たした彼ら。世界各地の楽器を駆使し、あらゆるジャンルの音楽を飲み込んで放出されるタートル印のパンクロックは、日本が誇る唯一無二の宝である。代表曲「宇宙の真ん中」の摺鉦(すりがね)の音が鳴り響けば、のんびりとした雰囲気の朝霧高原にモッシュの台風を呼び込み、いとも簡単に、熱気ムンムンのお祭り会場へと変えてしまった。

Heymoonshaker ヘイムーンシェイカーは、大阪で単独公演を観ていたので、オープニングはタートル・アイランドを優先した。が、朝霧ジャムにおけるライヴも一目観たくて、レインボー・ステージへダッシュし移動。ヒューマン・ビートボックスとブルーズを淫靡に調合した、世界初のビートボックス・ブルーズ・ユニットである。ブルーズは、元来妖しく色っぽい音楽だ。妖しいフレーズをアンディ・バルコンが刻み、デイヴ・クロウによる超絶技巧的ビートボックスが加われば、それは音の塊となり、最上のセクシーさで迫って来る。ライヴは、どうやら大成功だったようだ。ステージ前方でうっとりと二人を見つめ、腰を揺らしていたお姉様方の存在が何よりの証拠だ。

G.Love & Special Sauce ヘイムーンシェイカーとは異なった形で、新しいブルーズを提案するバンドがG.ラヴことギャレット・ダット率いるG.ラヴ&スペシャル・ソースだ。ブルーズから発展したロックンロールやファンクにR&Bといった、ブラック・ミュージックの美味しい部位を抽出して形づくられたサウンドに、G.ラヴのラップが軽快に流れる。繰り出される十八番の”ラグ・モップ”で、オーディエンスを大いに沸かせた。デビュー当時のオリジナル・メンバーである、ジミー・プレスコットと、ジェフリー・クレメンスによるビート隊が、跳ねまくるグルーヴが最高に心地良かった。中盤で、照明が暗転して初期の名曲「ブルーズ・ミュージック」がはじまったとたん、つい先ほどまで親の肩で寝ていた子供が目を見開いて、ステージを観はじめたのだ。その光景が今でも忘れられない。子守歌にうってつけの静かでムーディーな曲なのに。彼なりに感じるものがあったに違いない。

ジェフ・ラング (Jeff Lang) ワイゼンボーンと思しきアコギでスライドを流麗にきめ、圧倒的な表現力を見せつけてくれたジェフ・ラング。紡ぎ出されるアコースティックなブルーズやフォーク、カントリー・ミュージックといった音にエフェクトを惜しまずにかけ、奏でたフレーズを録音し、それを幾重にも重ねてサイケデリックな質感も醸成する。彼の天才的な技巧もさることながら、絶妙に音のスパイスをふりかけることで、ギター本来の味を何倍にも引き立たせていた。”ギターの魔術師”たる凄みを体感できたことが、個人的に今回最も感動した瞬間だろう。実は、終演後に苗場食堂の前でばったりジェフに会った。「寒くなってきたから、風邪を引かないように気をつけてね!」と優しく声をかけてくれた。彼の暖かい人柄がステージや音に表れているように思えてならない。

Quantic そして、周囲で今年の朝霧におけるベスト・アクトとの呼び声が高かったのが、ウィル・ホランド率いるクァンティックだ。ウィルの電子ビートに、ウィルソン・ヴェヴェロスが叩き出すアフリカン基調の絶品パーカッション、サックスにギター、ミニアコーディオンが絡めば、南国風のダンス天国へと我々をいざなった。コロンビアの歌姫、ニディア・ゴンゴラが登場し、高らかに歌い上げ、腰をくねらせセクシーなダンスを披露すれば会場は更にヒートアップした。ひときわ嬉しかったのが、タビーなジャマイカン・ビートも披露してくれたこと。クァンティックと同じ時間の帯出演のため、断念せざるを得なかったアディス・パブロのダブも体感できたかのごとく、繰り出される太いビートに気持ちよく身体を委ねることができた。
 
 帰りのバスが出発する直前まで観れる限りのステージを堪能した。全体的には、様々なジャンルのごった煮ながら”ミックス感”というキーワードで不思議とまとまりのある『朝霧ジャム』というタイトルの1枚の良コンピレーション・アルバムと出会ったような印象を受けた。特に強くその”ミックス感”を感じたのが、ライヴのダイジェストをお届けした5つのアーティスト/バンドである。ブルーズ、ジャズ、フォーク、カントリーといった、それぞれの核となるルーツ・ミュージックの上に、別ジャンルの音を交配させたり、音処理で工夫を施し新鮮なフォームに昇華している。慣れ親しんでいる音のようで、妙に新しい。朝霧ジャムが、老若男女、誰もが気軽に入り込み易いフェスになり得ている所以だろう。

 今年の朝霧ジャムは、スマッシング・マグと、姉妹サイトであるフジロッカーズ・オルグのスタッフ陣で取材を行った。ライヴのレポートはもちろんのこと、キャンプごはんレポなど、全方位的な朝霧ジャムの持つ楽しさをお伝えできるはずである。会場を飛び回り、取材したスタッフそれぞれの想いのこめられたレポートを、ぜひとも楽しんでいただきたい。

Photos:Shinya Arimoto/Taio Konishi/Yutaro Suzuki/Mamiko Miyakoshi


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イントロ – ん?台風、どこに行っちゃったの?いい感じで始まるよ(花房浩一)

–>総集編フォト・レポート:
皆の笑顔が、台風を吹き飛ばした今年の朝霧(鈴木悠太郎編)
全ての人たちの、それぞれの財産になるように(小西泰央編)
ふもとっぱら、昼の顔と夜の顔(アリモトシンヤ編パート1)
ジャムズから連鎖する笑顔のフェスティバル(アリモトシンヤ編パート2)
人を欲張りにさせる、朝霧JAMの魔力と魅力(宮腰まみこ編)
–>総論:
人を繋ぎ、思い出を繋ぎ、フェスティバルは続く(山本希美)

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Text:
Takafumi Miura
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